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再 掲 曲 江 二首 その二 唐 杜 甫 漢詩を楽しむ 23頁 漢詩鑑賞辞典 304頁 全唐詩 巻二百二十五 |
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字句解釈 |
朝回 依朝回の略。朝、朝廷から帰る。 典春衣 春の衣を質に入れる。 人生七十古來稀 あまりにも有名な一句。 蛺蝶 ちょうちょう。 深深 奥深くよく見えぬ様。静まり返っているさま。 蜻蜓 とんぼ。 款款 ゆるやかな様子。 傳語風光共流轉,暫時相賞莫相違。 風光に伝えよう、わたしとともに流れていこうと。 しばらくの間お互いに賞して、互いにそむきあうことのないようにしよう。 |
詩の鑑賞 |
757年11月長安は回復された。杜甫は左拾遺として長安に帰ったが、肅宗に疎んぜられた。これは翌年、杜甫47歳、春の作。 律詩。杜甫は律詩の名人である。律詩の要件である対句が見事である。「尋常」と「七十」は対になっていないように見えるが 「尋」は「1尋(ひとひろ)」、「常」は「2尋(ふたひろ)」とすれば納得できる。 「蛺蝶」、「蜻蜓」、「深深」、「款款」ともに重韻。 この詩は、杜甫らしくない、投げやりでデカダンスである。酒が出てくるが、陶淵明の「飲酒」にみるような、 心から酒を楽しむ雰囲気はない。苦しい酒である。 「人生七十古來稀」古来有名な1句である。 |
杜 甫 作詩の背景 |
「詩人杜甫の 足あと」 |
人名 秦始皇帝 玄宗皇帝 厳武 安禄山 地名 洛陽 長安 華州(華山、潼関) 秦州(隴山、天水) 同谷 四川省(成都) 剣閣 川名 黄河 渭水 長江 嘉陵江 岷江 用語 司功参軍 浣花草堂 |
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詩の鑑賞 |
房琯を弁護した杜甫は華州 に左遷された。そのころ各地で見た人民の悲惨な状況を詠った三吏三別の詩の中の最も傑作とされる一詩である。 杜甫の気持ちが、皇帝に供奉することから人民の側に付く方向に変わったことを示している。 杜甫は自分の周囲の外物から、物事を抽出して詩にそなえている。すなわち、詩の中で物事に語ら(代弁)せている。詩の作者は起句と結句の後前2,3句 に現れるのみで、他の部分は、杜甫が客観的に見ている外物の情景描写である。この手法は「春望」においても同様である。 |
蜀 相 唐 杜 甫 漢詩を楽しむ 31頁 漢詩鑑賞辞典 314頁 全唐詩 巻二百二十六 |
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字句解釈 |
蜀相、丞相 天子を補佐する最高の大臣。 諸葛亮。 後漢末期から三国時代の蜀漢の政治家・軍人。字は孔明(こうめい)。 蜀漢の建国者である劉備の創業を助け、 その子の劉禅の丞相としてよく補佐した。伏龍、臥龍とも呼ばれる。 今も成都や南陽には諸葛亮を祀る武侯祠がある。 三国志 三国志演義 曹操 孫権 曹丕 司馬懿 周瑜 白帝城 文選 襄陽 祠堂 祠ほこら。武侯廟。 錦官城 成都。絹糸、錦の産地。岷江の支流の錦江が流れている。 柏 「かしわ」ではなく「ひのき」の一種、冬も落葉しない。このてかしわ。 黄鸝 朝鮮うぐいす。日本の鴬より大型。 三顧 三顧礼。 天下計 天下三分計。 開濟 ものごとを開き(創業)、護る(守成)。 出師 兵を出すこと。出師の表 岳飛 五丈原 |
詩の鑑賞 |
成都での5年間は杜甫の生活が最も安定していた。対句がよい。律詩の手本。 |
江 村 唐 杜 甫 漢詩鑑賞辞典 318頁 |
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字句解釈 |
清江 清らかな川。。 事事幽 事事、ことごとく、すべてのこと。幽、奥深くて物静か。 自去自來 思いのまま、来たり、去ったりする。 相親相近 相、互いにではなく、対象がある場合に使う添え字。 水中鷗 「列子」に故事あり。悪意のある者には鴎は近づかない。 棋局 碁盤。 釣鉤 つりばり。 所須 必要とするところ。須、すべからく、もちいる、まつ。 |
詩の鑑賞 |
穏やかな家庭内の描写が上手な対句を使ってなされている。 |
客 至 唐 杜 甫 漢詩を楽しむ 111頁 漢詩鑑賞辞典 320頁 全唐詩 巻二百二十六 |
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字句解釈 |
客至 全唐詩原注に、「喜崔明府相過」崔、明府のあい過るを喜ぶ、とある。崔は母崔氏の縁戚か? 明府は群、県の長官。 舍南舍北 家の南方、北方。 蓬門 よもぎのもん。そまつな門。謙遜語。 盤餐 盤は、皿のこと、餐は、たべもの。 兼味 あじをかねる。いろいろなあじ。無兼味、いろいろはない、一品。 舊醅 ふるいどぶろく。 肯與鄰翁相對飲 読み2通り。 あえてりんおうとあいたいしてのまんや。 りんおうとあいたいしてのむをがえんぜば。意味は同じ。 |
詩の鑑賞 |
平仄、対句、完璧。律詩の手本。陶淵明の心境に近づいたか、穏やかな味わいがする。 |
絶句二首 其一 唐 杜 甫 漢詩を楽しむ 51頁 漢詩鑑賞辞典 330頁 全唐詩 巻二百二十八 |
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字句解釈 |
遲日 春の日。 燕子 つばめ。子は子供ではなく、かわいいい燕の意。 鴛鴦 おしどり。鴛はおす、鴦はめす。 |
詩の鑑賞 |
杜甫に絶句は珍しい。 764年、53歳、浣花草堂 での作。長閑な春の情景。起承2句、転結2句、それぞれ、対句構成。杜甫の絶句は自然に対句をなす。 |
絶句二首 其二 唐 杜 甫 漢詩を楽しむ 61頁 漢詩鑑賞辞典 331頁 全唐詩 巻二百二十八 |
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字句解釈 |
碧 みどり、青のこと。碧玉、サファイア。翆、みどり。翡翠。 逾 いよいよ。兪、愈、逾、弥(彌)、いずれも、いよいよ。愈は景色など、弥栄(いやさか)国字など、 使い方いろいろ。 看 「みすみす」すぎてゆく。見ているだけでどうしようもない。「まのあたりに」すぎてゆく、もある。 |
詩の鑑賞 |
故郷に帰りたい思いがある。この翌年、厳武が死亡し、杜甫は長江を下ることになる。 |
絶 句 唐 杜 甫 漢詩鑑賞辞典 332頁 全唐詩 巻二百二十八 |
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字句解釈 |
黄鸝 うぐいす。 窗 「窓」の本字。 門 門前。 西嶺 西方の山なみ。 千秋雪 万年雪。 東呉 当方の呉のくに。 |
詩の鑑賞 |
兩個・一行、黄鸝・白鷺、鳴翠柳・上青天、窗含・門泊、西嶺・東呉、千秋雪・萬里船、 それぞれ対語であり、句もまたそれぞれ対句をなす。見事である。 |