ブルーライト漢詩29

  古書店買佐藤春夫著
  閑談半日
古書店にて佐藤春夫著
    閑談半日を買う

     甲戌板行瀟洒装
    甲戌こうじゅつの板行(出版)瀟洒しょうしゃの装い
     古風賢慮在文章
      古風賢慮は文章にあり
     故人頻羨珍書価
   故人(親友)はしきりに羨む珍書の価い
     半日閑談傾一觴
    半日閑談して一觴(一杯)を傾ける

解説

神奈川新聞平成27年3月1日日曜日版から転載

≪漢詩アラカルト≫

 同じ漢詩でも、それを訳す 人によって詩の味わいが変わ ってくる。佐藤春夫と井伏鱒 二。
 韋応物の「懐君属秋夜/散 歩詠涼天/山空松子落/幽人 応未眠ーー君を懐うて秋夜に 属す/散歩して涼天に詠ず/ 山空しくして松子落ち/幽人 応に未だ眠らざるべし」を佐 藤春夫は「君のしのばれ長き夜 を/夜さむに歌いさまよえり /松かさ落ちて山しずか/詫 びびといまだ寝ねざらん」。 井伏訳は「ケンチコヒシヤヨ サムノバンニ/アチラコチラ デブンガクカタル/サビシイ 庭ニマツカサオチテ/トテモ オマエハ寝ニクウゴザロ」。

作者紹介

岡崎満義
おかざき・みつよし
1936年鳥取県生まれ。京都大文学部卒。 60年文芸春秋入社。
「ナンバー」「文芸春秋」編集長など。 99年退職。全日本漢詩連盟常務理事、 神奈川県漢詩連盟会長。
茅ヶ崎市在住。
shinkanren@.jp

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