第46回講義

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2018.06.28 録音

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王維作詩の背景



「王維年譜」



「唐王朝年表」


「中国の歴史要約」

王維年譜1 699年 1歳 ~727年 29歳
王維年譜2 730年 32歳 ~747年 49歳
王維年譜3 750年 52歳 ~761年 63歳

唐王朝年表1 618年 高 祖 ~779年 代 宗
唐王朝年表2 779年 徳 宗 ~907年 哀 宗

唐王朝年表1 中国の歴史要約
唐王朝年表2 中国の歴史要約(其の二)分裂の時代


中国文学地図

地名  輞川  長安  洛陽

川名・湖名  黄河  渭水  漢水


春秋列国の形勢

     


人名用語書名」

人名  王維  王縉  阿倍仲麻呂(晁衡/朝衡)  張九齢  裴迪(はいてき)  玄宗皇帝(李隆基)  楊貴妃  李林甫  高力士  楊 国忠  安禄山  杜甫  李白  藤原清河  文武天皇  元正天皇  吉備真備  菅原道真  阿部・安倍・安部氏

用語  輞川荘  大宝律令  遣唐使  留学生

     

 

再 掲


送秘書晁監還日本國    唐 王 維

漢詩鑑賞辞典162頁 全唐詩 卷一百二十七


 送秘書晁監還日本國
      王 維

積水不可極,

安知滄海東。

九州何處遠,

萬里若乘空。

向國唯看日,

歸帆但信風。

鼇身映天黑,

魚眼射波紅。

郷樹扶桑外,

主人孤島中。

別離方異域,

音信若為通。



 秘書晁監ひしょちょうかん日本國にほんこくかえるをおく
               王 維おうい

積水せきすい きわからず

いずくんぞ滄海そうかいひがしらん

九州きゅうしゅう いずれのところとお

萬里ばんり くうじょうずるがごと

くにかいて 

歸帆きはん かぜまか

鼇身ごうしん てんえいじてくろ

魚眼ぎょがん なみあか

郷樹きょうじゅ 扶桑ふそうそと

主人しゅじん 孤島ことううち

別離べつり まさいきことにす

音信いんしん いかんつうぜんや


字句解釈

秘書晁監   秘書は秘書庁。 晁は朝に同じで、安倍仲麻呂の中国名。監は長官。

積水   海のこと。『荀子』勸學篇に「積土成山」「積水成淵」とあり。 こつこつ学んで、大をなせとの教え。

九州   ①中国全土(9州に分かつ)。②全世界。

歸帆   帰り船。

鼇身   鼇は①大きなすっぽん。②想像上の大亀。

郷樹   あなたの国の樹。

扶桑   ①東海の日の出るところの樹。②日本。

主人   あなた、或いは、天皇。




詩の鑑賞

阿倍仲麻呂に対する王維の送別の詩。別れの感情を直接表現せず、 情景描写で友人に対する離別の情を詠っている。




 

送秘書晁監還日本國并序    唐 王 維

全唐詩 卷一百二十七

  送秘書晁監還日本國并序/
  舜覲羣后。有苗不格。禹會諸侯。防風後至。動干戚
  之舞。興斧鉞之誅。乃貢九牧之金。始頒五瑞之玉。
  我開元天地大寶聖文神武應道皇帝。大道之行。
  先天布化。乾元廣運。涵育無垠。若華為東道之標。
  戴勝為西門之候。豈甘心於筇杖。非徴貢於包茅。
  亦由呼耶來朝。舍於葡萄之館。卑彌遺使。報以蛟
  龍之錦。犧牲玉帛。以將厚意。服食器用。不寶遠物。
  百神受職。五老告期。况乎戴髮含齒。得不稽顙屈
  膝。海東國。日本為大。服聖人之訓。有君子之風。正
  朔本乎夏時。衣裳同乎漢制。歴歳方逹。繼舊好於
  行人。滔天無涯。貢方物於天子。同儀加等。位在王
  侯之先。掌次改觀。不居蠻夷之邸。我無爾詐。爾無
  我虞。彼以好来。廢關弛禁。上敷文敎。虚至寔歸。故
  人民雜居。往來如市。晁司馬結髮遊聖。負笈辭親。
  問禮於老學。詩於子夏。魯借車馬。孔丘遂適於
  宗周。鄭獻縞衣。季札始通於上國。名成太學。官至
  客卿。必齊之姜。不歸娶於髙國。在楚猶晉。亦何獨
  於由余。遊宦三年。願以君羮遺母。不居一國。欲其
  晝錦還郷。荘舃既顯而思歸。關羽報恩而終去。於
  是稽首北闕。裹足東轅。篋命賜之衣。懐敬問之詔。
  金簡玉字。傳道經於絶域之人。方鼎彝尊。致分器
  於異姓之國。琅琊臺上。回望龍門。碣石館前。夐然
  鳥逝。鯨魚噴浪。則萬里倒回。鷁首乗雲。則八風却
  走。扶桑若薺。鬱島如萍沃。白日而簸三山。浮蒼天
  而呑九域。黄雀之風動地。黒蜃之氣成雲。淼不知
  其所之。何相思之可寄。嘻。去帝郷之故舊。謁本朝
  之君臣。詠七子之詩。佩兩國之印。恢我王度。諭彼
  蕃臣。三寸猶在。樂毅辭燕而未老。十年在外。信陵
  歸魏而逾尊。子其行乎。余贈言者。

   積水不可極、安知滄海東。
   九州何處遠一作/所、萬里若乗空。
   向國唯看日、歸帆一作/途但信風。
   鰲身暎天黒、魚一作/蜃眼射波紅。
   郷樹扶桑外、主人孤島中。
   別離方異域、音信若為通。

   姚合稱此詩及送丘為下第觀獵三/首
   為詩家射鵰手而以此篇壓巻



詩の鑑賞

中国の開闢以来の事項を踏まえた懇切な序文である。(次回内容紹介の予定)。




 


吟 詠    大森正泰様


哭晁卿衡  唐 李 白

漢詩を楽しむ93頁、漢詩鑑賞辞典237頁


 哭晁卿衡  李白

日本晁卿辞帝都

征帆一片繞蓬壺

明月不帰沈碧海

白雲愁色満蒼梧


 晁卿衡ちょうけいこうこくす   李白りはく

日本にっぽん晁卿ちょうけい 帝都ていと

征帆せいはん一片いっぺん 蓬壺ほうこめぐ

明月めいげつ かえらず 碧海へきかいしず

白雲はくうん 愁色しゅうしょく 蒼梧そうご

 

送晁補闕歸日本國    唐 趙 驊

全唐詩 卷一百二十九


 送晁補闕歸日本國  趙 驊

西掖承休浣,

東隅返故林。

來稱郯子學,

歸是越人吟。

馬上秋郊遠,

舟中曙海陰。

知君懷魏闕,

萬里獨搖心。

 晁補闕ちょうほけつ日本國にほんこくかえるをおくる    趙 驊ちょうか

西掖せいいき 休浣きゅうかん

東隅とうぐう 故林こりんかえ

たりしょうす 郯子たんしがく

かえればれ 越人えつじんぎん

馬上ばじょう 秋郊しゅうこうとお

舟中しゅうちゅう 曙海しょかいくら

る きみ魏闕ぎけつおも

萬里ばんり ひとこころゆらすを


字句解釈

趙驊    開元中の進士、仲麻呂と同期の友人か? 字は雲卿,鄧州の人。開元中, 進士連擢科の第に挙げらる。官は,秘書少監に至る。詩一首。 補闕   官名。皇帝の補佐官。中書省の仲麻呂が兼務か?

西掖   中書省。仲麻呂は中書省の長官。

休浣   役人の休暇。休んで体を浣(あら)う。

郯子學   孔子の學、論語・儒教。孔子は郯の王から学問を学んだ。

越人吟   異国の訳の分からぬ言葉。

魏闕   魏は巍でたかいの意。闕は宮殿。


詩の鑑賞

全唐詩中、趙驊の唯一の詩。




 


再 掲

銜命使本国  日本 阿倍仲麻呂

全唐詩 卷七百三十二

 銜命使本国  阿倍仲麻呂

銜命将辞国

非才忝侍臣

天中恋明主

海外憶慈親

伏奏違金闕

騑驂去玉津

蓬莱郷路遠

若木故園隣

西望憶恩日

東帰感義辰

平生一宝剣

留贈結交人


 めいふくんで本国ほんごく使つかいす   阿倍仲麻呂あべのなかまろ

めいふくんで まさくにせんとす

非才ひさい 侍臣じしんかたじけなくす

天中てんちゅう 明主めいしゅ

海外かいがい 慈親じしんおも

伏奏ふくそう 金闕きんけつ

騑驂ひさん 玉津ぎょくしん

蓬莱ほうらい 郷路きょうろとお

若木じゃくぼく 故園こえんとな

西望せいぼう おんおも

東帰とうき かんずるとき

平生せいぜいの 一宝剣いちほうけん

留贈りゅうぞうす まじわりをむすびしひと


字句解釈


銜命   銜 コウ ふくむ ①馬の轡 ②くわえる 銜? (参考)含 口にいれる 哺 口に入れてかむ  ③命を奉ずる、ここでは③の意。 皇帝の命令で日本に使いする。

天中   天の真ん中。唐、あるいは、長安。

明主   玄宗皇帝。

伏奏   平伏して願う。

金闕   宮城。闕は楼台をもった門。

違   ①たがう、ことなる ②はなれる ③とおざかる、ここでは③。

津   港、船着き場。

騑驂    添え馬。予備の馬。高官対偶。

蓬莱   海中の仙人の住む山。方丈、瀛洲ともいう。

若木   伝説の木。山海経にある。海の彼方、太陽の沈むところ生える木。(ちょっと意味が合わない?)

留贈   とどめおくる。

     

詩の鑑賞

この詩は、仲麻呂が帰国にあたって催された送別会の席上で披露したものではなかろうか。

全唐詩には、732巻、朝衡「銜命還国作」とある。

五言排律である。絶句+対句2ヶー>律詩、絶句+対句偶数個ー>排律。この詩は4聯の対句をもつ。

     
 


再 掲

哭晁卿衡  唐 李 白

漢詩を楽しむ93頁、漢詩鑑賞辞典237頁


 哭晁卿衡  李白

日本晁卿辞帝都

征帆一片繞蓬壺

明月不帰沈碧海

白雲愁色満蒼梧


 晁卿衡ちょうけいこうこくす   李白りはく

日本にっぽん晁卿ちょうけい 帝都ていと

征帆せいはん一片いっぺん 蓬壺ほうこめぐ

明月めいげつ かえらず 碧海へきかいしず

白雲はくうん 愁色しゅうしょく 蒼梧そうご


字句解釈

哭    大きな声を出して泣く。

晁卿衡    日本名 阿倍 仲麻呂。卿は位のある人の敬称。

帝都    長安。

征帆一片    征帆は旅の船。蘇州から4隻の船団で船出した。「天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出し月かも」は この時の作。なお、鑑真和上もこの時の船団の中にいた。

蓬壺    海中の仙人の住む山。山海経に蓬壺島、蓬莱山とある。

明月    仲麻呂のこと。

沈碧海    難破して沈んだ。

蒼梧    伝説の皇帝が南方を巡視したとき死んだ場所。広東省、または、 湖南省嶺南の山の中。(明代創建の舜帝廟があるが根拠疑問)の2説あり。2人の妃が洞庭湖に身を投じたとの伝説もある。

     

詩の鑑賞

李白53歳の作。死を悼むお手本となる詩。李白、阿部仲麻呂は同い年との説もある。



 


再 掲

洛中貽朝校書衡朝
 即日本人也  唐 儲光義


全唐詩 巻138


 洛中貽朝校書衡
 朝即日本人也  儲光義

萬國朝天中

東隅道最長

吾(一作朝)生美無度

高駕仕春坊

出入蓬山裏

逍遙伊水傍

伯鸞遊太學

中夜一相望

落日懸高殿

秋風入洞房

屢言相去遠

不覺生朝光


 洛中らくちゅう朝校書衡ちょうこうしょこうおく
  ちょうすなわ日本人にほんじんなり   儲光義ちょうこうぎ

萬國ばんこく 天中てんちゅうちょう

東隅とうぐう みちもっともなが

ちょう ごせい はかるなし

高駕こうかして 春坊しゅんぼうつか

出入しゅつにゅうす 蓬山ほうざんうち

逍遙しょうようす 伊水いすいかたわ

伯鸞はくらん 太學だいがくあそ

中夜ちゅうや ひとたび相望そうぼう

落日らくじつ 高殿こうでんかか

秋風しゅうふう 洞房どうぼう

屢言るいげん ることとお

おぼえず 朝光ちょうこうしょうずるを


字句解釈

儲光義    仲麻呂と科挙合格同期生(開元14年、726年進士)ではなかろうか。 安禄山の乱で役人になったため乱後滅亡。

高駕    立派な乗り物。

無度 限りない。

春坊   春宮。皇太子の居所。仲麻呂の役職は当時、左春坊司経局校書。

蓬山   大明宮のこと。

伊水   洛河の支流。洛陽は洛河の北(陽)にある。

伯鸞   人名。後漢の人、梁鴻、伯鸞は字名。独立独歩で有名。伯鸞の竈、他人の残り火は使わない。 妻は孟光、孟光荊妻。荊のかんざし、良妻のこと。 太學   科挙のための大学。当時は唯一の大学。

相望   天を望む。

洞房   役所の奥深い部屋、あるいは、夫人の部屋(洞房華燭)。ここでは前者であろう。

     

詩の鑑賞

五言排律。儲光義が進士同期の仲麻呂をほめて詠った詩。進士同期は一生の付き合いがあった。