第25回講義

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2016.05.26 録音

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白居易 作詩の背景




「白楽天年譜」

白楽天年譜1 772年 1歳 ~800年 29歳


中国文学地図

地名  長安  洛陽  河南省
山名  陰山山脈


「中国歴史要約」

中国歴史要約1
中国歴史要約2
中国歴史要約3


「人名・用語・書名」

人名  王昭君  西 施  楊貴妃  虞美人  前漢元帝  呉王夫差  玄宗皇帝  顧況

用語  科挙  郷試
書名  楚辞  漢書  後漢書  西京雑記

     

 


王昭君 其二  唐 白居易
漢詩を楽しむ108頁 全唐詩卷一十九


 王昭君 其二  白居易

漢使卻回憑寄語,

黄金何日贖蛾眉。

君王若問妾顏色,

莫道不如宮裏時。


 王昭君おうしょうくん   白居易はくきょい

漢使かんし 卻回かいきゃく って

黄金おうごん いずれのにか 蛾眉がびあがなわん

君王くんのう しょう顏色がんしょくわば

かれ 宮裏きゅうりときかずと


字句解釈

漢使   漢からの使者。

卻回   還る。

憑   たのむ。依頼する。

蛾眉   美人。王昭君のこと。

贖   あがなう。買う。

不如   しかず。およばない。

別情   別れの悲しみ。


詩の鑑賞

白居易十七歳の作。王昭君を題材に、説明調ではない詩をすでに作っている、後に長恨歌ができるのを 予告しているようだ。



 

王昭君 其一  唐 白居易
漢詩鑑賞辞典421頁 全唐詩卷一十九


 王昭君 其一  白居易

滿面胡沙滿鬢風,

眉銷殘黛臉銷紅。

愁苦辛勤憔悴盡,

如今卻似畫圖中。


 王昭君おうしょうくんいち  白居易はくきょい

滿面まんめん胡沙こさ 滿鬢まんびんかぜ

まゆ殘黛ざんたいえ かお紅銷べにき

愁苦しゅうく 辛勤しんぎんして 憔悴しょうすいつくすれば

如今じょこん かえって畫圖がとうちたり


字句解釈

銷殘黛   黛はまゆずみ。殘はやつれた、きえかかった。銷は消とおなじ。

臉   けん。目の下のあたり、顔のこと。仄字。顔に同じ。顔は平字。

辛勤   しんぎん。つらいつとめ。

憔悴   しょうすい。やせおとろえること。

盡   動詞+盡でその動作の極限までの意。


詩の鑑賞

白居易、同じく十七歳の作。単なる史実ではない物語性、面白さがある。



 

王昭君   唐 李 白
漢詩鑑賞辞典421頁 全唐詩卷一十九


 王昭君二首  李 白

漢家秦地月,

流影照明妃。

一上玉關道,

天涯去不歸。

漢月還從東海出,

明妃西嫁無來日。

燕支長寒雪作花,

蛾眉憔悴沒胡沙。

生乏黄金枉圖畫,

死留青塚使人嗟。



昭君拂玉鞍,

上馬啼紅頬。

今日漢宮人,

明朝胡地妾。


 王昭君おうしょうくん二首にしゅ  李白りはく

漢家かんか 秦地しんちつき

流影りゅうえい 明妃めいひらす

ひとたびのぼる 玉關ぎょくかんみち

天涯てんがい りてかえらず

漢月かんげつ 東海とうかいよりづるも

明妃めいひ 西にししてたるなし

燕支えんし とこしえさむく ゆきはな

蛾眉がび 憔悴しょうすいして 胡沙こさっす

きては黄金おうごんとぼしく 圖畫とがまげられ

しては青塚せいちょうとどまりて ひとをしてなげかしむ



昭君しょうくん 玉鞍ぎょくあんはら

うまのぼりて 紅頬こうきょう

今日こんじつ 漢宮かんきゅうひと

明朝みょうちょう 胡地こちしょう


字句解釈

流影   月影。

明妃   王昭君のこと、明君ともいう。本名、嬙、字、昭。後世、晋文帝(司馬昭)を憚って 王昭君と言わなくなった。

玉關   玉門關。王昭君は長安の北、内モンゴルに行ったのであって玉門關には 行っていないがここでは域外遠くのという意。

燕支   匈奴の地名。紅の産地、転じて、美人の住むところ。

憔悴   しょうすい。やせおとろえること。

紅頬   紅顔、美人の顔。

妾   めかけ。実際には正室であった。


詩の鑑賞

李白らしい王昭君。白居易も読んで「蛾眉憔悴沒胡沙」を使っている。



 

及第後歸覲,留別諸同年  唐 白居易
全唐詩卷四百二十八


 及第後歸覲,
  留別諸同年  白居易

十年常苦學,

一上謬成名。

擢第未為貴,

賀親方始榮。

時輩六七人,

送我出帝城。

軒車動行色,

絲管舉離聲。

得意減別恨,

半酣輕遠程。

翩翩馬蹄疾,

春日歸郷情。


 及第きゅうだいのち歸覲ききんせんとし、
  諸同年しょどうねん留別りゅうべつす  白居易はくきょい

十年じゅうねん つね苦學くがくし、

ひとたびのぼって あやまってす。

だいぬきんでらるるも いまたっとしとさず、

しんして まさはじめてえいなり。

時輩じはい 六七人ろくしちにん

われおくりて 帝城ていじょうづ。

軒車けんしゃ 行色こうしょくうごかし、

絲管しかん 離聲りせいぐ。

得意とくい 別恨べっこんげんじ、

半酣はんかん 遠程えんていかるくす。

翩翩へんぺんとして 馬蹄ばていはやく、

春日しゅんじつ 歸郷ききょうじょう


字句解釈

歸覲   国に帰って、両親や主君に謁する(まみえる)こと。参勤交代の勤は覲の意であったのではなかろうか?

苦學   苦労して学ぶ。日本の苦學は学費を稼いで学ぶ意でちょっと違う。

上   上第(じょうだい)。試験に及第すること。

擢   擢第(たくだい)。試験に及第すること。

時輩   同時合格者。

軒車   弓型の屋根の立派な車。

動行色   車が動き出す。

別恨   わかれの悲しみ。

半酣   ほろよい。


詩の鑑賞

白居易29歳、科挙に合格した時の作。得意満面の浮き浮きした様子を正直に詠っている。
23歳の時、父を失い、一時苦労したが、科挙合格17人中4番、最年少でよろこびもひとしおであったろう。




詩 吟  三上光敏様


峨眉山月歌 唐 李白

漢詩を楽しむ30頁、漢詩鑑賞辞典187頁、岩波唐詩選下39頁




 峨眉山月歌  李白

峨眉山月半輪秋

影入平羌江水流

夜発清溪向三峡

思君不見下渝州


 峨眉山月がびさんげつうた   李白りはく

峨眉山月がびさんげつ 半輪はんりんあき

かげは 平羌江水へいきょうこうすいってなが

よる 清溪せいけいはっして三峡さんきょうかう

きみおもえどもえず 渝州ゆしゅうくだ


 


白居易 作詩の背景




「白楽天年譜」

白楽天年譜1 772年 1歳 ~800年 29歳
白楽天年譜2 801年 30歳 ~815年 44歳


中国文学地図

地名  長安  長安城  長安城常楽里


「人名・用語・書名」

人名  元稹
用語  排行

     

 

常樂里閒居、偶題十六韻、
兼寄劉十五公輿、王十一起、
呂二炅、呂四熲、崔十八玄 亮、
元九稹、劉三十二敦質、
張十五仲元。
時為校書郎   唐 白居易

全唐詩卷四百二十八


 常樂里閒居、偶題十六韻、
兼寄劉十五公輿、王十一起、
呂二炅、呂四熲、
崔十八玄亮、元九稹、
劉三十二敦質、張十五仲元。
時為校書郎  白居易

帝都名利場,

鶏鳴無安居。

獨有懶慢者,

日高頭未梳。

工拙性不同,

進退跡遂殊。

幸逢太平代,

天子好文儒。

小才難大用,

典校在秘書。

三旬兩入省,

因得養頑疏。

茅屋四五間,

一馬二僕夫。

俸錢萬六千,

月給亦有餘。

既無衣食牽,

亦少人事拘。

遂使少年心,

日日常晏如。

勿言無知己,

躁靜各有徒。

蘭台七八人,

出處與之倶。

旬時阻談笑,

旦夕望軒車。

誰能讎校閑,

解帶臥吾廬。

窗前有竹玩,

門處有酒酤。

何以待君子,

數竿對一壺。

 常樂里閒居じょうらくりかんきょたまたま十六韻じゅうろくいんだいす、
 かねりゅう十五公輿じゅうごこうよ、 王十一起おうじゅういちき
 呂二炅りょじけい呂四熲りょしえん崔十八玄亮さいじゅうはちげんりょう
 元九稹げんきゅうしん劉三十二敦質りゅうさんじゅうにとんしつ張十五仲元ちょうじゅうごちゅうげん
 とき校書郎こうしょろうり  白居易はくきょい

帝都ていとは 名利めいり

鶏鳴にわとりなけば 安居あんきょするし。

ひと懶慢らんまんものり、

日高ひたかくして 頭未かしらいまくしけずらず。

工拙こうせつ 性同せいおなじからず、

進退しんたい あとついことなる。

さいわいにして太平たいへいい、

天子てんし 文儒ぶんじゅこのむ。

小才しょうさい おおいにはもちかたく、

典校てんこうして 秘書ひしょり。

三旬さんじゅんに はつかしょうり、

りて頑疏がんそやしなうをたり。

茅屋ぼうおく 四五間しごけん

一馬いちば 二僕夫にぼくふ

俸錢ほうせん 萬六千ばんろくせん、

つききゅうして またあまりあり。

すで衣食いしょくけんなく、

また人事じんじかかわすくなし。

つい少年しょうねんこころをして、

日日常ひびつね晏如あんじょたらしむ。

かれ 知己ちきなしと、

躁靜そうせい おのおのあり。

蘭台らんだい 七八人しちはちにん

いづところ これともにす。

旬時じゅんじも 談笑だんしょうへだつれば、

旦夕たんせき 軒車けんしゃのぞむ。

だれく 讎校しゅうこうかん

おびいて さん。

窗前そうぜんに たけもてあそぶべきり、

門處もんしょに さけるあり。

なんって 君子くんしたん、

數竿すうかん 一壺いっこたいす。


字句解釈

常樂里   長安東南。

校書郎

懶慢者   なまけもの。

殊   ことなる。異と同じ。

典校   証書の間違いをチェックする。

三旬   30日。旬は10日。

頑疏   おろかでうとい。

間   部屋。

牽   とらわれごと。

蘭台   秘書省。

讎校   典校と同じ。誤りを正す。

竹、君子    詩経の衛風に記述あり。「切磋琢磨

詩の鑑賞

白居易32歳、はじめて、校書郎に任官した時の作。初月給もらった時の雰囲気がよくでている。 詩経を踏まえた、竹と君子を持ってきて結句としている。



   

春中與盧四周諒華陽觀同居  唐 白居易
全唐詩四百三十六  白楽天100選


 春中與盧四周諒華陽觀同居
     白居易

性情懶慢好相親,

門巷蕭條稱作鄰。

背燭共憐深夜月,

蹋花同惜少年春。

杏壇住僻雖宜病,

芸閣官微不救貧。

文行如君尚憔悴,

不知霄漢待何人。


 春中しゅんちゅう 盧四周諒ろしちゅうりょう華陽觀かようかん同居どうきょ
    白居易はくきょい

性情せじょう 懶慢らんまんにして 相親あいしたしみ

門巷もんこう 蕭條しょうじょうとして となりすにかな

しょくそむけて ともあわれ深夜しんやつき

はなふんで おなじおし少年しょうねんはる

杏壇きょうだん 住僻じゅうへきにして やまいしといえど

芸閣うんかく 官微かんびにして ひんすくわず

文行ぶんこう きみごとくにして 憔悴しょうすい

らず 霄漢せいかん 何人なんびとをか


字句解釈

性情    性質。

懶慢    なまけもの。

蕭條    さびしいさま。

憐    愛する。

蹋    ふむ、ける。踏むに同じ。

杏壇    道教の寺、華陽觀のこと。

芸閣    秘書省の図書館。書斎。

官微    位が低い。

文行    文雅な行い。

憔悴    やせおとろえる。

霄漢    朝廷のこと。

待何人    朝廷は、君子である我々を憔悴させて、誰を待っているというのか?


詩の鑑賞

白居易34歳、「才職兼茂明於体用科」の受験勉強中の作。2年前には満足していた待遇に不満が生じている。 世の中を見る目が変化してきている。後年の、世のいろいろな矛盾を詩にする兆候が見えている。



 

游雲居寺,贈穆三十六地主   唐 白居易
全唐詩卷四百三十六  白楽天100選


 游雲居寺,贈穆三十六地主
    白居易

亂峰深處雲居路,

共蹋花行獨惜春。

勝地本來無定主,

大都山屬愛山人。


 雲居寺うんきょじあそび、穆三十六地主ぼくさんじゅうろくじぬしおく
      白居易はくきょい

亂峰らんぽう ふかところ 雲居うんきょみち

ともはなんでき ひとはるおしむ。

勝地しょうち 本來ほんらい 定主ていしゅなし、 大都だいと やまやまあいするひとぞくす。


字句解釈

勝地   景勝地。

大都   おおむね。(大都会ではない。)


詩の鑑賞

白居易36歳、「才職兼茂明於体用科」に合格後の作。「山屬愛山人」、顕官、金持ちの占有ではない、 と言いたいのだろうか?もっともだ。





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Last modified    First updated 2016/06/10