第10回講義

再掲

早発白帝城  唐 李 白

漢詩を楽しむ32頁、漢詩鑑賞辞典189頁、岩波唐詩選下49頁

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2014.11.27 録音

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 早発白帝城  李白

朝辞白帝彩雲間

千里江陵一日還

両岸猿声啼不住

軽舟已過万重山


 つと白帝城はくていじょうはつす  李白りはく

あしたす 白帝はくてい 彩雲さいうんかん

千里せんり江陵こうりょう 一日いちじつにしてかえ

両岸りょうがん猿声えんせい いてまざるに

軽舟けいしゅう すでぐ 万重ばんちょうやま 

 


再掲

秋浦歌  唐 李 白

漢詩を楽しむ16頁 漢詩鑑賞辞典244頁 唐詩選中353頁


 秋浦歌 李 白

白髪三千丈

緣愁似箇長

不知明鏡裏

何處得秋霜


 秋浦しゅうほうた  李 白り はく

白髪はくはつ 三千丈さんぜんじょう

うれいにって かくごとなが

らず 明鏡めいきょううち

いずれのところにか 秋霜しゅうそう




安史の乱と李白


字句解釈

人名
玄宗皇帝  楊 貴妃  高 力士  安 禄山  史 思明  杜 甫  孟 浩然  王 維  張 九齢
 李 林甫  楊 国忠   粛宗  永王 璘 

地名
九江  江陵  荊州  襄陽  洛陽  河東(太原)  廬山  馬嵬  四川省成都

用語
節度使

     
 


再掲

照鏡見白髪 唐 張九齢

漢詩を楽しむ47頁 漢詩鑑賞辞典117頁



 照鏡見白髪 張九齢

宿昔青雲志

嗟跎白髪年

誰知明鏡裏

形影自相憐


 かがみらして 白髪はくはつを見る    張九齢ちょうきゅうれい

宿昔くしゅくせき 青雲せいうんの志

嗟跎さたたり 白髪はくはつとし

たれ知くらん 明鏡めいきょううち

形影けいえい みづか相憐あいあわれまんとは

 


再掲

山中対酌  唐 李 白

漢詩を楽しむ95頁 漢詩鑑賞辞典頁



 山中対酌  李 白

両人対酌山花開

一杯一杯復一杯

我酔欲眠君且去

明朝有意抱琴来


 山中対酌さんちゅうたいしゃく    李 白りはく

両人りょうにん 対酌たいしゃく 山花開さんかひら

一杯いっぱい 一杯いっぱい 復一杯またいっぱい

我酔われよねむらんとほつす 君何きみしばら

明朝みょうちょう らば こといだいてきた

 




送内尋廬山女道士李騰空二首
   唐 李 白


全唐詩 巻184


 送内尋廬山女道士李騰空二首
  李白

君尋騰空子

応到碧山家

水舂母雲碓

風掃石楠花

若愛幽居好

相邀弄紫霞


 ない廬山ろざん女道士おんなどうし李騰空りとうくうたずぬるにおく
  李白りはく

きみたずぬ 騰空子とうくうし

まさ碧山へきざんいえいたるべし

みずうすずく 母雲うんもうす

かぜく 石楠せきなんはな

幽居ゆうきょよきあいさば

あいむかえて 紫霞しかもてあそばん


字句解釈

内   内室、妻。李白の4番目の室。

廬山    九江の近くの山。

李 騰空   李 林甫の娘、道教の女道士。

水舂   水車でうすをつく。

母雲   うんも。漢方薬であった。

石楠花   しゃくなげ。風藥(風邪薬?)にする。

紫霞    紫は仙人、皇帝の色。

     

詩の鑑賞

李白の室と廬山にいる女道士の李 林甫の娘が仲良しで、尋ねて行った。実際、李白も廬山に籠ることになった。


 




送内尋廬山女道士李騰空二首
   唐 李 白


全唐詩 巻184


 送内尋廬山女道士李騰空二首
  李白

多君相門女

學道愛神仙

素手掬青靄

羅衣曳紫煙

一往屏風疊

乗鸞著玉鞭(一作 不著鞭)


 ない廬山ろざん女道士おんなどうし李騰空りとうくうたずぬるにおく
  李白りはく

とすきみ 相門しょうもんむすめなるに

みちまなびて 神仙しんせんあい

素手そしゅ 青靄せいあいきくして

羅衣らい 紫煙しえん

ひとたびく 屏風疊へいふうじょう

らんのりて 玉鞭ぎょくべんちゃく


字句解釈

多君    君を尊敬する。

相門    総理大臣。

學道    道教の道を学ぶ。

素手    白い手。

掬青靄    青い靄をすくう。

羅衣    うすぎぬ。

屏風疊    屏風のように連なった山。或はそのようなところの固有名詞。

鸞    想像上のめでたい鳥。

玉鞭    玉でできた美しいむち。

     

詩の鑑賞

李 林甫の娘、李騰空に贈った詩。李白も廬山に隠居した。がーーーー。


 


永王東巡歌十一首  唐 李 白

全唐詩 巻一百六十七   

永王璘。明皇子也。天宝十五年。安禄山反。詔璘領
山南、嶺南、黔中、江南、四道節度使。十一月。璘至江陵。
募士数万。遂有窺江左意。十二月。引舟師東巡。

永王璘えいおうりん。 明皇めいこう子也こなり天宝てんぽう十五年じゅうごねん。 安禄山あんろくざんはんす。 りんみことのりす、
山南さんなん嶺南れいなん黔中きんちゅう江南こうなん四道節度使よんどうせつどしりょうすることを。十一月じゅういちがつりん 江陵こうりょういたる。
つのるに 数万すうまんつい江左こうさうかがあり。十二月じゅうにがつ舟師しゅうしひがしじゅんす。


 永王東巡歌十一首  李白

永王正月東出師

天子遥分竜虎旗

樓船一挙風波静

江漢翻爲雁鶩池


 永王えいおう東巡とうじゅんうた  李白りはく

永王えいおう 正月しょうがつ ひがしいだ

天子てんし はるかにわかつ 竜虎りゅうこはた

樓船ろうせん ひとたびあがれば 風波ふうはしずまり

江漢こうかん ひるがえりる 雁鶩がんぼくいけ


字句解釈

明皇    玄宗

永王    永王璘。

竜虎旗    皇帝の旗。

出師    軍隊を出す。

樓船    二階建ての大船。

竜虎旗    皇帝の旗。

江漢    長江(揚子江)と漢水。

雁鶩池    かもとあひるの遊ぶようなおだやかな池。

     

詩の鑑賞

李白が永王に仕えて、その出師を称えた詩。




 永王東巡歌十一首  李白

二帝巡遊倶未廻

五稜松柏使人哀

諸侯不救河南地

更喜賢王遠道來


 永王えいおう東巡とうじゅんうた  李白りはく

二帝にてい 巡遊じゅんゆう ともいまかえらず

五稜ごりょう松柏しょうはく ひとをしてあわれしむ

諸侯しょこう すくわず河南かなん

さらよろこぶ 賢王けんのう 遠道えんどうたるを


字句解釈

二帝    玄宗と肅宗

巡遊    実際は逃亡したのだが、皇帝なので巡遊という。

五稜    長安にある唐王朝代々の墓。玄宗は第六代皇帝。

松柏    松と柏。柏は「びゃくしん」で「かしわ」ではない。用例「漢詩を楽しむ」126頁  藤井啓「芳野懐古」古陵松柏吠天飆。 賢王    永王のこと。

     

詩の鑑賞

これも、李白が永王に仕えて、その出師を称えた詩であるが、意に反して永王は賊軍となってしまい、 李白は獄に囚われることになる。


 


獄中上崔相渙  唐 李 白

全唐詩巻一百七十 李白十


 獄中上崔相渙  李白

胡馬渡洛水

血流征戰場

千門閉秋景

萬姓危朝霜

賢相燮元氣

再欣海縣康

台庭有夔龍

列宿粲成行

羽翼三元聖

發輝兩太陽

應念覆盆下

雪泣拜天光


 獄中ごくちゅう崔相渙さいそうかんたてまつる  李白りはく

胡馬こば 洛水らくすいわた

血流りゅうけつ 戰場せんじょう

千門せんもん 秋景しゅうけい

萬姓ばんせい 朝霜ちょうそうあやう

賢相けんそう 元氣げんきやわら

ふたたよろこぶ 海縣かいけんすこやかなるを

台庭たいていに 夔龍きりゅうあり

列宿れっしゅく 成行せいこうさんたり

羽翼うよく三元聖さんげんせいあり

かかがきはつ兩太陽りょうたいよう

まさおもうべし 覆盆ふくぼんもと

なみだすすいで 天光てんこうはいさんことを


字句解釈

胡馬    安禄山の軍馬。

賢相    崔相渙。(おべんちゃらでもちあげている。)

元気    万物を生み育てる天地の気。天地の法則。

海縣    揚子江の水辺のこのあたり。

台庭    大臣の執務室。

夔龍    舜代の名臣の名前。

列宿    星座。ここでは綺羅星のように連なる立派な高級官吏たちのこと。

成行    物事の成り行きとその結果。

羽翼    鳥の羽。ここでは補佐の人。

三元聖    三人の名臣。誰をさすかは不明。

兩太陽    肅宗と玄宗。

覆盆    伏せた盆。(伏せた盆の下に冤罪で囚われている。「覆水盆に還らず」の覆ではない。)

     

詩の鑑賞

李白の必死の嘆願の詩。この詩の効果もあって李白は死罪を免れた。


 


贈内  唐 李 白

全唐詩巻一百八十四 李白二十四


 贈内  李白

三百六十日

日日酔如泥

雖爲李白婦

何異太常妻


 ないおくる  李白りはく

三百六十日さんびゃくろくじゅうごにち

日日ひび ようどろごと

李白りはくるといえど

なんことならん 太常たじょうつま


字句解釈

太常    宮廷にあって祭祀を祀る役人。後漢の太常が病んだとき妻が見舞ったら罪にした。 太常の妻は割に合わぬ。(後漢書)

     

詩の鑑賞

李白が獄に居たときに妻室に贈った詩。平仄不良。


 


上皇西巡南京歌十首  唐 李 白

全唐詩 巻一百六十七

天宝十五載六月己亥。禄山陥京師。七月庚辰。次蜀郡。八月癸巳。
皇太子即皇帝位於霊武。 十二月丁未。上皇天帝至蜀郡。
大赦。以蜀郡為南京。


天宝てんぽう十五載じゅうごさい六月己亥ろくがつきがい禄山ろくざん京師けいしおとす。七月庚辰しちがつこうしん蜀郡しょくぐんす。八月癸巳はちがつきし
皇太子こうたいし霊武れいぶにおいて皇帝位こうていいく。 十二月丁未じゅうにがつていみ上皇天帝じょうこうてんてい蜀郡しょくぐんいたる。
大赦たいしゃ蜀郡しょくぐんって 南京なんきんす。



 上皇西巡南京歌十首  李白

誰道君王行路難

六龍西幸萬人歓

地転錦江成渭水

天廻玉塁作長安


 上皇じょうこう西巡せいじゅん南京なんけいうた  李白りはく

だれう 君王くんのう 行路難こうろなん

六龍ろくりゅう 西幸せいこう 萬人ばんにんよろこ

地転ちてんじて 錦江きんこう 渭水いすい

天廻てんめぐりて 玉塁ぎょくるい 長安ちょうあん


字句解釈

南京    成都。

皇太子    肅宗。

上皇天帝    玄宗。

誰道    誰が言う、そんなことはない。反語。

六龍    六頭立ての馬。

錦江    成都にある川。錦の川。成都は錦の産地である。

渭水    長安の川。

玉塁    成都の近くの山名。玉塁山。

     

詩の鑑賞

李白が許されて獄を出たのち肅宗と玄宗を詠んだ詩。



 上皇西巡南京歌十首  李白

剣閣重関蜀北門

上皇帰馬若雲屯

少帝長安開紫極

雙懸日月照乾坤


 上皇じょうこう西巡せいじゅん南京なんけいうた  李白りはく

剣閣けんかく 重関じゅうかん 蜀北しょくほくもん

上皇じょうこう 帰馬きば くもたむろするごと

少帝しょうてい 長安ちょうあん 紫極しきょくひら

ならかけて 日月にちげつ 乾坤けんこんらす


字句解釈

剣閣    成都の近くの剣門山にある関所。蜀の桟道の起点。

紫極    宮廷。

乾坤    天地。

     

詩の鑑賞

玄宗皇帝が成都から長安に帰る有様を詠んだ詩。


 


再掲

聞王昌齢左遷竜尉遥有此寄  唐 李 白

唐詩選下 43頁


 聞王昌齢左遷竜標尉
遥有此寄  李白

楊花落尽子規啼

聞道竜標過五渓

我寄愁心与明月

随風直到夜郎西


 王昌齢おうしょうれい竜標りゅうひょう左遷させんせらるるを
はるかにあり  李白りはく

楊花ようか つくして 子規啼しきな

聞道きくならく 竜標りゅうひょう 五渓ごけいぐと

われ 愁心しゅうしんせて 明月めいげつあた

かぜしたがってただちにいたれ 夜郎やろう西にし



 


与史郎中欽聴黄鶴楼上吹笛  唐 李 白

漢詩を楽しむ 87頁  漢詩鑑賞辞典 250頁


 与史郎中欽聴黄鶴楼上吹笛  李白

一為遷客去長沙

西望長安不見家

黄鶴楼中吹玉笛

江城五月落梅花


 史郎中欽しろうちゅうきん黄鶴楼上こうかくろうじょう吹笛すいてきく  李白りはく

ひとたび遷客せんきゃくって 長沙ちょうさ

西にしのかた長安ちょうあんのぞめど いえ

黄鶴楼中こうかくろうちゅう 玉笛ぎょくてき

江城こうじょう 五月ごがつ 落梅花らくばいか


字句解釈

史郎中欽    郎中(官職の名)の史欽。人となり不明、昔、李白と交流のあった人か?

聴吹笛    単に笛の音が聞こえてきたのではなく、送別の宴で笛を吹いてくれたのではなかろうか?

遷客    左遷されて人。

長沙    左遷の地の代表。

落梅花    曲名。

     

詩の鑑賞

左遷された惨めな時期の深みのある絶唱である。




 


流夜郎贈辛判官  唐 李 白

全唐詩 巻一百七十 李白十


 流夜郎贈辛判官  李白

昔在長安醉花柳

五侯七貴同杯酒

氣岸遙淩豪士前

風流肯落他人後

夫子紅顏我少年

章台走馬著金鞭

文章獻納麒麟殿

歌舞淹留玳瑁筵

與君自謂長如此

寧知草動風塵起

函谷忽驚胡馬來

秦宮桃李向明開

我愁遠謫夜郎去

何日金雞放赦回




 


南流夜郎寄内  唐 李 白

全唐詩 巻一百八十四 李白二十四


 南流夜郎寄内  李白

夜郎天外怨離居

明月楼中音信疎

北雁春帰看欲尽

南來不得豫章書




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Last modified 2014/ First updated 2014/10/29