第56回講義

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2019.06.27 録音

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杜牧作詩の背景



「杜牧年譜」


「唐代詩人年表」


「唐王朝年表」


「中国の歴史要約」

杜牧年譜1 803年 1歳 ~839年 37歳
杜牧年譜2 840年 38歳 ~852年 50歳

唐代詩人年表1 580年 魏 徴 ~718年 賈 至
唐代詩人年表2 735年 李 頎 ~843年 魚玄機

唐王朝年表1 618年 高 祖 ~779年 代 宗
唐王朝年表2 779年 徳 宗 ~907年 哀 宗

中国の歴史要約1 
中国の歴史要約2 分裂の時代


中国文学地図

地名  揚州(地図)  揚州(解説)  南昌(宣州)  貴池  南京  江 州(九 江)  洛陽  長安

川名・湖名  淮河  鄱陽湖  長江  洞庭湖  湘江  黄河


春秋列国の形勢

周(洛陽)            楚(郢)      


人名用語書名」

人名 杜牧 杜佑 沈傳師  牛僧儒  李徳裕  煬帝  隋 文帝  王羲之

用語  科挙  牛李の党争  節度使  刺史

書名

参考名詩

     

 

贈別二首    唐 杜牧

全唐詩 卷五百二十三


 贈別二首    杜牧

 其一

娉娉嫋嫋十三餘,

豆蒄梢頭二月初。

春風十裏揚州路,

卷上珠簾總不如。

 其二

多情卻似總無情,

唯覺尊前笑不成。

蝋燭有心還惜別,

替人垂涙到天明。

 贈別二首ぞうべつにしゅ  杜牧とぼく

 其一そのいち

娉娉へいへい 嫋嫋じょうじょう 十三餘じゅうさんよ

豆蒄とうこう 梢頭しょうとう 二月にがつはじ

春風しゅんぷう 十裏じゅうり 揚州ようしゅうみち

珠簾しゅれんぐるも すべしか

 其二そのに

多情たじょうは かえってたり すべ無情むじょうなるに

おぼゆ 尊前そんぜん わらいのらざるを

蝋燭ろうそく 心有こころありて わかれをおし

ひとわって なみだれて 天明てんめいいた


字句解釈

贈別   普通、別れて行く人が残すものを留別というが、ここではその意で用いている。 娉娉   みめよいさま。

嫋嫋   しなやかなさも。

豆蒄   マメ科の植物。

梢頭   えだのさき。

有心   蝋燭の芯と擬人化した心をかける。


詩の鑑賞

835年、杜牧33歳、長安に召喚され、監察御使に任ぜられ東都(洛陽)に移る。 揚州との別れの詩。杜牧の代表的詩。「多情卻似總無情」いろいろな解釈がある。

以下揚州追記
范蠡(はんれい)
春秋列国の形勢
陶朱猗頓富
(とうしゅいとんのとみ)
   呉王夫差  越王勾践  会稽恥  西施
狡兎死良狗烹、高鳥尽良弓蔵。
(こうとししてりょうくにられ、こうちょうつきてりょうきゅうかくる。)
淮水  邗溝(かんこう)  五湖(太湖)    宋(陶丘)



 

發長崎   日本 広瀬淡窓

漢詩をたのしむ124頁


 發長崎   広瀬淡窓

旗亭風笛送離愁

佳境唯疑夢裏遊

靉靆橋頭二分月

瓊江也是小揚州


 長崎ながさきはつす  広瀬ひろせ淡窓たんそう

旗亭きてい風笛ふうてき 離愁りしゅうおく

佳境かきょう 唯疑ただうたが夢裏むりあそぶかと

靉靆あいたい 橋頭きょうとう 二分にぶんつき

瓊江けいこう 也是またこれ 小揚州しょうようしゅう


字句解釈

広瀬淡窓
靉靆橋  めがね橋。

瓊江  長崎。美しい川。


詩の鑑賞

長崎の繁華を揚州になぞらえている。

以下揚州追記
揚州鶴(ようしゅうのつる)
鑑真和上



 

吟 詠    細江利昭様



江南春    唐 杜 牧

漢詩を楽しむ53頁 漢詩鑑賞辞典544頁 全唐詩卷五百二十二


 江南春    杜牧

千里鶯啼綠映紅,

水村山郭酒旗風。

南朝四百八十寺,

多少樓臺煙雨中。

 江南こうなんはる  杜牧とぼく

千里せんり 鶯啼うぐいすないて 綠紅みどりくれないえい

水村すいそん 山郭さんかく 酒旗しゅきかぜ

南朝なんちょう 四百しひゃく 八十寺はっしんじ

多少たしょうの 樓臺ろうだい 煙雨えんううち


字句解釈

江南   長江の武漢より下流の 九江、江蘇省、 蘇州、上海のあたり。 風光明媚で日本と気候がよく似ている。上流の南側は湖南。

鶯   日本の鶯と異なりもっと大きい。朝鮮鶯。

綠映紅   桃、あるいは、杏の花の背景に緑が点々と映ずるぐらいの花盛り???

酒旗   酒屋の旗。

南朝   中国の歴史要約1  南北朝時代<
地名の南京は明の永楽帝が 北京に都を移したことによる。

八十寺   十はシン(真韻)と読んで平字。もともと方言で、使い始めたのは白居易。

多少   ①沢山、②多いか少ないか、③多いか少ないか?(疑問)。日本語では少ないの意。ここは①


詩の鑑賞

起承は2次元水平方向の景色、転結は3次元垂直方向の歴史。のどかな春景色。




 

張好好詩   唐 杜 牧

全唐詩卷五百二十


 張好好詩   杜牧

牧大和三年,佐故吏部沈公江西幕,

好好年十三,始以善歌來樂籍中。

後一歳,公移鎮宣城,
復置好好於宣城籍中。

後二歳,為沈著作以雙鬟納之。

後二歳,於洛陽東城重睹好好,

感舊傷懷,故題詩贈之。


君為豫章姝,十三才有餘。

翠茁鳳生尾,丹葉蓮含跗。

高閣倚天半,章江聯碧虚。

此地試君唱,特使華筵鋪。

主人顧四座,始訝來踟躕。

呉娃起引贊,低徊映長裾。

雙鬟可高下,才過青羅襦。

盼盼乍垂袖,一聲雛鳳呼。

繁弦迸關紐,塞管裂圓蘆。

衆音不能逐,嫋嫋穿雲衢。

主人再三歎,謂言天下殊。

贈之天馬錦,副以水犀梳。

龍沙看秋浪,明月游朱湖。

自此毎相見,三日已為疏。

玉質隨月滿,豔態逐春舒。

絳唇漸輕巧,雲歩轉虚徐。

旌旆忽東下,笙歌隨舳艫。

霜凋謝樓樹,沙暖句溪蒲。

身外任塵土,樽前極歡娯。

飄然集仙客,諷賦欺相如。

聘之碧瑤佩,載以紫雲車。

洞閉水聲遠,月高蟾影孤。

爾來未幾歳,散盡高陽徒。

洛城重相見,婥婥為當壚。

怪我苦何事,少年垂白須。

朋遊今在否,落拓更能無。

門館慟哭後,水雲秋景初。

斜日掛衰柳,涼風生座隅。

灑盡滿襟涙,短歌聊一書。


 張好好ちょうこうこう  杜牧とぼく


ぼく 大和三年だいわさんねん故吏部沈公こりぶちんこうこう江西幕こうせいのばくたすけ、

好好こうこう 年十三としじゅうさんはじめうたうたもって樂籍中がくせきちゅうたる。

後一歳のちいっさい公移こううつ宣城せんじょうちんし、
好好こうこう宣城籍中せんじょうのせきちゅう

後二歳のちにさい沈著作ちんちょさく雙鬟そうがんこれおさ

後二歳のちにさい洛陽東城らくようとうじょうおいかさねて好好こうこう

きゅうかんじて傷懷しょうかいし、ゆえだいしてこれおくる。


きみ豫章よしょうしゅり、 十三じゅうさん わずかにあまりり。

みどりばえ ほうしょうじ、 丹葉たんようは はすうてなふくむ。

高閣こうかくは 天半てんぱんり、 章江しょうこうは 碧虚へききょつらなる。

に きみうたうをこころみ、 とく華筵かえんかしむ。

主公しゅこうは 四座しざかえりみ、 はじめてむかうるに るに踟躕ちちゅうす。

呉娃ごあいは ちて引贊いんさんし、 低徊ていかいするに 長裾ちょうきょえいず。

雙鬟そうかんは 高下こうげすべく、 わずかに青羅せいらじゅぐ。

盼盼へんぺんとして たちましゅうれ、 一聲いっせい 雛鳳すうほうぶ。

    繁弦關紐の迸り、塞管圓蘆を裂く。

    衆音逐ふこと能はず、嫋嫋として雲衢を穿つ。

    主公は再三嘆じ、謂ひて言はく「天下の殊なり」と。

    之に贈る天馬の錦、副ふるに以てす水犀の梳。

    龍沙に秋浪を看て、明月に東湖に遊ぶ。

    此れ自り毎に相ひ見ゆれば、三日を已に疏と爲す。

    玉質月に隨ひて滿ち、艷態春を逐ひて舒ぶ。

    絳唇漸く輕巧にして、雲歩轉た虚徐なり。

    旌旆忽ち東下し、笙歌舳艫に隨ふ。

    霜は凋ます謝樓の樹、沙は暖かなり句溪の蒲。

    身外塵土に任せ、樽前歡娯を極む。

    飄然たり集仙の客、諷賦は相如を欺く。

    之を聘するに碧瑤の佩、載するに以て紫雲の車。

    洞は閉して水聲遠く、月は高くして蟾影孤なり。

    爾來未だ幾歳ならずして、散じ盡くす高陽の徒。

洛城らくじょうに かさねてまみゆれば、 婥婥しゃくしゃくとして 當壚とうろす。

あやしむ われ何事なにごとくるしみ、 少年しょうねんにして 白鬚はくしゅるるやと。

朋遊ほうゆうは 今在いまありやいなや、 落拓らくたくして さらくするやいなや。

門館もんかんに 慟哭どうこくのち水雲すいうんの 秋景しゅうけいはじめ。

斜日しゃじつは 衰柳すいりゅうかかり、 涼風りょうふうは 座隅ざぐうしょうず。

そそつくす 滿襟まんきんなみだ短歌たんかいささ一書いっしょす。


字句解釈

雙鬟  そうかん。少女の2つ輪の髪型。

納之  側室にする。

豫章姝  豫章は南昌のこと。姝は美女。

翠茁  すいさつ。緑の芽がもえいでる。

丹葉蓮  赤い葉っぱ(若葉)のはす。

踟躕   ちちゅう。ためらう。

婥婥   婥はうつくしい、みめよい。

當壚   酒の接待。司馬相如・文君の故事あり。
(参考)春思(賈至)

跗   がく、うてな。

落拓   おちぶれること。

 

詩の鑑賞

太和九年、杜牧33歳、曾て26歳の時沈伝師のもとで会った美女張好好に再会した時の詩。


 

題宣州開元寺    唐 杜 牧

全唐詩 卷五百二十二


 題宣州開元寺    杜 牧

南朝謝脁城,東呉最深處。

亡國去如鴻,遺寺藏煙塢。

樓飛九十尺,廊環四百柱。

高高下下中,風繞松桂樹。

青苔照朱閣,白鳥兩相語。

溪聲入僧夢,月色暉粉堵。

閱景無旦夕,憑闌有今古。

留我酒一樽,前山看春雨。

 宣州開元寺せんしゅうかいげんじだいす  杜牧とぼく

南朝なんちょう 謝脁しゃちょうしろ東呉とうご っともふかきに

亡國ぼうこく ることこうごとく、 遺寺いじ 煙塢えんおかくる。

樓飛ろうたかきこと 九十尺きゅうじゅっしゃくろうめぐること 四百柱よんひゃくちゅう

高高こうこう 下下げげうちかぜめぐる 松桂こうけいじゅ

青苔せいたいに 朱閣照しゅかくてり、 白鳥はくちょうは ふたつながらかたる。

溪聲けいせいは 僧夢そうむり、 月色げっしょくは 粉堵ふんとかがやく。

けいること 旦夕たんせきし、 らんけば 今古ここんり。

われとどむるは 酒一樽さけいっそん前山ぜんざんに 春雨しゅんうる。


字句解釈

宣州   宣城。南京と杭州の中間にある。

開元寺   、開元寺

謝脁

最深處   處は、上声韻。おる、いる、ある。この詩の押韻は仄上声である。

(参考)******************** >                                                                  
平庚上語平東上麌入陌上麌平東上麌
去御去送上麌 去遇
 
入薬上語去送上麌入陌上麌平元上麌
去御平東
************************

煙塢   塢は土手、郭。もやのかかった土手。

九十尺   1尺=27.8cm。  90尺=25m。

粉堵   堵は垣根、粉は化粧をした。白壁のこと。

無旦夕   朝夕なく、一日中。


詩の鑑賞

杜牧が宣州の長官となり、開元寺を訪ねたときの詩。。



 

郡内高齋閒望答呂法曹詩  南北朝 謝朓

全唐詩 卷五百二十二


 郡内高齋閒望答呂法曹詩
            謝朓

結構何迢遰,曠望極高深。

窗中列遠岫,庭際俯喬林。

日出衆鳥散,山暝孤猿吟。

已有池上酌,復此風中琴。

非君美無度,孰為勞寸心。

惠而能好我,問以瑤華音。

若遺金門歩,見就玉山岑
 郡内ぐんない高齋こうさい閒望かんぼうし、呂法曹ろほうそうこたう。
                   謝朓しゃちょう

結構けっこうは なん迢遰ちょうていたり、 曠望こうぼうは 高深こうしんきわ

窗中そうちゅうには 遠岫えんしゅうつらなり、 庭際ていさいには 喬林こうりんす。

日出ひいでて 衆鳥しゅうちょうさんじ、 山暝やまくらくして 孤猿こえんぎんず。

すで池上ちじょうしゃくり、 の 風中ふうちゅうきんあり。

きみなきにあらずんば、 だれために 寸心すんしんろうせん。

いつくしみて よくわれよみし、 おくるに瑤華ようかおんってす。

金門きんもんすつることあらば、 玉山ぎょくざんみねかれよ。


字句解釈

無度   なみはずれた。


詩の鑑賞

宣城郡太守の官舎の高齋に、心安らかに坐して、その景色と心境をのべた。
斉王の法曹なる呂僧珍に答えた作。



 

題宣州開元寺水閣閣下宛溪夾溪居人 唐 杜牧

全唐詩 卷五百二十二


 題宣州開元寺水閣
   閣下宛溪夾溪居人
           杜牧

六朝文物草連空,

天淡雲閑今古同。

鳥去鳥來山色裏,

人歌人哭水聲中。

深秋簾幕千家雨,

落日樓臺一笛風。

惆悵無因見範蠡,

參差煙樹五湖東。
 宣州開元寺水閣せんしゅうかいげんじすいかくだいす 
   閣下かくか宛溪えんけい けいはさみてひとらしむ
                    杜牧とぼく

六朝ろくちょうの 文物ぶんぶつ くさくうつらなり、

天淡てんあわく 雲閑くもしずかに 今古きんこおなじ。

鳥去とりさり 鳥來とりきたる 山色さんしょくうち

人歌ひとうたい 人哭ひとこくす 水聲すいせいうち

深秋しんしゅう 簾幕れんばく 千家せんかあめ

落日らくじつの 樓臺ろうだい 一笛いってきかぜ

惆悵ちゅうちょうす 範蠡はんれいるに 因無よしなく、

參差しんしたる 煙樹えんじゅ 五湖ごこひがし


字句解釈


詩の鑑賞