第51回講義

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2019.01.24 録音

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杜牧作詩の背景



「杜牧年譜」


「唐代詩人年表」


「唐王朝年表」


「中国の歴史要約」

杜牧年譜1 803年 1歳 ~839年 37歳
杜牧年譜2 840年 38歳 ~852年 50歳

唐代詩人年表1 580年 魏 徴 ~718年 賈 至
唐代詩人年表2 735年 李 頎 ~843年 魚玄機

唐王朝年表1 618年 高 祖 ~779年 代 宗
唐王朝年表2 779年 徳 宗 ~907年 哀 宗

中国の歴史要約1 
中国の歴史要約2 分裂の時代


中国文学地図

地名  長安  洛陽  揚州  南京

川名・湖名  淮河  長江  洞庭湖


春秋列国の形勢

     


人名用語書名」

人名 杜牧 杜佑  白居易  李商隠  温庭筠  魚玄機

用語  宦官  唐朝官職  南船北馬

書名  史記  文選(もんぜん)  三国志

     

 

再 掲

題烏江亭  唐 杜 牧

漢詩を楽しむ40頁 漢詩鑑賞辞典538頁 全唐詩卷五百二十三


 題烏江亭  杜 牧

勝敗兵家事不期,

包羞忍恥是男兒。

江東子弟多才俊,

捲土重來未可知。


 烏江亭うこうていだいす  杜牧とぼく

勝敗しょうはいは 兵家へいかも ことせず

はじるるみ はじしのぶは これ男兒だんじ

江東こうとうの 子弟して おお才俊さいしゅん

捲土けんど 重來ちょうらい いまからず


字句解釈

題烏江亭   「烏江亭」とも題す。烏江の渡し場の宿場役人。 烏江に項羽の墓がある。
垓下の戦い  項羽  虞美人  劉邦 咸陽 阿房宮 鴻門の会 函谷関 范増 韓信 張良 蕭 何 木曽義仲 巴御前  史記項羽本記

兵家   兵法家。軍事の専門家

江東   揚子江の東。江南と同意義だが、江南は穏やかな感じで、ここは江東でなくてはならぬ。

才俊   才能ある人。豪俊とも。

捲土重來   土を捲きて重ねて来る。


詩の鑑賞

懐古七言絶句のお手本。単なる懐古ではなく、もしあの時ーーであれば、とひとひねりしている。




 

再 掲



赤壁    唐 杜 牧

漢詩を楽しむ35頁 漢詩鑑賞辞典553頁 全唐詩卷五百二十三


 赤壁    杜牧

折戟沈沙鐵未銷,

自將磨洗認前朝。

東風不與周郎便,

銅雀春深鎖二喬。

 赤壁せきへき  杜牧とぼく

折戟せつげき すなしずんで てついましょうせず

おのずから磨洗ませんつて 前朝ぜんちょうみと

東風とうふう 周郎しゅうろうため便べんぜずんば

銅雀どうじゃく 春深はるふこうして 二喬にきょうとざせしならん


字句解釈

赤壁   赤土の岩壁。

 赤壁の戦い  曹操  司馬懿  劉備  諸葛亮  孫権  周瑜

折戟   折れた鉾。

未銷   未だすり減っていない。

周郎   周瑜

銅雀   銅雀台。曹操の宮殿。

二喬   小喬(妹)は周瑜の室、大喬(姉)は曹操の兄の室。


詩の鑑賞

杜牧の特徴、「もしーーーならば」と一捻りしている。




 

題桃花夫人廟    唐 杜 牧

全唐詩卷五百二十三


 題桃花夫人廟    杜牧

細腰宮裏露桃新,

脈脈無言度幾春。

至竟息亡縁底事,

可憐金谷墜樓人。

 桃花夫人とうかふじんびょうだいす  杜牧とぼく

細腰さいよう 宮裏きゅうり 露桃新ろとうあらたなり

脈脈みゃくみゃく げんなく いくたびかはるわた

至竟しきょう そくほろぶは 底事なにごとにか

あわれむべし 金谷きんこく 墜樓だろうひと


字句解釈

桃花夫人   息夫人息の國の息侯の夫人。
春秋時代の楚の国の息侯の夫人。楚(都は)の文王は息を滅ぼし、彼女を娶り、 堵敖と成王を生んだが、彼女は自国が滅び夫が死んだことから、 文王と口をきかなかったという(『春秋左氏伝』《荘公十四年》)。

桃花夫人廟   霊を祭ったところは湖北省漢陽県の 北の桃花洞のほとりにある。

細腰   細身の美人。蜂の姿。

露桃   覆いのない井戸端の桃。
(参考)王昌齡「春宮曲

脈脈   物を言わない、言えない。じっとみつめる。ながくつずく。
(参考)漢詩を楽しむ75頁「牽牛星

至竟   結局。

金谷墜樓人   金谷園で、石崇の愛妾 緑珠が楼から身を投げた故事あり。


詩の鑑賞

桃花夫人を憐れんでいるのだが、結句で緑株がもっと哀れだと捻っている。




 

春宮曲    唐 王昌齡

唐詩選下58頁 全唐詩卷一百四十三


 春宮曲    王昌齡

昨夜風開露井桃,

未央前殿月輪高。

平陽歌舞新承寵,

簾外春寒賜錦袍。

 春宮しゅんきゅうきょく  王昌齡おうしょうれい

昨夜さくや かぜひらく 露井ろせいもも

未央みおうの 前殿ぜんでん 月輪高げつりんたか

平陽へいようの 歌舞かぶ あらたにちょう

簾外らんがいの 春寒しゅんかんに 錦袍きんぽうたも


字句解釈

露井桃   屋外の井戸端の桃。


詩の鑑賞

王昌齡は宮女詩を得意とする。




 

迢迢牽牛星    漢代古詩 無名氏

漢詩を楽しむ75頁


 迢迢牽牛星    無名氏

迢迢牽牛星,皎皎河漢女。

纖纖擢素手,箚箚弄機杼。

終日不成章,泣涕零如雨。

河漢清且淺,相去複幾許。

盈盈一水間,脈脈不得語。

 迢迢ちょうちょうたる牽牛星けんぎゅうせい  無名氏むめいし

迢迢ちょうちょうたる 牽牛星けんぎゅうせい皎皎こうこうたる 河漢かかんじょ

纖纖せんせんとして 素手そしゅばし、 箚箚さつさつとして 機杼きじょろうす。

終日しゅうじつ しょうさず、 泣涕きゅうてい つることあめごとし。

河漢かかん きよあさく、 相去あいさること 複幾許またいくばくぞ。

盈盈えいえいたる 一水いっすいかん眽眽みゃくみゃくとして かたるをず。


字句解釈

天の川を隔てて遥かな彦星よ、また白く明るい織姫星よ、
か細く白い手をぬきんでて、サツサツとして機を織る、
一日中織っても布が出来上がらない、
織姫の目からは涙が雨のように流れ落ちる

(迢迢は、はるかなさま、皎皎は、白く明るいさま、河漢は天の川、箚箚は機をおるサツサツという音、) 天の川は清くてしかも浅い、互いに隔たる距離はそう遠くはないのに、
水の流れる川を挟んで、見詰め合ったまま語ることもできないのだ
(盈盈は、水が満ちているさま、脈脈は、じっと見つめ合うこと)


詩の鑑賞

眽眽は脈脈と同じ。




 

金谷園  唐 杜 牧


漢詩鑑賞辞典547頁  全唐詩卷二百七十三


 金谷園  杜 牧

繁華事散逐香塵,

流水無情草自春。

日暮東風怨啼鳥,

落花猶似墮樓人。


 金谷園きんこくえん  杜牧とぼく

繁華はんか 事散ことさんじて 香塵こうじん

流水りゅうすい 無情むじょう 草自くさおのずからはるなり

日暮にちぼ 東風とうふう 啼鳥ていちょううら

落花らくか たり 墮樓ついろうひと


字句解釈

繁華   賑わいさかえた。

逐香塵   香木を撒いてその上に舞う。


詩の鑑賞

杜牧が金谷園を訪れた時の詩。結句の「墮樓人」がポイント。




 

吟 詠    室橋幸子様 

江南春    唐 杜 牧

漢詩を楽しむ53頁 漢詩鑑賞辞典544頁 全唐詩卷五百二十二


 江南春    杜牧

千里鶯啼綠映紅,

水村山郭酒旗風。

南朝四百八十寺,

多少樓臺煙雨中。

 江南こうなんはる  杜牧とぼく

千里せんり 鶯啼うぐいすないて 綠紅みどりくれないえい

水村すいそん 山郭さんかく 酒旗しゅきかぜ

南朝なんちょう 四百しひゃく 八十寺はっしんじ

多少たしょうの 樓臺ろうだい 煙雨えんううち



 

息夫人   唐 王 維

王維100選   全唐詩卷一百二十八


 息夫人  王 維
    時歳二十

莫以今時寵,

難忘舊日恩。

看花滿眼涙,

不共楚王言。

 息夫人そくふじん    王 維おうい
         時に歳二十

今時こんじちょうって

舊日きゅうじおんわすかた

はなる 滿眼まんがんなみだ

楚王そおうと ともわず


字句解釈

息夫人  楚は大国で、息国は蔡国の近くにあった。

詩の鑑賞

 王維20歳、寧王、李憲の宴遊の席での作品、この詩に感じ、 寧王はほどなくこの女性を解放した。



 

金谷集作詩    魏晉 潘 岳

捜韵


 金谷集作詩    潘 岳

王生和鼎實,

石子鎮海所。

親友各言邁,

中心悵有違。

保以敍離思,

攜手遊郊畿。

朝發晉京陽,

夕次金谷穀。

回谿縈曲阻,

峻阪路威夷。

綠池泛淡淡,

靑柳何依依。

濫泉龍鱗瀾,

激波連珠揮。

前庭樹沙棠,

後后園植烏。

靈囿繁石橊,

茂林列芳梨。

飲至臨華沼,

遷坐登隆坻。

玄醴染朱顔,

但愬杯行遲。

揚桴撫靈鼓,

簫管清且悲。

春榮誰不慕,

歳寒良獨希。

投分寄石友,

白首同所歸。

 金谷集きんこくしゅうす  潘 岳はんがく

王生おうせいは 鼎實ていせいととの

石子せきしは 海所かいしょしずめんとす

親友しんゆう おのおのくを

中心ちょうしん ちょうとしてたがうあり

たもちてって 離思りしじょ

って 郊畿こうきあそ

あしたつ 晉京陽しんきょうよう

ゆうべやどる 金谷穀きんこくかく

めぐれる谿たには まがれるやまmpおと

けわしはかは みち威夷いいたり

綠池りょくち うかべて淡淡たんたん

靑柳せいりゅう なん依依いいたり

濫泉らんせんは 龍鱗りゅうりんのごとくなみだ

激波げきはは 連珠れんじゅのごとくすす

前庭ぜんていには 沙棠さとう

後后ごこう えん

靈囿れいゆう 石橊せきりゅうしげ

茂林もりん 芳梨ほうりっす

いたって 華沼かしょうのぞ

うつして 隆坻りゅうちのぼ

玄醴げんれいに 朱顔しゅがん

さかずきくことおそきをったう

あげて 靈鼓れいこ

簫管しょうかん きよかな

春榮しゅんえい だれしたわざらん

歳寒さいかん まことひとりまれなり

かちて 石友せきりゅうゆう

白首はくしゅ するところおなじゆうせん


字句解釈

王生  人名。

鼎實  地名?

石子  石崇。

海所  田舎。

離思  別れの思い。

郊畿  近郊。

淡淡  水のゆれうごくさま。

依依  細くなよなよしたさま。

濫泉  あふれる泉。

靈囿  庭。

石橊  ざくろ。

華沼  美しい泉。

隆坻。  小島。

玄醴  黒黍の酒。

桴   ばち。

白首同所歸  史実はこの通りになって同時に殺された。詩讖


詩の鑑賞

潘岳が石崇の金谷園を訪れたときに詠んだ詩。「文選」にあり。
晋代は50年ほどだが故事が多い。
潘岳(246-300)、 石崇(249-300)、 司馬仲達曹操晋武帝、好文木、景帝、賈皇后、賈謐、広城君、司馬倫、 遜秀、緑株、後塵を拝す、--ーーー




 

青塚    唐 杜 牧

全唐詩卷五百二十五


 青塚    杜 牧

青塚前頭隴水流,

燕支山上暮雲秋。

蛾眉一墜窮泉路,

夜夜孤魂月下愁。

 青塚せいちょう  杜 牧とぼく

青塚せいちょう 前頭ぜんとう 隴水流ろうすいなが

燕支えんし 山上さんじょう 暮雲ぼうんあき

蛾眉がび ひとたつ 窮泉きゅうせんみち

夜夜やや 孤魂ここん 月下げっかうれい


字句解釈

青塚   王昭君の墓。 フフホト。

隴水   川の名。

燕支  燕山。

蛾眉  美人。

窮泉路  死出の旅路。

孤魂  一人ぼっちの魄。魂魄。魂は精神のたましいで天にのぼり、 魄は身体のたましいで地に入る。

 

詩の鑑賞

杜牧は都に居て、遠く北方の地を詠っている。




 

王昭君辭    晋  石 崇

文選  玉臺新詠



王明君者,本為王昭君,以觸文帝諱,故改。 匈奴盛請婚於漢,元帝詔以後宮良家女子明君配焉。 昔公主嫁烏孫,令琵琶馬上作樂,以慰其道路之思, 其送明君亦必爾也。其新造之曲,多哀聲, 故敍之於紙云爾。


 王昭君辭  石 崇

我本漢家子  將適單于庭

辭决未及終  前驅已抗旌

僕御涕流離  轅馬為悲嗚

哀鬱傷五内  泣涙霑珠纓

行行日已遠  乃造匈奴城

延我於穹廬  加我閼氏名

殊類非所安  雖貴非所榮

父子見凌辱  對之慙且驚

殺身良未易  默默以苟生

苟生亦何聊  積思常憤盈

願假飛鴻翼  棄之以遐征

飛鴻不我顧  佇立以屏營

昔為匣中玉  今為糞上英

朝華不足歡  甘為秋草并

傳語後世人  遠嫁難為情

じょ
王明君者おうめいくんは 王昭君もとおうしょうくんたり。  文帝ぶんていいみなるるをって ゆえあらたむ。 匈奴きょうど さかんに こんう。  元帝げんてい みことのりして 後宮こうきゅう良家女子りょうけしじょ明君めいくんってはいす。 むか公主こうしゅ 烏孫うそんす。  琵琶びわをして 馬上ばじょうに さしめ。 って道路おもいを なぐさましむ。  名君めいくんるも かなら爾也しかならん新造しんぞうきょく 哀聲あいせい おおからん。  ゆえこれを かみべて 



 王昭君おうしょうくん  石崇せきすう

我本われもと 漢家かんけの   まさ單于ぜんうていかんとす

辭决じけつ いまおわるにばず  前驅ぜんく すではた

僕御ぼくぎょ なみだ流離りゅうりたり  轅馬えんば ため悲嗚ひめい

哀鬱あいうつして 五内ごだいいたみ  泣涙きゅうるいして 珠纓しゅえいうるお

行行ゆくゆく 日已ひすでとおく  すなわ匈奴きょうどしろいた

われ穹廬きゅうろき  われ閼氏えんしくわ

殊類しゅるいは やすんずるところあらず  とうとしといえどむ えいずる非所ところあら

父子ふし 凌辱りょうじょく  れにたいして おどろ

ころして いまやすからず  默默もくもくとして ってかりそめに

かろそめにいきるも なんたのしまん  積思せきし つね憤盈ふんえい

ねがわくば 飛鴻ひこうよくり  これて ってかりかん

飛鴻ひこう われかえりみず  佇立ちょりつして ってえいざす

むか匣中りちゅうぎょくり  いま糞上ふんじょうえい

朝華ちょうか よろこぶにらず  あまくして秋草しゅうそうあわせらる

つたう 後世こうせいひと  とおして じょうかた


字句解釈

單于   匈奴の王。

珠纓   匂い袋のひも。

穹廬   パオのこと。

閼氏   匈奴の皇后。


詩の鑑賞

王昭君を詠った詩は多く、唐以前に40詩に余るが、本詩がそのはじめである。