第52回講義

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2019.02.28 録音

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杜牧作詩の背景



「杜牧年譜」


「唐代詩人年表」


「唐王朝年表」


「中国の歴史要約」

杜牧年譜1 803年 1歳 ~839年 37歳
杜牧年譜2 840年 38歳 ~852年 50歳

唐代詩人年表1 580年 魏 徴 ~718年 賈 至
唐代詩人年表2 735年 李 頎 ~843年 魚玄機

唐王朝年表1 618年 高 祖 ~779年 代 宗
唐王朝年表2 779年 徳 宗 ~907年 哀 宗

中国の歴史要約1 
中国の歴史要約2 分裂の時代


中国文学地図

地名  長安  洛陽  揚州  南京  郢(エイ)

川名・湖名  淮河  長江  洞庭湖


春秋列国の形勢

     


人名用語書名」

人名 杜牧  項羽  曹操  司馬懿  劉備  諸葛亮  孫権  周瑜

 息夫人  石崇  藩岳  孫秀  緑珠  潘岳  王昭君  司馬炎(西晋の初代皇帝。諡号は武帝)  王羲之

用語  典故(てんこ)  青塚  金谷園  好文木  八王乱  拝後塵

書名  史記  文選(もんぜん)  三国志

参考名詩  淸明  題烏江亭  赤壁  題桃花夫人廟  金谷園  王昭君(杜牧)  青塚  金谷集作詩(潘岳)

     

 

弘道館賞梅花  日本 徳川斉昭

漢詩を楽しむ125頁


 弘道館賞梅花  徳川斉昭

弘道館中千樹梅,

清香馥郁十分開。

好文豈是無威武,

雪裏占春天下魁。


 弘道館こうどうかん梅花ばいかしょうす  徳川斉昭とくがわなりあき

弘道館中こうぶんかんちゅう 千樹せんじゅうめ

清香せいこう 馥郁ふくいく 十分じゅうぶんひら
好文こうぶん 豈是あにこれ 威武無いぶなからんや

雪裏せつり はるむ 天下てんかかい


字句解釈

弘道館

徳川斉昭

好文   好文木。梅のこと。


詩の鑑賞

好文木、梅を詠った作品。晋代の用語が今に伝わる例。




 

再 掲



金谷集作詩    魏晉 潘 岳

捜韵


 金谷集作詩    潘 岳

王生和鼎實,

石子鎮海所。

親友各言邁,

中心悵有違。

保以敍離思,

攜手遊郊畿。

朝發晉京陽,

夕次金谷穀。

回谿縈曲阻,

峻阪路威夷。

綠池泛淡淡,

靑柳何依依。

濫泉龍鱗瀾,

激波連珠揮。

前庭樹沙棠,

後后園植烏。

靈囿繁石橊,

茂林列芳梨。

飲至臨華沼,

遷坐登隆坻。

玄醴染朱顔,

但愬杯行遲。

揚桴撫靈鼓,

簫管清且悲。

春榮誰不慕,

歳寒良獨希。

投分寄石友,

白首同所歸

 金谷集きんこくしゅうす  潘 岳はんがく

王生おうせいは 鼎實ていせいととの

石子せきしは 海所かいしょしずめんとす

親友しんゆう おのおのくを

中心ちょうしん ちょうとしてたがうあり

たもちてって 離思りしじょ

って 郊畿こうきあそ

あしたつ 晉京陽しんきょうよう

ゆうべやどる 金谷穀きんこくかく

めぐれる谿たには まがれるやまmpおと

けわしはかは みち威夷いいたり

綠池りょくち うかべて淡淡たんたん

靑柳せいりゅう なん依依いいたり

濫泉らんせんは 龍鱗りゅうりんのごとくなみだ

激波げきはは 連珠れんじゅのごとくすす

前庭ぜんていには 沙棠さとう

後后ごこう えん

靈囿れいゆう 石橊せきりゅうしげ

茂林もりん 芳梨ほうりっす

いたって 華沼かしょうのぞ

うつして 隆坻りゅうちのぼ

玄醴げんれいに 朱顔しゅがん

さかずきくことおそきをったう

あげて 靈鼓れいこ

簫管しょうかん きよかな

春榮しゅんえい だれしたわざらん

歳寒さいかん まことひとりまれなり

かちて 石友せきりゅうゆう

白首はくしゅ するところおなじゆうせん


字句解釈

王生  人名。

鼎實  地名?

石子  石崇。

海所  田舎。

離思  別れの思い。

郊畿  近郊。

淡淡  水のゆれうごくさま。

依依  細くなよなよしたさま。

濫泉  あふれる泉。

靈囿  庭。

石橊  ざくろ。

華沼  美しい泉。

隆坻。  小島。

玄醴  黒黍の酒。

桴   ばち。

白首同所歸  史実はこの通りになって同時に殺された。詩讖


詩の鑑賞

潘岳が石崇の金谷園を訪れたときに詠んだ詩。「文選」にあり。
晋代は50年ほどだが故事が多い。
潘岳(246-300)、 石崇(249-300)、 司馬仲達曹操晋武帝、好文木、景帝、賈皇后、賈謐、広城君、司馬倫、 遜秀、緑株、後塵を拝す、--ーーー この詩は詩籤(予言詩)のはじまりでもある。




 

白頭吟    唐 劉希夷

漢詩鑑賞辞典87頁 全唐詩卷 卷二十


 白頭吟    劉希夷

已見松柏摧為薪,

更聞桑田變成海。

古人無複洛城東,

今人還對落花風。

年年歳歳花相似

歳歳年年人不同

 白頭はくとうぎん  劉希夷りゅうきい

すでる 松柏しょうはく くだかれてたきぎるを

古人こじん し 洛城らくじょうひがし

今人こんじん たいす 落花らっかかぜ

年年ねんねん 歳歳さいさい 花相はなあ

歳歳さいさい 年年ねんねん 人同ひとおなじからず


字句解釈


詩の鑑賞

詩籤の一例。劉希夷(則天武后時代の進士)はこの詩を詠じた翌年, 宋之問(そうしもん)により、殺害された。
対句が見事である。
もと、「今年花落顏色改 今年 花落ちて顔色改まり  明年花開復誰在 明年 花開いて復(ま)た誰か在る。」と出来たのを推敲してこの詩を得た。




 

吟 詠    長岡巨知様 

磧中作    唐 岑 參

唐詩選下104頁 漢詩鑑賞辞典350頁 全唐詩卷二百零一


 磧中作    岑參

走馬西來欲到天,

辭家見月兩回圓。

今夜不知何處宿,

平沙萬里絶人煙。

 磧中せきちゅうさく  岑參しんじん

うまはしらせ 西にしたり てんいたらんとっす

いえし つきる 兩回りょうかいまどかなるを

今夜こんや らず いずれのところにか宿やどるを

平沙へいさ 萬里ばんり 人煙じんえんっす



 

題木蘭廟    唐 杜 牧

全唐詩卷五百二十三


 題木蘭廟    杜牧

彎弓征戰作男兒,

夢裏曾經與畫眉。

幾度思歸還把酒,

拂雲堆上祝明妃。

 木蘭廟もくらんびょうだいす  杜牧とぼく

彎弓わんきゅう 征戰せいせん 男兒だんじ

夢裏むり 曾經そけい いくたびかはるわた

幾度いくたびか かえるをおもうも さけ

くもはらう 堆上たいじょうに 明妃めいきしゅくすなるべし


字句解釈

木蘭廟   木蘭は孝女の名。北魏のひと。廟は湖北省にある。

木蘭伝説の現在

彎弓   曲った弓。

曾經   「曾」一字でもかって、「曾經」も、かって。

明妃   王昭君

詩の鑑賞

この詩はほとんど想像である。典故に想像を回らしている。---であろう。




 

木蘭詩    魏 無名氏




 木蘭詩    無名氏

喞喞復喞喞 木蘭當戸織

不聞機杼聲 唯聞女歎息

問女何所思 問女何所憶

女亦無所思 女亦無所憶

昨夜見軍帖 可汗大點兵

軍書十二巻 卷卷有爺名

阿爺無大兒 木蘭無長兄

願爲市鞍馬 従此替爺征

東市買駿馬 西市買鞍鞴

南市買轡頭 北市買長鞭

旦辭爺嬢去 暮宿黄河邊

不聞爺嬢喚聲

 但聞黄河流水鳴濺濺

旦辭黄河去 暮至黒山頭

不聞爺嬢喚女聲

 但聞燕山胡騎聲啾啾

萬里赴戎機 關山度若飛

朔氣傳金柝 寒光照鐵衣

將軍百戰死 壯士十年歸

歸來見天子 天子坐明堂

策勲十二轉 賞賜百千強

可汗問所欲

 木蘭不用尚書郎

願馳千里足< 送兒還故郷

爺嬢聞女來 出郭相扶將

阿姉聞妹來 當戸理紅妝

小弟聞姉來

 磨刀霍霍向豬羊

開我東閣門 坐我西閣牀

脱我戰時袍 著我舊時裳

當窗理雲鬢 對鏡帖花黄

出門看火伴 火伴皆驚惶

同行十二年

 不知木蘭是女郎

雄兎脚撲朔 雌兎眼迷離

双兎傍地走

 安能辯我是雄雌

 木蘭の詩   読み人知らず

シャー、バタン、コトン、しばらくしてまた、

シャー、バタン、コトン、

木蘭(ムーラン)は戸口に向かって機(はた)を織る。

だが機の音は途絶えがち、

しきりに娘のため息ばかりが聞こえる。

娘は何を思い、何を考えているのか。

何も思えず、何も考えられない。

昨夜召集令状が届き、

可汗(カーン:皇帝)は徴兵するというけれど、

令状十二巻、どれにも父の名前。

父に成年の息子なく、木蘭に長兄なし。

そこで市場に行き馬と鞍を買い、父に代わり出征する。

東の市にて駿馬を買い、西の市にて鞍を買う。

南の市にて轡を買い、北の市にて鞭を買う。

朝(あした)に父母の元を去り、

日暮れて黄河のほとりに野宿する。

もはや父母の呼ぶ声は聞こえず、

ただ黄河の流れの音だけが耳を打つ。

夜明けに黄河を離れ、夕べに黒山に着く。

父母の呼ぶ声は聞こえず、

ただ燕山に胡人の騎乗する馬の

いななきだけがこだまする。

万里を馳せて戦いに赴き、

難所も山も飛ぶように突き進む。

北の冷気が夜警の拍子木の音を伝え、

冷たい光は鉄衣を照らす。

将軍は幾百もの戦いを戦って死んだが、

壮士(ムーラン)は十年ののち帰国した。

帰国して天子に謁見する、天子は明堂に座し。

ムーランに十二階級の特進と、

数え切れないほどの恩賞を賜る。

カーンが望みを聞くと、ムーランは尚書郎を固辞し、

よく千里を走る速い馬を駆り、

故郷に送って欲しいと願い出る。

父母は娘が帰ると聞き、

手をたずさえ城門に出て娘を迎える。

姉は妹が帰ると聞き、窓に向かって化粧をする。

弟は姉が帰ると聞き、

包丁を研いで豚、羊を屠しにかかった。

ムーランは家に着くと、

東の入口より家に入り、西の部屋の寝台に座した。

戦衣を脱ぎ、昔の衣装を着る。

窓の側で髪をととのえ、鏡に向かい白粉を付ける。

門より出で戦友の前に進むと、

戦友はみな驚いてムーランを見つめるばかり。

十二年も同行していながら、

ムーランが女性とはつゆ知らなかった。

雄兎の脚はとびはね、

雌兎の目はどろんとしているというのだろうか;

二匹の兎が並んで走っていたら、

どちらが雄か雌か見分けられるはずもない !


字句解釈


詩の鑑賞

北魏(400年)ころの作。多くの人の合作であろう。
この詩の結句から、「撲朔迷離」は男女の区別のつかないことを言う。




 

蘭 溪    唐 杜 牧

全唐詩 卷五百二十二


 蘭溪    杜牧

蘭溪春盡碧泱泱,

映水蘭花雨發香。

楚國大夫憔悴日,

應尋此路去瀟湘。

 蘭溪らんけい  杜牧とぼく

蘭溪らんけい 春盡はるつきて 碧泱泱へきおうおうみずえいずる 蘭花らんか 雨香あめこうっす。

楚國そこくの 大夫だいふ 憔悴しょうすいまさみちたずねて 瀟湘しょうしょうりぬべし。


字句解釈


詩の鑑賞

楚國大夫は屈原
のこと。この詩は屈原を知らないと分からない。次回のお楽しみ。