第24回講義

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2016.04.28 録音

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白居易 作詩の背景




「白楽天年譜」

白楽天年譜1 772年 1歳 ~800年 29歳


中国文学地図

地名  洛陽  長安


春秋列国の形勢

     


「人名・用語・書名」

人名  顧況
書名  全唐詩

     

 

再掲



賦得古原草送別  唐 白居易
全唐詩卷四百三十六


 賦得古原草送別  白居易

離離原上草,

一歳一枯榮。

野火燒不盡,

春風吹又生。

遠芳侵古道,

晴翠接荒城。

又送王孫去,

萋萋滿別情。


 古原こげんくさたり 送別そうべつ  白居易はくきょい

離離りりたり 原上げんじょうくさ

一歳いっさいに ひとたび枯榮こえい

野火やか けどもつき

春風しゅんぷう いてしょう

遠芳えんぽう 古道こどうおか

晴翠せいすい 荒城こじょうっす

王孫おうそんるをおくれば

萋萋せいせいとして 別情べつじょう滿


字句解釈

離離   草木の繁茂するさま。

遠芳   遠くまで芳しい草が続いている。

侵古道   古い道にかぶさる。

晴翠   晴れた日の緑の草。

王孫   皇帝、諸侯の子供。戦国時代に多数あった国の主の子孫。

萋萋   草木の盛んに茂るさま。

別情   別れの悲しみ。


詩の鑑賞

五言律詩。白居易十六歳の作。これをみて 顧況は絶賛し、出世作となった。
その後、「居易」(やすきにいる)「楽天」(てんをたのしむ)の名の如き一生を送ることになった。
中庸「君子居易以俟命。小人行險以徼幸。」(君子は易きに居て以て命を俟ち、小人は險を行いて以て幸を徼す。)
易経「楽天知命故不憂」(天を楽しみ命を知る。故に憂えず。)

この詩の解釈
楚辞の「招隠士」を踏まえた送別の詩。別れる人に対してまた帰ってきてほしい、「帰り来たれ」との願いを詠っている。



 

関連詩



楊柳枝  唐 温庭筠
唐詩選下227 頁  全唐詩卷二十八


 楊柳枝  温庭筠

館娃宮外鄴城西,

遠映征帆近拂堤。

繋得王孫歸意切,

不關春草綠萋萋。


 楊柳枝ようりゅうし  温庭筠おんていいん

館娃かんあい 宮外きゅうがい 鄴城ぎょうじょう西にし

とお征帆せいはんえいじ ちかつつみはら

王孫おうそん 歸意きいせつなるをつなたり

春草しゅんそう綠萋萋みどりせいせいたるにかかわらず


字句解釈

楊柳枝   「楊」は、ねこやなぎ。「柳」は、しだれやなぎ。「楊柳枝」は雅譜題。白居易が家妓、歌のうまい、 樊素(はんそ)と舞いが得意な、小蛮(しょうばん)を、楊柳枝と題して「桜桃樊素口、楊柳小蛮腰」などと詠ったことから始まった。

館娃宮   館娃は美女のこと。呉王、夫差西施のために建てた宮殿。蘇州にある。

鄴城   魏の曹操の宮殿。河南省、洛陽の東南。


詩の鑑賞

白居易の40年後の詩人、温庭筠が花柳界の美女のために帰れないことを詠った。 故事を踏まえ、「王孫」、「春草」が効果的に使用されている。
温庭筠は、詩が上手で李商隠と並び称せられたが、言動に浮薄なところがあり、また、科挙にも合格しなかった。



 

関連詩



送 別  唐 王 維
全唐詩 卷一百二十八


 送別  王 維

山中相送罷,

日暮掩柴扉。

春草明年綠,

王孫歸不歸。


 送別そうべつ  王 維おうい

山中さんちゅう相送あいおく

日暮ひくれて柴扉さいひおお

春草しゅんそう 明年みょうねんみどりならん

王孫おうそん かえるやかえらざるや


字句解釈

山中   秦嶺山脈(3000m級)の麓の山中に王維の別荘、輞川があった。

罷   やめる。終わる。

柴扉   柴のとびら、自分の家の門のとびら。謙遜用語。他人の扉は玉扉。


詩の鑑賞

王維が友人を送った後の詩。明年春になったら緑が戻るように、友人がまたここを訪ねてくれたらよいがなあ。 自然詩人、王維らしい詩である。




 

関連詩



閨情  唐 孟 遲
全唐詩 卷五百五十七


 閨情  孟 遲

山上有山歸不得,

湘江暮雨鷓鴣飛。

蘼蕪亦是王孫草,

莫送春香入客衣。


 閨情けいじょう  孟 遲おうち

山上さんじょう山有やまあり かえ

湘江しょうこう 暮雨ぼう 鷓鴣しゃこ

蘼蕪りぶ 亦是またこれ 王孫おうそんくさ

春香しゅんこうおくり 客衣かくいらしむことかれ


字句解釈

閨情   「ねや」のおもい。空閨のご婦人の思い。

湘江   洞庭湖の南の川。

鷓鴣   「うずら」ぐらいの小鳥。

蘼蕪    びぶ。「せり」の一種の香草。

客衣     旅人のころも。


詩の鑑賞

孟遲の空閨の婦人の思いを詠った詩。王孫・草・歸の三点セットが入っている。
「漢詩のことば」向島成美著に「王孫と草」の解説あり。



 

関連詩



贈別盧司直之閩中  唐 劉長卿
全唐詩 卷一百四十七


 贈別盧司直之閩中  劉長卿

爾來多不見,

此去又何之。

華髮同今日,

流芳似舊時。

洲長春色遍,

漢廣夕陽遲。

歳歳王孫草,

空憐無處期。


 盧司直ろしちょく閩中びんちゅうくを贈別ぞうべつす   劉長卿りゅうちょうけい

爾來じらい おお

ここりて 又何またいずくにか

華髮かはつ 今日こんにちおなきくす

流芳りゅうほう 舊時きゅうじたり

しゅうながくして 春色遍しゅんしょくあまね

かんひろくして 夕陽遲せきようおそ

歳歳さいさい 王孫おうそんくさ

むなしくあわれむ するところきを


字句解釈

贈別   送別の詩を贈って送る。

司直   裁判官。

閩中   福建省。「閩」門のなかに虫、中華思想の現れ。

爾來   その後。

華髮   白髪頭。

流芳   名声。

洲    (長江の)中州。

漢    中国。

無處期     「期」は約束して会うこと。期日を約束することができない。


詩の鑑賞

劉長卿の送別の詩。ここにも、王孫・草・歸(期)の三点セットが入っている。






詩 吟  伊藤光子様

非常の変に立到り申候  吉田松陰




親思うこころにまさる親ごころ

   今日の音づれ何と思わん

親思うこころにまさる親ごころ

   今日の音づれ何と思わん


 


詩経




「中国の歴史要約」

中国の歴史要約


「人名・用語・書名」

人名  孔 子  太公望
川名・湖名  黄河  渭水 書名  全唐詩

     

解 説

詩経   中国最古(BC1,100~BC600)の黄河流域で歌われた歌の詩集。
     周王朝BC1,122orBC1,112~ 春秋時代BC770~403 戦国時代BC403~ BC246
     『子曰、詩三百、一言以蔽之、曰思無邪』

四書   「論語」「大学」「中庸」「孟子」

五経   「易経」「書経」「詩経」「礼記」「春秋」




 

関連詩



關 雎  無名氏
漢詩鑑賞辞典697頁   詩經 -> 國風 -> 周南 -> 關雎


 關雎  無名氏

關關雎鳩、在河之洲。

窈窕淑女、君子好逑。


參差荇菜、左右流之。

窈窕淑女、寤寐求之。

求之不得、寤寐思服。

悠哉悠哉、輾轉反側。


參差荇菜、左右采之。

窈窕淑女、琴瑟友之。

參差荇菜、左右芼之。

窈窕淑女、鍾鼓樂之。


 關雎かんしょ   無名氏むめいし

關關かんかんたる雎鳩しょきゅうは かわ

窈窕ようちょうたる淑女しゅくじょは 君子くんし好逑こうきゅう


參差しんしたる荇菜こうさいは 左右さゆうこれもと

窈窕ようちょうたる淑女しゅくじょは 寤寐ごびこれもと

これもとめてざれば 寤寐ごび思服しふく

ゆうなるかなゆうなるかな 輾轉てんてん反側はんそく


參差しんしたる荇菜こうさいは 左右さゆうこれ

窈窕ようちょうたる淑女しゅくじょは 琴瑟きんしつもてこれすす

參差しんしたる荇菜こうさいは 左右さゆうこれ

窈窕ようちょうたる淑女しゅくじょは 鍾鼓しょうこもてこれたのしましむ


字句解釈

雎鳩   みさご。


詩の鑑賞

婚礼の時の祝いの歌。雎鳩(みさご)が迎えにやってきた祝いの歌。



 

関連詩



桃 夭  無名氏
漢詩鑑賞辞典701頁   詩經 -> 國風 -> 周南 -> 桃夭


 桃夭  無名氏

桃之夭夭、灼灼其華。

之子于歸、宜其室家。


桃之夭夭、有蕡其實。

之子于歸、宜其家室。


桃之夭夭、其葉蓁蓁。

之子于歸、宜其家人。



 桃夭とうよう   無名氏むめいし

もも夭夭ようようたる 灼灼しゃくしゃくたるはな

とつがば  室家しつかよろしからん


もも夭夭ようようたる 有蕡ゆうふんたる

とつがば  家室かしつよろしからん


もも夭夭ようようたる 蓁蓁しんしん

とつがば  家人かじんよろしからん



字句解釈

歸    嫁ぐ。


詩の鑑賞

婚礼の時の祝いの歌。



 

関連詩



碩 鼠  無名氏
漢詩の楽しみ104頁   詩經 -> 國風 -> 魏風 -> 碩鼠


 碩鼠  無名氏

碩鼠碩鼠、無食我黍。

三歳貫女、莫我肯顧。

逝將去女、適彼樂土。

樂土樂土、爰得我所。



 碩鼠せきそ   無名氏むめいし

碩鼠せきそよ 碩鼠せきそ  きびくらうことかれ

三歳さんさい なんじしたがいしが  われあえかえりみること

きてまさなんじり  樂土らくどかんとす

樂土らくどよ 樂土らくど  ここところ



字句解釈

碩鼠   おおねずみ。


詩の鑑賞

農民の重税に対する邪なき憂いの歌。



 


楚辞




「中国の歴史要約」

中国の歴史要約


中国文学地図

地名  長沙
川名・湖名  洞庭湖  長江  湘江


春秋列国の形勢

  


解 説

楚辞   詩経に並ぶ漢詩の源流。 地方の歌集。
屈原   楚の大政治家、大詩人。懐王に可愛がられたが、 襄王によって長沙に追放され、汨羅に身を投げた。
屈原自身の詩、屈原の弟子、宋玉の詩、また、後世、 この悲劇に関する漢代の詩を集めたのが楚辞。
また、身投げの日が5月5日だったので、粽にかかわる風習が現代にもつながっている。


 

関連詩



招隱士
先秦兩漢 -> 經典文獻 -> 楚辭 -> 招隱士


 招隱士  淮南小山

桂樹叢生兮山之幽,

偃蹇連蜷兮枝相繚。

山氣巃嵷兮石嵯峨,

谿谷嶄巖兮水曾波。

猿狖群嘯兮虎豹嘷,

攀援桂枝兮聊淹留。

王孫游兮不歸,

春草生兮萋萋。

歳暮兮不自聊,

蟪蛄鳴兮啾啾。

坱兮軋,山曲岪,

心淹留兮恫慌忽。

罔兮沕,

憭兮慄,虎豹穴。

叢薄深林兮,人上慄。

嶔岑碕礒兮碅磳磈硊,

樹輪相糾兮林木茷骫。

青莎雜樹兮薠草靃靡,

白鹿麔麚兮或騰或倚。

狀兒崟崟兮峨峨,

淒淒兮漇漇。

獼猴兮熊羆,

慕類兮以悲。

攀援桂枝兮聊淹留。

虎豹鬥兮熊羆咆,

禽獸駭兮亡其曹。

王孫兮歸來,

山中兮不可以久留。


 隱士いんしまねく   淮南小山わいなんしょうざん

桂樹叢生けいじゅそうせいやまゆう

偃蹇連蜷えんけんれんけんとして枝相繚えだあいまとえり。

山氣巃嵷さんきろうしょうとして石嵯峨いしさがたり,

谿谷嶄巖けいこくざんがんとしてみずなみかさぬ。

猿狖群嘯えんゆうぐんしょうして虎豹嘷こひょうなく。

桂枝けいし攀援はんえんしてしばら淹留えんりゅうす。

王孫游おうそんあそびてかえらず,

春草生しゅんそうしょうじて萋萋せいせいたり。

歳暮としくれおのずかたのしまず,

蟪蛄鳴けいこないて啾啾しゅうしゅうたり。

おうとしてあつたり、山曲岪やまきょくふつたり。

心淹留しんえんりゅうとしてどうとして慌忽こうこつたり。

ぼうとしてみつたり。

りょうとしてりつたり、虎豹こひょうあな

叢薄深林そうはくしんりん人上ひとのぼっておののく。

嶔岑碕礒きんぎんきぎとして碅磳磈硊きんそういきたり。

樹輪相糾じゅりんあいあざないて林木茷骫りんぼくばついす。

青莎雜樹せいしゃざつじゅして薠草靃靡はんそうすいびす。

白鹿麔麚はくろくくんかあるいかけあるいる。

狀兒崟崟じょうぼうぎんぎんとして峨峨ががたり。

淒淒せいせいとして漇漇ししたり。

獼猴びこう熊羆ゆうひ

るいしたいてってかなしむ。

桂枝けいし攀援はんえんしてしばら淹留えんりゅうす。

虎豹ひょうこたたかいて熊羆咆ゆうひほゆ。

禽獸駭きんじゅうおどろいてともがらうしなう。

王孫おうそんかえきたれ,

山中さんちゅうってひさしくとどまるからず。


字句解釈

淮南小山     前漢、高祖(劉邦)の孫、淮南王の劉案、あるいは、 部下の文人グループの詩。

隱士   屈原をさす。

兮   「ケイ」、読まない字。楚辞の特徴。


詩の鑑賞

王孫と草がセットとなっている始まりの詩。唐代に、このセットが、流行することになった。




 

参考 再掲



返 照  唐 杜 甫
漢詩を楽しむ33頁  全唐詩卷二百三十


 返 照  杜 甫

楚王宮北正黄昏,

白帝城西過雨痕。

返照入江翻石壁,

歸雲擁樹失山村。

衰年肺病唯高枕,

絶塞愁時早閉門。

不可久留豺虎亂,

南方實有未招魂。


 返 照へんしょう   杜 甫と ほ

楚王そおう 宮北きゅうほく まさ黄昏こうこん

白帝はくてい 城西じょうせい 過雨かうこん

返照へんしょう こういって 石壁せきへきひるがえ

歸雲きうん じゅようして 山村さんそんうしな

衰年すいねん はいみ ただまくらたかくし

絶塞ぜっさい ときうれえて はやもん

ひさし豺虎さいこらんとどまからず

南方なんぽう じついままねかれざるこんあり


字句解釈

楚王    懐王

過雨    とおりあめ。

返照    2ヶの山の山影の上の日に当たった部分。

絶塞    都から遠く離れたとりで。

愁時    ①秋のこと。②時世をうれう。

豺虎    山犬と虎。悪いやつ。

南方    都にたいする南。

未招魂    呼びかえされていない魂。屈原の故事あり。帰りたいと思うが帰れない自分(杜甫)がここにいる。

     

詩の鑑賞

杜甫の、故郷に帰りたいのに帰れない、悲痛な叫びである。杜甫の詩の特徴であるが、前半(第1句~第4句)で情景を詠い、 後半で心情を詠っている。




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Last modified    First updated 2016/05/10