第45回講義

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2018.05.24 録音

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王維作詩の背景



「王維年譜」



「唐王朝年表」

王維年譜1 699年 1歳 ~727年 29歳
王維年譜2 730年 32歳 ~747年 49歳
王維年譜3 750年 52歳 ~761年 63歳

唐王朝年表1 618年 高 祖 ~779年 代 宗
唐王朝年表2 779年 徳 宗 ~907年 哀 宗


中国文学地図

地名  輞川  長安  藍田關  洛陽  襄陽
山名  秦嶺山脈(地図)  秦嶺山脈(説明)  終南山
川名・湖名  黄河  渭水  漢水


春秋列国の形勢

  


人名用語書名」

人名  王維  裴迪(はいてき)  宋之問  玄宗皇帝(李隆基)  楊貴妃 孟浩然  李林甫  高力士  楊 国忠  陶淵明  張九齢  杜甫  白居易

用語  輞川荘  商山四皓  亭(ちん)  典故(てんこ)

書名  文選(もんぜん) (原文)文選(もんぜん)

     

 

再 掲



輞川集:竹里館    唐 王 維

漢詩を楽しむ110頁 漢詩鑑賞辞典170頁 全唐詩卷一百二十八


 竹里館  王 維

獨坐幽篁裏,

彈琴複長嘯。

深林人不知,

明月來相照。



 竹里館ちくりかん    王 維おうい

ひとす 幽篁ゆうこううち

ことだんじて 長嘯ちょうしょう

深林しんりん ひとらず

明月めいげつ たっててら


字句解釈

竹裏館   竹林の中の館(やかた)、あるいは、亭(ちん)。

幽篁   静かで奥深くくらい。竹林の館の中で吟じている。

長嘯   声を長引かせて歌う。

明月來相照   相は互いにではなく単に相手をという意。 阮籍陶淵明(無限の琴)を踏まえる。また、夏目漱石の草枕に記述がある。




詩の鑑賞

王維の代表的作品。輞川集二十首の中で最も親しまれ、詩吟でよく詠われる。




 

再 掲



輞川集:辛夷塢    唐 王 維

全唐詩卷一百二十八


 辛夷塢  王 維

木末芙蓉花,

山中發紅萼。

澗戸寂無人,

紛紛開且落。



 辛夷塢しんいお    王 維おうい

木末くずえの 芙蓉ふようはな

山中さんちゅうに 紅萼こうがくひら長嘯ちょうしょう

澗戸かんこ せきとしてひとなし

紛紛ふんぷん ひら


字句解釈

辛夷塢   辛夷の植えてある土手。
「辛夷」は日本では「こぶし」と読んでいるが、中国では紫木蓮(しもくれん)を指す。 (参考)「和漢古典植物考」寺山宏著

紅萼   赤い花びら。

澗戸   谷川沿いの家。

紛紛   みだれとぶさま。


詩の鑑賞

王維は、広い輞川荘にいろいろな樹木を植えて楽しんだ。 「木蘭柴」では朱モクレン、「辛夷塢」では白モクレンを詠っているのであろう。 ちなみに、日本の「こぶし」とモクレンは品種が異なる。遣唐使が間違えたのであろう。




 

輞川集:漆 園    唐 王 維

全唐詩卷一百二十八


 漆 園  王 維

古人非傲吏,

自闕經世務。

偶寄一微官,

婆娑數株樹。



 漆 園しつえん    王 維おうい

古人こじん 傲吏ごうりあら

みずから經世けいせいつとめ

たまたま一微官いちびかん

婆娑ばさす 數株すうしゅじゅ


字句解釈

漆園   漆(うるし)の植えてある園。荘子の典故あり。

傲吏    奢り高ぶった役人

經世   身過ぎ世過ぎ。

闕   欠く。ここでは、自ら避けるの意。

婆娑   ①舞を舞うさま。②歩き回るさま。ここでは②。


詩の鑑賞

四書五経の儒教から、老壮の道教、更には佛教へと、王維の思想の変化が見える。





 

輞川集:椒 園    唐 王 維

全唐詩卷一百二十八


椒 園  王 維

桂尊迎帝子,

杜若贈佳人。

椒漿奠瑤席,

欲下雲中君。



 椒 園しょうえん    王 維おうい

桂尊けいそんもて 帝子ていしむか

杜若とじゃくもて 佳人かじんおく

椒漿しょうしょうもて 瑤席ようせきてん

くださんとっす 雲中うんちゅうきみ


字句解釈

椒  しょう、はじかみ。椒酒。「椒房」は香りのよい山椒の葉を塗り込んだ壁の夫人用の部屋。 桂尊   桂の酒樽、あるいは、桂花を浮かべた酒。花の香の時は木犀。木の香りの時は肉桂。 (参考)桂花陳酒 日本の桂(かつら)とは別物。

帝子   皇帝(堯帝)の子供。楚辞九歌の典故あり。

杜若   「やぶみょうが」。日本では誤って「かきつばた」の別名ともする。

佳人   美人。ここでは、湘夫人のこと。

椒漿   おとそ。山椒をしたしたジュウス。

瑤席   珠で飾った美しい席。




詩の鑑賞

楚辞の世界に没入した、幻想の別世界に遊んでいる詩。平仄は近体詩の定型を満たしていない。





 


吟 詠    三浦哲郎様


黄鶴楼  唐 崔 顥

漢詩を楽しむ37頁 漢詩鑑賞辞典122頁


 黄鶴楼  崔顥

昔人已乗黄鶴去

此地空余黄鶴楼

黄鶴一去不復返

白雲千載空悠悠

青山歴歴漢陽樹

芳草萋萋鸚鵡州

日暮郷関何処是

煙波江上使人愁


 黄鶴楼こうかくろう   崔顥さいこう

昔人せきじんすで黄鶴こうかくじょうじて

 むなしくあます 黄鶴楼こうかくろう

黄鶴こうかく ひとたびってまたかえらず

白雲はくうん 千載せんさい くう悠悠ゆうゆう

青山せいざん 歴歴れきれき 漢陽かんようじゅ

芳草ほうそう 萋萋せいせい 鸚鵡州おうむしゅう

日暮にちぼ 郷関きょうかん いずれのところこれなる

煙波えんぱ 江上こうじょう ひとをしてうれえしむ



 

敕賜百官櫻桃    唐 王 維

全唐詩卷一百二十八


 敕賜百官櫻桃  王 維

芙蓉闕下會千官,

紫禁朱櫻出上闌。

総是寢園春薦後,

非關御苑鳥銜殘。

歸鞍競帶青絲籠,

中使頻傾赤玉盤。

飽食不須愁内熱,

大官還有蔗漿寒。

 ちょくして百官ひゃっかん櫻桃おうとうもう    王 維おうい

芙蓉ふよう 闕下けっか 千官せんかんかい

紫禁しきんの 朱櫻しゅおう 上闌じょうらん

すべれ 寢園しんえん 春薦はるすすめのち

かんするにあらず 御苑ぎょえんの 鳥銜とりふくのこすに

歸鞍きあん きそいてぶ 青絲せいしかご

中使ちゅうし しきりかたむく 赤玉せきぎょくさら

くまでくらいて もちいず内熱ないねつうれい

大官たいかん かえって 蔗漿しょしょうさむけ


字句解釈

櫻桃   さくらんぼ。この先代(高祖劉邦)を祭る行事は漢の景帝の頃から始まった。

芙蓉闕   芙蓉(はす)の形をした王宮の門。

紫禁   宮城。紫微は北極星の北にある星の名で天帝の居所。禁は普通人の入れないところ。

朱櫻   赤いサクランボ。

寢園   祖先を祭るおたまや。

春薦   春の祭りのお供え。

青絲籠   青い籠。「陌上桑」の故事あり。

中使   役人、宦官。

蔗漿   蔗漿はサトウキビのジュウス。二日酔いに利く。


詩の鑑賞

天宝九年、750年、王維52歳のとき母が亡くなり、足掛け3年の喪に服す。 喪が明けて文部郎中となったころ李林甫が死す。このころの宮廷詩人としての作。 サクランボを詠った詩は珍しい。春の華やかな様子が見える。




 

野人送朱櫻    唐 杜 甫

全唐詩卷二百二十六


 野人送朱櫻  杜 甫

西蜀櫻桃也自紅,

野人相贈滿筠籠。

數回細寫愁仍破,

萬顆勻圓訝許同。

憶昨賜沾門下省,

退朝擎出大明宮。

金盤玉箸無消息,

此日嘗新任轉蓬。

 野人やじん 朱櫻しゅおうおくる    杜 甫とほ

西蜀せいしょくの 櫻桃おうとう おのずからくれないなり

野人やじん 相贈あいおくりて 筠籠いんろう滿

數回すうかい 細寫さいしゃして やぶれんかとうれ

萬顆ばんか 勻圓きんえん かくおなじかといぶか

おもさく 賜沾してんす 門下省もんかしょう

退朝たいちょう 擎出けいしゅつす 大明宮たいめいkつう

金盤きんばん 玉箸ぎょくちょ 消息しょうそく

 あらたになめて 轉蓬てんぽうまか


字句解釈

野人   役人でない人。農夫。

朱櫻   サクランボ。

筠籠   竹の籠。筠は竹。

細寫   細心に器から器に移す。寫は水をそそぐの意もある。

訝   いぶかる。不思議に思う。感心する。

賜沾   たまわってうるおす。

擎出   捧げて出る。

玉箸   美しいはし。

轉蓬   あてどもなく転がるよもぎ。


詩の鑑賞

杜甫は安禄山の乱後成都に移った。たまたま、サクランボを送られて、昔のことを懐かしんだ。