第49回講義

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2018.10.25 録音

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杜牧作詩の背景



「杜牧年譜」


「唐代詩人年表」


「唐王朝年表」


「中国の歴史要約」

杜牧年譜1 803年 1歳 ~839年 37歳
杜牧年譜2 840年 38歳 ~852年 50歳

唐代詩人年表1 580年 魏 徴 ~718年 賈 至
唐代詩人年表2 735年 李 頎 ~843年 魚玄機

唐王朝年表1 618年 高 祖 ~779年 代 宗
唐王朝年表2 779年 徳 宗 ~907年 哀 宗

中国の歴史要約1 
中国の歴史要約2 分裂の時代


中国文学地図

地名  長安  洛陽  太源  揚州  琉璃廠  南京

川名・湖名  淮河  長江


春秋列国の形勢

     


人名用語書名」

人名 杜牧 杜佑  元稹  白居易  牛僧儒  李徳裕  李白  杜甫 孟浩然  王維  高祖(李淵)  太宗(李世民)  王莽  煬帝  魏徴  杜 審言  宋之問  賀知章  高宗  則天武后  中宗  睿宗  韋皇后  玄宗皇帝(李隆基)  楊貴妃  阿倍仲麻呂(晁衡/朝衡)  張九齢  李林甫  安禄山  肅宗  柳宗元  韓 愈  李商隠  温庭筠  魚玄機

用語  宦官  甘露の変  牛李の党争  遣隋使  貞観の治  遣唐使  開元の治  安史の乱  節度使  唐朝官職

書名  全唐詩

     

 

再 掲

山 行  唐 杜 牧


漢詩鑑賞辞典547頁  全唐詩卷二百七十三


 山 行  杜 牧

遠上寒山石徑斜,

白雲生處有人家。

停車坐愛楓林晩,

霜葉紅於二月花。


 山行さんこう  杜牧とぼく

とお寒山かんざんのぼれば 石徑せっけいななめなり

白雲はくうん しょうずるところ 人家じんか

くるまとどめて そぞろあいす 楓林ふうりんくれ

霜葉そうようは 二月にがつはなよりくれないなり


字句解釈

山行   山歩き。

寒山   寂しい山。

石徑   石ころみち。徑はこみち。

白雲   仙人の縁語。

人家   仙人の住む家。(参考)山居(宋・釋志芝)

坐愛   そぞろに愛す。なんとなく、わけもなく。

楓林   楓樹。江南に多い。日本のカエデとは別種。

霜葉   霜にあって紅葉した葉っぱ。

紅於   於(より)もくれない。転じて、「こうお」は紅葉(もみじ)のことをいう。

二月花   旧暦の3月の花、桃の花。


詩の鑑賞

軽妙洒脱。晩唐の洗練された、静かな、平安な、絵に書いたような一詩。




 

山 居  宋 釋志芝





 山 居  釋志芝

千峰頂上一間屋,

老僧半間雲半間。

昨夜雲隨風雨去,

回頭方羨老僧閑。


 山居さんきょ  釋志芝しゃくしし

千峰せんぽう 頂上ちょうじょう 一間いっけんおく

老僧ろうそう 半間はんけん 雲半間くもはんけん

昨夜さくや くもかぜ 雨去あめさ

こうべめぐらし まさうらやむ 老僧ろうそうかん


字句解釈

一間   ひとま、ひとへや。

半間   ひとまの半分。


詩の鑑賞

隠者、仙人の代表的詩。隠者の典型、理想像。




 

淸明    唐 杜 牧

漢詩を楽しむ19頁 漢詩鑑賞辞典551頁


 淸明    杜牧

淸明時節雨紛紛,

路上行人欲斷魂。

借問酒家何處有,

牧童遙指杏花村。

 淸明せいめい  杜牧とぼく

淸明せいめいの 時節じせつ 雨紛紛あめふんぷん

路上ろじょうの 行人こうじん こんたんとほつ

借問しゃもんす 酒家しゅか いずれのところにか

牧童ぼくどう はるかに杏花村きょうかそん


字句解釈

淸明   1年を24に分割した季節(24節気) のひとつ。春分から15日後。新暦4月5日。花冷えの頃。

紛紛   雨や花が乱れ落ちるさま。

行人   旅人

欲斷魂   心が滅入るようだ。

借問   ちょっと教えてよ。

牧童   樵夫、漁夫と同様に、仙人と俗人の中間の存在。

杏花村   白っぽいあんずの花。桃の花(赤っぽい)ではだめ。雨の中に煙っている。


詩の鑑賞

起承転結がよい。転句がすばらしい。絵を見るような一詩。




 

江南春    唐 杜 牧

漢詩を楽しむ53頁 漢詩鑑賞辞典544頁 全唐詩卷五百二十二


 江南春    杜牧

千里鶯啼綠映紅,

水村山郭酒旗風。

南朝四百八十寺,

多少樓臺煙雨中。

 江南こうなんはる  杜牧とぼく

千里せんり 鶯啼うぐいすないて 綠紅みどりくれないえい

水村すいそん 山郭さんかく 酒旗しゅきかぜ

南朝なんちょう 四百しひゃく 八十寺はっしんじ

多少たしょうの 樓臺ろうだい 煙雨えんううち


字句解釈

江南   長江の武漢より下流の 九江、江蘇省、 蘇州、上海のあたり。 風光明媚で日本と気候がよく似ている。上流の南側は湖南。

鶯   日本の鶯と異なりもっと大きい。朝鮮鶯。

綠映紅   桃、あるいは、杏の花の背景に緑が点々と映ずるぐらいの花盛り???

酒旗   酒屋の旗。

南朝   中国の歴史要約1  南北朝時代<
地名の南京は明の永楽帝が 北京に都を移したことによる。

八十寺   十はシン(真韻)と読んで平字。もともと方言で、使い始めたのは白居易。

多少   ①沢山、②多いか少ないか、③多いか少ないか?(疑問)。日本語では少ないの意。ここは①


詩の鑑賞

起承は2次元水平方向の景色、転結は3次元垂直方向の歴史。のどかな春景色。




 

吟 詠    伊藤光子様 

最上川  日本 松尾芭蕉





 最上川  松尾芭蕉

最上川はみちのくより出て、山形を水上とす。
ごてん、はやぶさなど云おそろしき難所有。
坂敷山の北を果は酒田の海に入。
左右山覆ひ、茂みの中に船を下す。
是に稲つみたるをや、いな船といふならし。
白糸の滝は、青葉の暇に落て、仙人堂岸に臨て立。
水みなぎって舟あやうし。
五月雨を集めて早し最上川 集めて早し最上川


 

泊秦淮    唐 杜 牧

漢詩を楽しむ41頁 漢詩鑑賞辞典549頁 全唐詩卷五百二十三


 泊秦淮    杜牧

煙籠寒水月籠沙,

夜泊秦淮近酒家。

商女不知亡國恨,

隔江猶唱後庭花。

 秦淮しんわいはくす  杜牧とぼく

けむり寒水かんすいめ つきすな

よる秦淮しんわいはくして 酒家しゅかちか

商女しょうじょは しらず 亡國ぼうこくうらみ

こうへだてて うたう 後庭花こうていか


字句解釈

秦淮   南京を取り巻く川の名。王安石

煙   もや。

籠   とじこめる。つつみこむ。籠は鳥かご、は魚を入れるかご。

寒水   ものさびしい水。

月籠沙   白い月光と砂の白が混ざって区別がつかない。

商女   芸者。

後庭花   玉樹後庭花 


詩の鑑賞

起承は2次元水平方向の景色、転結は3次元垂直方向の歴史。




 

玉樹後庭花    南北朝 陳叔宝

漢詩を楽しむ41頁 漢詩鑑賞辞典549頁 全唐詩卷五百二十三


 玉樹後庭花    陳叔宝

麗宇芳林對高閣,

新妝艷質本傾城。

映戸凝嬌乍不進,

出帷含態笑相迎。

妖姫臉似花含露,

玉樹流光照後庭。

 玉樹後庭花ぎょくじゅこうていか  陳叔宝ちんしゅくほう

麗宇れいう 芳林ほうりん 高閣こうかくたい

新妝しんしょう艷質れいしつ もとより傾城けいせい

えいじ きょうらしてすすまず

とばりで たいふくみ わらいてむか

妖姫ようき けんはなつゆふくむに

玉樹ぎょくじゅ 流光りゅうこう 後庭こうていてら


字句解釈

妖姫   艶めかしい女性。

臉   目の下あたり。顔の代名詞。

後庭  宮殿の前は政治をするところ、後ろは美女の遊ぶところ。


詩の鑑賞

起承転結が不十分。




 

烏衣巷    唐 劉禹錫

漢詩鑑賞辞典410頁 全唐詩卷三百六十五


 烏衣巷    唐 劉禹錫

朱雀橋邊野草花,

烏衣巷口夕陽斜。

舊時王謝堂前燕,

飛入尋常百姓家。

 烏衣巷ういこう  劉禹錫りゅうしゃく

朱雀しゅじゃく 橋邊きょうへん 野草やそうはな

烏衣うい 巷口こうこう 夕陽斜せきようななめなり

舊時きゅうじの 王謝おうしゃ 堂前どうぜんつばめ

んでる 尋常じゅんじょう 百姓ひゃくせいいえ


字句解釈

烏衣   烏のような黒い着物。大貴族の大富豪の子弟は黒い服を着ていた。

巷口   町の入口。

王謝   金持ちの王さん、謝さん。

百姓   いろいろな沢山の姓。「ひゃくしょう」ではない。


詩の鑑賞

南京の今昔の栄枯盛衰を詠っている。これも、起承は情景、転結が歴史。