ブルーライト漢詩35

   憶三浦哲郎先生
      三浦哲郎先生をおも

     文苑五旬風骨清
   文苑(文壇)五旬(五十年)風骨清し
     孤高雅藻有余情
   孤高の雅藻(品のある文章)余情あり
     近年多病至悲報
       近年多病 悲報至る
     遺著猶聞温恕声
      遺著に猶聞く温恕おんじょの声

解説

神奈川新聞平成27年9月6日日曜日版から転載

≪漢詩アラカルト≫

 最近、安藤始「三浦哲郎 論一血脈の迷路」(おうふ う社)が出版された。著者 は愛情をもって全作品を論 じ、格好の三浦文学ガイド ブックになっている。
 1960年芥川賞受賞の「忍 ぶ川」は永遠に日本文学史 に残る名作だが、小説中に 出てくる妻となる志乃は徳 子夫人がモデルだ。家庭生 活ではもちろん、作品の中 でもしばしば登場、夫人の 内助の功は大きかった。
 酒肆嘉名是忍川
 佳人逢得好因縁
 五旬同歩阻難路
 倶哭清魂去杳然
 「酒肆(酒場)の嘉名是 れ忍ぶ川/佳人逢い得たり 好因縁/五旬同(とも)に 歩む阻難の路/倶(とも) に哭す清魂杳然として去る を」

作者紹介

岡崎満義
おかざき・みつよし
1936年鳥取県生まれ。京都大文学部卒。 60年文芸春秋入社。
「ナンバー」「文芸春秋」編集長など。 99年退職。全日本漢詩連盟常務理事、 神奈川県漢詩連盟会長。
茅ヶ崎市在住。
shinkanren@.jp

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