第50回講義

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2018.11.22 録音

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杜牧作詩の背景



「杜牧年譜」


「唐代詩人年表」


「唐王朝年表」


「中国の歴史要約」

杜牧年譜1 803年 1歳 ~839年 37歳
杜牧年譜2 840年 38歳 ~852年 50歳

唐代詩人年表1 580年 魏 徴 ~718年 賈 至
唐代詩人年表2 735年 李 頎 ~843年 魚玄機

唐王朝年表1 618年 高 祖 ~779年 代 宗
唐王朝年表2 779年 徳 宗 ~907年 哀 宗

中国の歴史要約1 
中国の歴史要約2 分裂の時代


中国文学地図

地名  長安  洛陽  揚州  南京

川名・湖名  淮河  長江  洞庭湖


春秋列国の形勢

     


人名用語書名」

人名 杜牧 杜佑  白居易 孟浩然  煬帝  李商隠  温庭筠  魚玄機  虞美人

用語  宦官  唐朝官職  南船北馬

書名  史記  楚辞  三国志

     

 

再 掲


淸明    唐 杜 牧

漢詩を楽しむ19頁 漢詩鑑賞辞典551頁


 淸明    杜牧

淸明時節雨紛紛,

路上行人欲斷魂。

借問酒家何處有,

牧童遙指杏花村。

 淸明せいめい  杜牧とぼく

淸明せいめいの 時節じせつ 雨紛紛あめふんぷん

路上ろじょうの 行人こうじん こんたんとほつ

借問しゃもんす 酒家しゅか いずれのところにか

牧童ぼくどう はるかに杏花村きょうかそん


字句解釈

淸明   1年を24に分割した季節(24節気) のひとつ。春分から15日後。新暦4月5日。花冷えの頃。

紛紛   雨や花が乱れ落ちるさま。

行人   旅人

欲斷魂   心が滅入るようだ。

借問   ちょっと教えてよ。

牧童   樵夫、漁夫と同様に、仙人と俗人の中間の存在。

杏花村   白っぽいあんずの花。桃の花(赤っぽい)ではだめ。雨の中に煙っている。


詩の鑑賞

起承転結がよい。転句がすばらしい。絵を見るような一詩。




 

再 掲


泊秦淮    唐 杜 牧

漢詩を楽しむ41頁 漢詩鑑賞辞典549頁 全唐詩卷五百二十三


 泊秦淮    杜牧

煙籠寒水月籠沙,

夜泊秦淮近酒家。

商女不知亡國恨,

隔江猶唱後庭花。

 秦淮しんわいはくす  杜牧とぼく

けむり寒水かんすいめ つきすな

よる秦淮しんわいはくして 酒家しゅかちか

商女しょうじょは しらず 亡國ぼうこくうらみ

こうへだてて うたう 後庭花こうていか


字句解釈

秦淮   南京を取り巻く川の名。王安石

煙   もや。

籠   とじこめる。つつみこむ。籠は鳥かご、は魚を入れるかご。

寒水   ものさびしい水。

月籠沙   白い月光と砂の白が混ざって区別がつかない。

商女   芸者。

後庭花   玉樹後庭花 


詩の鑑賞

起承は2次元水平方向の景色、転結は3次元垂直方向の歴史。




 

再 掲


江南春    唐 杜 牧

漢詩を楽しむ53頁 漢詩鑑賞辞典544頁 全唐詩卷五百二十二


 江南春    杜牧

千里鶯啼綠映紅,

水村山郭酒旗風。

南朝四百八十寺,

多少樓臺煙雨中。

 江南こうなんはる  杜牧とぼく

千里せんり 鶯啼うぐいすないて 綠紅みどりくれないえい

水村すいそん 山郭さんかく 酒旗しゅきかぜ

南朝なんちょう 四百しひゃく 八十寺はっしんじ

多少たしょうの 樓臺ろうだい 煙雨えんううち


字句解釈

江南   長江の武漢より下流の 九江、江蘇省、 蘇州、上海のあたり。 風光明媚で日本と気候がよく似ている。上流の南側は湖南。

鶯   日本の鶯と異なりもっと大きい。朝鮮鶯。

綠映紅   桃、あるいは、杏の花の背景に緑が点々と映ずるぐらいの花盛り???

酒旗   酒屋の旗。

南朝   中国の歴史要約1  南北朝時代<
地名の南京は明の永楽帝が 北京に都を移したことによる。

八十寺   十はシン(真韻)と読んで平字。もともと方言で、使い始めたのは白居易。

多少   ①沢山、②多いか少ないか、③多いか少ないか?(疑問)。日本語では少ないの意。ここは①


詩の鑑賞

起承は2次元水平方向の景色、転結は3次元垂直方向の歴史。のどかな春景色。




 

再 掲

山 行  唐 杜 牧


漢詩鑑賞辞典547頁  全唐詩卷二百七十三


 山 行  杜 牧

遠上寒山石徑斜,

白雲生處有人家。

停車坐愛楓林晩,

霜葉紅於二月花。


 山行さんこう  杜牧とぼく

とお寒山かんざんのぼれば 石徑せっけいななめなり

白雲はくうん しょうずるところ 人家じんか

くるまとどめて そぞろあいす 楓林ふうりんくれ

霜葉そうようは 二月にがつはなよりくれないなり


字句解釈

山行   山歩き。

寒山   寂しい山。

石徑   石ころみち。徑はこみち。

白雲   仙人の縁語。

人家   仙人の住む家。(参考)山居(宋・釋志芝)

坐愛   そぞろに愛す。なんとなく、わけもなく。

楓林   楓樹。江南に多い。日本のカエデとは別種。

霜葉   霜にあって紅葉した葉っぱ。

紅於   於(より)もくれない。転じて、「こうお」は紅葉(もみじ)のことをいう。

二月花   旧暦の3月の花、桃の花。


詩の鑑賞

軽妙洒脱。晩唐の洗練された、静かな、平安な、絵に書いたような一詩。




 

題烏江亭  唐 杜 牧

漢詩を楽しむ40頁 漢詩鑑賞辞典538頁 全唐詩卷五百二十三


 題烏江亭  杜 牧

勝敗兵家事不期,

包羞忍恥是男兒。

江東子弟多才俊,

捲土重來未可知。


 烏江亭うこうていだいす  杜牧とぼく

勝敗しょうはいは 兵家へいかも ことせず

はじるるみ はじしのぶは これ男兒だんじ

江東こうとうの 子弟して おお才俊さいしゅん

捲土けんど 重來ちょうらい いまからず


字句解釈

題烏江亭   「烏江亭」とも題す。烏江の渡し場の宿場役人。 烏江に項羽の墓がある。
垓下の戦い  項羽  虞美人  劉邦 咸陽 阿房宮 鴻門の会 函谷関 范増 韓信 張良 蕭 何 木曽義仲 巴御前  史記項羽本記

兵家   兵法家。軍事の専門家

江東   揚子江の東。江南と同意義だが、江南は穏やかな感じで、ここは江東でなくてはならぬ。

才俊   才能ある人。豪俊とも。

捲土重來   土を捲きて重ねて来る。


詩の鑑賞

懐古七言絶句のお手本。単なる懐古ではなく、もしあの時ーーであれば、とひとひねりしている。




 

垓下歌  楚  項 羽

漢詩を楽しむ40頁 漢詩鑑賞辞典23頁 


 垓下歌  項 羽

力抜山兮氣蓋世,

時不利兮騅不逝。

騅不逝兮可奈何,

虞兮虞兮奈若何。


 垓下がいかうた  項 羽こうう

ちから やまき おお

ときに あらず すいかず

すいかざるを 奈何いかんとす

や や なんじ奈何いかんせん


字句解釈

騅不逝   騅は芦毛(白黒)の馬(普通名詞)。ここでは項羽の馬の名。


詩の鑑賞

項羽最後の愛情の籠もった悲壮な歌。




 

和項王歌 楚 虞姫

史記 


 和項王歌  虞姫

漢兵已略地,

四方楚歌聲。

大王意氣盡,

賤妾何樂生


 項王こうおううたす  虞 姫ぐひ

漢兵かんぺい すでりゃく

四方しほうに 楚歌そかこえ

大王だいおう 意氣いき

賤妾せんしょう なんせいたのしまん


字句解釈

賤妾   虞美人。


詩の鑑賞

虞美人の返歌。この後自害し、墓に咲いた花を虞美人草(ひなげし、ポピー)という。




 

烏江亭  宋 王安石

 


 烏江亭  王安石

百戰疲勞壯士哀,

中原一敗勢難迴。

江東子弟今雖在,

肯與君王卷土來。


 烏江亭うこうてい  王安石おうあんせき

百戰ひゃくせんに 疲勞ひろうす 壯士哀そうしあわれなり

中原ちゅうげんに 一敗いっぱいし いきおいかえかた

江東こうとうの 子弟してい いまりといえども

あえ君王くんのうと つちきてたらんや


字句解釈




詩の鑑賞

杜牧のしに比べ詩的に劣る。宋詩の欠点である。




 

吟 詠    久川愛子様 

淸明    唐 杜 牧




 淸明    杜牧

淸明時節雨紛紛,

路上行人欲斷魂。

借問酒家何處有,

牧童遙指杏花村。

 淸明せいめい  杜牧とぼく

淸明せいめいの 時節じせつ 雨紛紛あめふんぷん

路上ろじょうの 行人こうじん こんたんとほつ

借問しゃもんす 酒家しゅか いずれのところにか

牧童ぼくどう はるかに杏花村きょうかそん



 

凱旋    日本 乃木希典




 凱旋    乃木希典

皇師百萬征強虜,

野戰攻城屍作山。

愧我何顏看父老,

凱歌今日幾人還。

 凱旋がいせん  乃木希典のぎまれすけ

皇師こうし 百萬ひゃくまん 強虜きょうりょせい

野戰やさん 攻城こうじょう しかばねやま

われず なんかんばせありて父老ふろうまみえん

凱歌がいか 今日こんじつ 幾人いくにんかえ


字句解釈

皇師   天皇の兵士。

強虜   ロシア。

何顏看父老  項羽の故事を踏まえる。。


詩の鑑賞

乃木希典の心情が吐露されている。




 

赤壁    唐 杜 牧

漢詩を楽しむ35頁 漢詩鑑賞辞典553頁 全唐詩卷五百二十三


 赤壁    杜牧

折戟沈沙鐵未銷,

自將磨洗認前朝。

東風不與周郎便,

銅雀春深鎖二喬。

 赤壁せきへき  杜牧とぼく

折戟せつげき すなしずんで てついましょうせず

おのずから磨洗ませんつて 前朝ぜんちょうみと

東風とうふう 周郎しゅうろうため便べんぜずんば

銅雀どうじゃく 春深はるふこうして 二喬にきょうとざせしならん


字句解釈

赤壁   赤土の岩壁。  赤壁の戦い

 曹操

 司馬懿

 劉備

 諸葛亮

 孫権

 周瑜

折戟   折れた鉾。

未銷   未だすり減っていない。

周郎   周瑜

銅雀   銅雀台。曹操の宮殿。

二喬   小喬(妹)は周瑜の室、大喬(姉)は曹操の兄の室。


詩の鑑賞

「もしーーーならば」と一捻りしている。




 

赤壁    清 趙 翼

百度百科


 赤壁  趙翼

依然形勝扼荊襄,

赤壁山前故壘長。

烏鵲南飛無魏地,

大江東去有周郎。

千秋人物三分國,

一片山河百戰場。

今日經過已陳迹,

月明漁父唱滄浪。

 赤壁せきへき  趙翼ちょうよく

依然いぜんたる 形勝けいしょう 荊襄けいじょうやく

赤壁せきへき山前さんぜん 故壘こるいなが

烏鵲うじゃく みなみんで 魏地ぎち

大江たいこう ひがしつて 周郎しゅうろう

千秋せんしゅう 人物じんぶつ 三分さんぶんくに

一片いっぺんの 山河さんが 百戰ひゃくせんじょう

今日こんにち 經過けいかすれば すで陳迹ちんせき

つき あきらかにして 漁父ぎょほ 滄浪そうろうとな


字句解釈

荊襄   荊州・襄陽。

烏鵲南飛   曹操の古詩に用例有り。

周郎   周瑜

漁父   漁師。

唱滄浪   楚辞に用例有り。漁父


詩の鑑賞

是清代詩人趙翼創作的一首七言律詩。這首詩從歴史與現實的差異,時間與空間的對照來表 現今昔之感,並以冷靜幽遠的筆墨,抒懷“棄官歸郷、淡於名利”的歸隱之志。 全詩用典自然,對仗工整,境界遼闊,感情激蕩。