第29回講義 音声を聞くにはプラグインが必要です。 (ブラウザの設定にもよりますが音声を聞くには 「ブロックされているコンテンツを許可」し、 スタートボタンをクリックしてください。 尚、Windows10標準のブラウザーedgeでは音声再生ができません。 internetexplorer11をご使用ぐださい。) |
白居易 作詩の背景 |
|
|
字句解釈 |
香爐峰 廬山にある香爐の形をした山。独立峰ではなく連山。 廬山の廬はいおり。廬山には李白も一時いたことがある。 卜山居 卜はうらなう。卜居は家を建てること。 草堂 草ぶきの粗末な家、自分の家。 題 書きつける。 初成 初めてできたのではなく、できたばかりの意。 猶慵起 起きるのが面倒だ。 小閣 二階建ての小さな家。閣は2階建。 重衾 衾(しとね)はどてら、か。 香爐峰雪撥簾看 清少納言 枕草子 第二百九十九段 「雪のいと高う降りたるを例ならず御格子まゐりて、炭びつに火おこして、物語などして集まりさぶらうに、 「少納言よ、香炉峰の雪いかならむ。」と仰せらるれば、御格子上げさせて、御簾を高く上げたれば、 笑はせたまふ。人々も「さることは知り、歌などにさへ歌へど、思ひこそよらざりつれ。 なほ、この官の人にはさべきなめり。」と言ふ。」 欹枕 枕をちょっと立てる。 匡廬 廬山のこと。 逃名 名声など俗世間のことから逃れた。 司馬 長官は刺史、司馬はその補佐。本来は馬を司る官だが実際は左遷された人の閑職。 歸處 落ち着くところ。 |
詩の鑑賞 |
中唐の大詩人、白居易(号は白楽天)の詩の中で日本人に最もよく知られた詩である。 44歳の時に長安の宮廷の派閥闘争に敗れて左遷の身となり、司馬となって蘆山に居をなした時の詩であり 不遇の身の屈折した感情が読み取れる。 心中に憤懣が渦巻いているがそれを表に出さず、閑職の朝寝を幸いとして落ち着くところは長安のみではなかろうと嘯いている。 悪く言えば負け惜しみ、よく言えば精神の強さがあり、孟浩然、杜甫とはまた違った趣がある。 |
|
|
字句解釈 |
内 家内、妻。 三聲 三にこだわらず、何回も。 郷涙 故郷を想って流す涙。 一葉 一つの葉っぱのような小さな。 病身 本人か、内か?。 水窗 舟の窓。窗は窓の本字。 月明月暗 月が明るくても暗くても。 |
詩の鑑賞 |
九江から忠州に向かう揚子江の船の中での作。白居易らしくない悲しいし詩。 |
|
|
字句解釈 |
逢舊 昔の知り合い(妓女?)に、たまたま、あう。会は約束して会う。遇はたまたま、あるいは、約束してあう。 新恨 新しいかなしみ。 掃青蛾 美しい眉をえがく。 應 まさにーーべし。推量。であろう。 傍人 かたわらのひと。 少年 わかいとき。日本語の少年ではない。 惆悵 悲しんでいること。 |
詩の鑑賞 |
昔の知り合い(女性)に、旅先で、偶々逢ったときの作。 |
|
|
字句解釈 |
浦中 水辺。 稜稜 (霜の)厳しい気配。(人の)厳しい気配。 蘆荻 あし、おぎ。 |
詩の鑑賞 |
このころの白居易の気持ちをあらわすハイライト。2通りの読み方がある。 ①揚子江の水辺に船をとどめて厳しい風の堤で蘆の中にひとつの灯を見た。ーーたんなる風景描写。 ②またひとり長官としてやっていかねばならぬ、光も見えぬ、朝廷の厳しい処置を暗に詠んだ。--人事の厳しさの風刺。 そろそろ、中央に呼んでもらえないかと言っているのではなかろうか? |
|
|
字句解釈 |
郢州 ①春秋戦国時代の楚の都。江陵、荊州。②武昌にも郢州がある。②かどちらか不明。 蔟蔟 むらがる。 茫茫 はてしない。 渡口 渡し場。 京使 都からの使い。 説道 言うことには。他例:言道 いううならく。 煙塵 軍の煙塵。 |
詩の鑑賞 |
揚子江旅中の作。 |
|
|
字句解釈 |
元九 元 稹 殘 ①おとろえる。②のこる。ここは①で読みたい。 |
詩の鑑賞 |
九江左遷の途中、長江船上の詩。 詩:2回、燈:3回使用されている。ただし、燈前、燈殘、燈滅と時系列の用法は絶妙である。 逆風は政局の逆風を暗示する。 |
|
|
字句解釈 |
衰柳 おとろえた柳。自分のこと。 濕屈 湿って曲げられて。 秋雨意 秋雨のきもち。 更遣 「遣」はおいやる。追っ払う。また左遷する。 欲如何 どうしようと言うのか。 |
詩の鑑賞 |
再度の左遷を嘆いている。 |
|
|
字句解釈 |
京洛 洛陽。 聲華客 名を知られた客。自分のこと。 江湖 川と湖。田舎 潦倒 おいぼれ。 銷磨 とかし、すりへる。 群動 多くの動物。 定 無念無想。例:入定 |
詩の鑑賞 |
旅行中の一詩。 |
|
|
字句解釈 |
微之 元九。 默默 ものいわぬ。 茫茫 ひろびろとしてよりどころがない。 來由 いわれ。 損傷 いためられる 支床 司馬遷の史記「亀策列伝」故事:南方の老人、亀を用いて床の足を支う。二十四年経て老人死すも亀なお生存す。 冷落 ものさびしい。「零落」はおちぶれる。 瘴郷 瘴癘の地。毒気のあるところ。 外物 名よ、地位など。 門戟 門にかざる鉾。 腰章 腰にぶら下げる高位高官の紀章(はんこ)。 |
詩の鑑賞 |
白居易が忠州に向かう途中、三峡と荊州の中間の宜昌で 虢州(かくしゅう)の司馬(長史?)に左遷された元九と偶然に逢った。 三日三晩語り合ったという。 虢州(かくしゅう)は洛陽に近いが山の中である。ちなみに、川の北が陽、山の南が陽、洛陽は洛水の北にある。 忠州に着いてから元九を慰めて詠じた。 |
|
|
字句解釈 |
炎涼 あついとさむい。 苦 ①くるしい。②はなはだ。ここは②で時の経過がはなはだ早い意。 二年 あしかけ2年。 潺湲 ちょろちょろ流れる水。(長江の支流か?) |
|
|
字句解釈 |
東坡 東のどて。 種植 種・植ともに「うえる」。 滋榮 おおきくなる。 取次 しだいに、つぎつぎに。 行 行列。 萎花 しぼんだはな。 斑竹 黒い紋の付いた竹。舜帝の妃の涙が散って付いたとのいわれがある。 青蕪 青い草。 |
|
|
字句解釈 |
好住 よろしくあれ。さようなら。good luck。「好在」ともいう。 憔悴 やせおとろえる。 |
詩の鑑賞 |
別れの作。 草樹禽魚に対してまで急に優しくなった。げんきんなものだ。 |