第40回講義

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2017.11.23 録音

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王維作詩の背景



「王維年譜」



「唐王朝年表」

王維年譜1 699年 1歳 ~727年 29歳
王維年譜2 730年 32歳 ~747年 49歳
王維年譜3 750年 52歳 ~761年 63歳

唐王朝年表1 618年 高 祖 ~779年 代 宗
唐王朝年表2 779年 徳 宗 ~907年 哀 宗


中国文学地図

地名  荊州・江陵  涼州(武威)  涼州(説明)  長安  洛陽  襄陽
山名  秦嶺山脈(地図)  秦嶺山脈(説明)
川名・湖名  黄河  渭水  漢水  洞庭湖


春秋列国の形勢

     


人名用語書名」

人名  王維  張九齢 孟浩然  李林甫  玄宗皇帝(李隆基)  楊貴妃

用語  拾遺  監察御史

     


 

從軍行    唐 王 維

全唐詩卷一十九


 從軍行 王維

吹角動行人,

喧喧行人起。

笳鳴馬嘶亂,

爭渡金河水。

日暮沙漠垂,

戰聲煙塵裏。

盡系名王頸,

歸來報天子。


 從軍行じゅうぐんこう   王維おうい

吹角すいかく 行人こうじんうごかし

喧喧けんけんとして 行人こうじん

かなしみ 馬嘶亂ばせいみだ

あらそってわたる 金河きんがみず

日暮にちぼ 沙漠さばくほとり

戰聲せんせい 煙塵えんじんうち

ことごと名王めいおうくび

歸來きらい 天子てんしほうぜん


字句解釈

從軍行   戦争の歌。楽府題(がふだい)、中国,韻文のジャンルの一つ。

吹角   角笛。戦場の進退命令に用いる。

行人   出征兵士。他に、道行く人、ぎょうにん・行者(仏教用語)。

喧喧   かまびすしいさま。喧々諤々。

笳鳴   あしぶえがなく。

馬嘶   うまのいななき。

金河   陰山山脈から黄河に流れ込む川。

垂   ほとり、辺境の地。畔、辺、頭、上、みな「ほとり」~のそばの意。

煙塵   兵馬によるちり・ほこり。

名王   名のある王。 


詩の鑑賞

王維40歳、開元26年、738年、長安に戻った後の宮廷詩人としての作。 現地へは行っていないで想像で詠んでいる。迫力に欠ける。
仄韻の五言律詩。「笳鳴馬嘶亂 爭渡金河水」の対が弱い。即興詩か?





 

從軍行其四   唐 王昌齡

漢詩を楽しむ28頁 全唐詩卷一百四十三


 從軍行其四
   王昌齡

青海長雲暗雪山,

孤城遙望玉門關。

黄沙百戰穿金甲,

不破樓蘭終不還。


 從軍行じゅうぐんこう よん
       王昌齡おうしょうれい

青海せいかい長雲ちょううん 雪山せつざんくら

孤城こじょう はるかにのぞむ 玉門關ぎょくもんかん

黄沙こうさ 百戰ひゃくせん 金甲きんこう穿うが

樓蘭ろうらんやぶらんずばついかえらず

  、

字句解釈

青海   青海湖。中国最大の湖の一つ、海抜3,000m級。

雪山   雪の山。祁連(きれん)山脈。 孤城遙望玉門關   「玉門關から遙かに孤城を望む」と 「孤城である玉門關から遙かに望む」と「孤城から遙かに玉門關を望む」などの解釈がある。

穿金甲   砂が金のよろいをうがつ。

樓蘭   樓蘭(説明)   

     

詩の鑑賞

王昌齡官品は高くなかったが立派な詩を作った。「従軍行」の代表作の一つ。




 

從軍行其一   唐 王昌齡

唐詩選67頁  全唐詩卷一百四十三


 從軍行其一
   王昌齡

烽火城西百尺樓,

黄昏獨上海風秋。

更吹羌笛關山月,

無那金閨萬里愁。


 從軍行じゅうぐんこう いち
       王昌齡おうしょうれい

烽火ほうか 城西じょうせい 百尺ひゃくしゃくろう

黄昏こうこん ひとのぼれば 海風かいふうあき

さらく 羌笛きょうてき 關山かんざんつき

いかんともするし 金閨きんけい 萬里ばんりうれい

  、

字句解釈

烽火   のろし。

海風   青海湖から吹く風。

羌笛   匈奴のふえ。

無那   どうしようもない。

金閨   自分の妻の部屋。

     

詩の鑑賞

従軍行の代表作の一つ。




 

隴西行   唐  王 維

全唐詩卷一百二十五


 隴西行  王 維

十里一走馬,

五里一揚鞭。

都護軍書至,

匈奴圍酒泉。

關山正飛雪,

烽戍斷無煙。


 隴西行ろうせいこう    王 維おうい

十里じゅうり ひとたびうまはしらせ

五里ごり ひとたびむち

都護とごの 軍書ぐんしょいたらば

匈奴きょうど 酒泉しゅせんかこ


關山かんざん まさ飛雪ひせつ

烽戍ほうじゅ えて煙無けむりな


字句解釈

隴西行   隴山の西へ行く。

十里   一里=500m、5km。

都護   都護府

匈奴   匈奴霍去病

酒泉

烽戍   「のろし」と「とりで」。


詩の鑑賞

王維の宮廷詩、実感がとぼしい。




 

酒泉太守席上醉後作   唐 岑 参

唐詩選下109頁  全唐詩 卷二百零一


 酒泉太守席上醉後作
      岑 参

酒泉太守能劍舞,

高堂置酒夜撃鼓。

胡笳一曲斷人腸,

座上相看涙如雨。


 酒泉しゅせん太守たいしゅ席上せきじょう醉後すごさく
        岑 参しんじん

酒泉しゅせん太守たいしゅ 劍舞けんぶくし

高堂こうどう置酒ちしゅして 夜撃鼓よるこ

胡笳こか 一曲いっきょく 人腸じんちょう

座上ざじょう て 涙雨なみだあめごと


字句解釈

酒泉

太守   郡の長官のことで、単に守とも呼ばれた。古代から南北朝時代に置かれた。 のちに宋朝の知府事、明朝、清朝の知府の別称として用いられた。

高堂   他人の家。自分の家は茅屋など。

置酒   酒宴。

胡笳   胡人のあしぶえ。


詩の鑑賞

岑参の現場での作。実感がこもっている。




 

赴北庭度隴思家   唐 岑 参
唐詩選下108頁 全唐詩卷二百零一


 赴北庭度隴思家
       岑 参

西向輪台萬里餘,

也知郷信日應疏。

隴山鸚鵡能言語,

為報家人數寄書。


 北庭ほくていおもむろうわたりていえ0もう
                岑 参しんじん

西にしのかた輪台りんたいむかいて 萬里ばんり

郷信きょうしんること まさなるべし

隴山ろうざん鸚鵡おうむ 言語げんご

めにほうぜよ 家人かじん 數寄すうきしょ


字句解釈

北庭   都護府の一つ。タクラマカン砂漠にある。

隴   隴山

輪台   クチャの近く。。

為報   私のために。


詩の鑑賞

実感のこもった作。




 

吟 詠     内山義浩様   


九月十三夜  上杉謙信

漢詩を楽しむ120頁


 九月十三夜
    上杉謙信

霜満軍営秋氣清,

數行過雁月三更。

越山併得能州景,

遮莫家郷憶遠征。


 九月十三夜くがつじゅうさんや
    上杉謙信うえすぎけんしん

しも軍営ぐんえいちて 秋氣しゅうききよ

數行すうこう過雁かがん 月三更つきさんこう

越山併えつざんあわたり 能州のうしゅうけい

遮莫さもあらばあれ 家郷かきょう遠征えんせいおもうを




 

少年行其一
   唐 王 維


全唐詩卷一百二十八


 少年行其一  王 維

新豐美酒鬥十千,

咸陽遊侠多少年。

相逢意氣為君飲,

系馬高樓垂柳邊。

 少年行しょうねんこう いち     王 維おうい

新豐しんぽう美酒びしゅ 鬥十千とじゅっせん

咸陽かんよう遊侠ゆうきょう 少年しょうねん おお

うて 意氣いき きみため

うま高樓こうろうける 垂柳すいりゅうへん


字句解釈

少年行   楽府題。

新豐   長安の東にあった地名。良酒の産地。新豐縣(漢朝),中国陝西省西安市的一个歴史地名,在古代以酒市知名。

鬥十千   一斗(1.9L)は今の約一升(1.8L)。十千は万。三国時代、 曹操の三男、曹植の用例あり。 文選(もんぜん)にあり

咸陽   西の都。

遊侠   侠客。おとこだて。強きをくじき弱きをたすける。意気に感ず。

少年   若者。


詩の鑑賞

かいげんのち(開元の治)の良く治まった華やかな時代の都大路の様子。




 

少年行其二
   唐 王 維


全唐詩卷一百二十八


 少年行其二  王 維

出身仕漢羽林郎,

初隨驃騎戰漁陽。

孰知不向邊庭苦,

縱死猶聞侠骨香。

 少年行しょうねんこう      王 維おうい

いだし かんつかう 羽林郎うりんろう

はじめ驃騎ひょうきしたがい 漁陽ぎょようたたか

だれらん 邊庭へんていおいとせず

たとすとも く 侠骨きょうこつかおり


字句解釈

出身   身を投げ出す。(官にあげられる。出身地、校。)

羽林郎   近衛兵。

初隨   従ってすぐ。(はじめて従った、ではない。)

驃騎   驃騎大将軍、霍去病

漁陽   北方、後の、安 禄山の反乱拠点。 白居易(はくきょい)の長恨歌に「漁陽鼙鼓動地來」とある (鼙鼓は太鼓)。天津のあたり。

不向邊庭苦   辺境の地での苦労を苦にしない。


詩の鑑賞

これも宮廷詩のひとつ。




 

輞川閒居
   唐 王 維


全唐詩卷一百二十六


 輞川閒居  王 維

一從歸白社,

不復到青門。

時倚簷前樹,

遠看原上村。

青菰臨水拔,

白鳥向山翻。

寂寞於陵子,

桔槔方灌園。

 輞川閒居もうせんかんきょ  王 維おうい

ひとたび白社はくしゃかえりてより

青門せいもんいたらず

ときる 簷前えんぜん

とおる 原上村げんじょうむら

青菰せいこ みずのぞみて

白鳥はくちょう やまむかいてひるがえ

寂寞せきばく 於陵子おりょうし

桔槔きっこう まさえんそそ


字句解釈

輞川   輞川荘。 白社   半官半隠。

青門   長安。

於陵子   隠者の名。於陵子は戦国時代の人で、その賢を聞いた楚王が、宰相に招いたが、 逃れて畑にはねつるべで水をそそぎ自給した。

桔槔   はねつるべ。


詩の鑑賞

開元29年、王維43歳、宋之問没後、 藍山の輞川荘を手に入れ, 半ば官、半ば隠者の生活に入る。