第32回講義

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2017.02.23 録音

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白居易 作詩の背景




「白楽天年譜」




「唐王朝年表」

白楽天年譜1 772年 1歳 ~800年 29歳
白楽天年譜2 801年 30歳 ~815年 44歳
白楽天年譜3 816年 45歳 ~826年 55歳
白楽天年譜4 827年 56歳 ~839年 68歳
白楽天年譜5 842年 71歳 ~846年 75歳


唐王朝年表1 618年 高 宗 ~779年 代 宗
唐王朝年表2 779年 徳 宗 ~907年 哀 宗



中国文学地図

地名 長 安  洛陽
川名・湖名  長江  黄河  淮河  渭水


「人名・用語・書名」

人名 牛僧儒  李徳裕  憲 宗  穆 宗  徳 宗  順 宗
用語 牛李の党争

     
 

再掲


對酒五首 其二   唐 白居易

巻四百四十九


 對酒五首 其二  白居易

蝸牛角上爭何事,

石火光中寄此身。

隨富隨貧且歡樂,

不開口笑是癡人。


 さけたいす  白居易はくきょい

蝸牛かぎゅう 角上かくじょう 何事なにごとをかあらそ

石火せっか 光中こうちゅう 

とみしたがい ひんしたがい しばらく歡樂かんらくせん

くちひらいてわらわざるは 癡人ちじん


字句解釈

蝸牛角上爭   蝸牛は、かたつむり。出所は、荘子で、魏と斉の争いに関する故事。つまらない争いのこと。 荘子 雜篇 則陽による。

石火光中   短い時間、火打石の発火の時間。

不開口笑是癡人   盗跖の言。これも、荘子、 盗跖篇を踏まえる。
人上壽百歳,中壽八十,下壽六十,除病痩、死喪、憂患,其中開口而笑者,一月之中不過四五日而已矣。
人 上寿 百歳、中寿八十、下寿六十、 病痩、死喪、憂患,を除けば、そのうち 口を開いて笑うもの、 一月のうち四五日に過ぎざるのみ。

     

詩の鑑賞

白居易58歳ころの作品。科挙出身者と門閥と宦官の政争をさけ、太子賓客分司となり、洛陽の履道里に住んでいた。 若い時は論語・孟子、老年は老子・荘子、と言われる如く、白居易も晩年、老壮に傾いたようだ。 達観した詩になっている。



 

宴城東莊  唐 崔敏童

唐詩選(下)256頁  全唐詩卷二百五十八


 宴城東莊  崔敏童

一年始有一年春,

百歳曾無百歳人。

能向花前幾回醉,

十千沽酒莫辭貧。


 城東莊じょうとうそうえんす  崔敏童さいびんどう

一年いちねん hじめて 一年いちねんはる

百歳ひゃくさい かつて 百歳ひゃkぅさいひと

花前かぜんおいて 幾回いくかい

十千じゅうせんもて さけ ひんすることかれ


字句解釈

百歳曾無百歳人   盜跖の言葉。

十千   一万の十倍。一万。

沽酒   さけをかう。


詩の鑑賞

崔敏童は玄宗皇帝の娘婿。(皇帝の娘を公主という。) 崔氏は春秋時代以来の名門である。
荘子を踏まえた一詩。



 

宴城東莊  唐 崔惠童

唐詩選(下)258頁  全唐詩卷二百五十八


 宴城東莊  崔惠童

一月主人笑幾回,

相逢相識且銜杯。

眼看春色如流水,

今日殘花昨日開。


 城東莊じょうとうそうえんす  崔惠童さいけいどう

一月いちげつ 主人しゅじん わらうこと幾回いくたび

い り しばらはいふく

る 春色しゅんしょく 流水りゅうすいごと

今日こんじつ殘花ざんか 昨日さくじつひら


字句解釈

一月主人笑幾回   盜跖の言葉。

殘花   おとろえたはな。残ったではない。


詩の鑑賞

崔惠童は崔敏惠の兄弟、あるいは、従弟。荘子を踏まえた一詩。



 

對酒五首其四   唐 白居易

全唐詩卷四百四十九


 對酒五首  白居易

百歳無多時壯健,

一春能幾日晴明。

相逢且莫推辭醉,

聽唱陽關第四聲。


 さけたいす  白居易はくきょい

百歳ひゃくさい 多時たじ壯健そうけんなる

一春いっしゅん 幾日いくじつ晴明せいめい

い よい推辭すいじすることかれ

となうるをけ 陽關ようかんの 第四聲だいよんせい


字句解釈

推辭   おしてじす。推には意味なし。

陽關第四聲   王維の陽關渭城曲「勸君更盡一杯酒」。起句は1回、承句は2回歌うと4句目となる。

     

詩の鑑賞

白居易58歳の作。



 

送元二使安西  唐 王 維

全唐詩巻二十七


 送元二使安西  王 維

渭城朝雨浥輕塵,

客舍青青柳色春。

勸君更盡一杯酒,

西出陽關無故人。


 渭城いじょうきょく  王 維おうい

渭城いじょう朝雨ちょうう 輕塵けいじんうるお

客舍かくしゃ 青青せいせい 柳色りゅうしょくはる

きみすすむ さらつくせ 一杯いっぱいさけ

西にしのかた陽關ようかんずれば 故人こじんからん


字句解釈

渭城     渭水のほり咸陽。西へ向かう旅人を送ったところ。

陽關     祁連山脈北西端。

故人     知人。


詩の鑑賞

王維の代表作のひとつ。


 

對酒五首其一  唐 白居易

全唐詩卷四百四十九


 對酒五首其一  白居易

巧拙賢愚相是非,

何如一醉盡忘機。

君知天地中寬窄,

雕鶚鸞皇各自飛。


 さけたいす   白居易はくきょい

巧拙こうせつ 賢愚けんぐ 是非ぜひ

何如いかんぞ 一醉いっすい ことごとわするるを

君知きみしるや 天地てんち なか寬窄かんさくなるを

雕鶚ちょうがく 鸞皇らんおう 各自かくじ


字句解釈

巧拙   要領のよいやつと、わるいやつ。

賢愚   賢い奴と愚かなやつ。

是非   ①正と不正、②なにとぞ、③もめごと。ここは③?

機   たくらみ、欲心。

雕鶚   わし。

鸞皇   ほうおう。鳳:雄、凰:雌。


詩の鑑賞

あれこれ、欲心を起こして心を煩わせなさるな。鷲も鳳凰を自由に飛んでるではないですか。




 

對酒五首其三  唐 白居易

全唐詩卷四百四十九


 對酒五首其三  白居易

丹砂見火去無跡,

白髮泥人來不休。

賴有酒仙相暖熱,

松喬醉即到前頭。


 さけたいす  白居易はくきょい

丹砂たんしゃ て ってあとなし

白髮はくはつ 泥人でいじん たりてまず

たのむらくは酒仙しゅせんりて 暖熱だんねつ

松喬しょうきょう えばすなわち 前頭ぜんとういた

字句解釈

丹砂   水銀。


詩の鑑賞

此の詩、意味不明。



 

對酒五首其五  唐 白居易

全唐詩卷四百四十九


 對酒五首其五  白居易

昨日低眉問疾來,

今朝收涙吊人回。

眼前流例君看取,

且遣琵琶送一杯。


 さけたいす  白居易はくきょい

昨日さくじつ まゆれて してうてたる

今朝こんちょう なみだおさめて ひととむらいてめぐ

眼前がんぜん 流例りゅうれい きみ看取かんしゅせよ

しばら琵琶びわをして一杯いっぱいおくしめ

字句解釈

問疾   病気見舞い。

收涙   涙を拭う。

流例   ありさま。


詩の鑑賞

白居易は荘子、仏教に傾倒した。



 

龍門下作  唐 白居易

全唐詩卷四百四十八


 龍門下作  白居易

龍門澗下濯塵纓,

擬作閒人過此生。

筋力不將諸處用,

登山臨水詠詩行。


 龍門下りゅうもんかさく  白居易はくきょい

龍門りゅうもん 澗下かんか 塵纓じんえいあら

閒人かんじんって 此生このせいすごさんと

筋力きんりょく もちいず 諸處しょしょよう

やまのぼり みずのぞみて えいじてかん

字句解釈

龍門下   洛陽近傍の龍門の谷川。
淮河の以北は河、以南は江。川は北が陽で南が陰、山は北が陰で南が陽。

塵纓   塵の付いたひも。纓は冠のひも。

閒人   ひまじん。

擬   =欲、ほっす。

登山臨水   論語を踏まえているか?
雍也第六、子曰、知者楽水、仁者楽山。知者動、仁者静。知者樂、仁者壽。
孔子曰く知者は水を楽しみ、仁者は山を楽しむ。知者は動き、仁者は静かなり。知者は楽しみ、仁者は寿(いのちなが)し。
知者の動きは流れて止まらない水のようであり、仁者の静かなところはどっしりとした山のようなものである。 知者は変化を楽しみ、仁者は常にゆったりとしてあくせくしないから、長生きだ。

詩の鑑賞

白居易58歳の作。中隠の生活を楽しんだ。




詩 吟  小菅幸枝様

一聲仁   西郷南洲



 一聲仁   西郷南洲

學文無主等痴人、

認得天心志氣振。

百派紛紜亂如線、

千秋不動一聲仁。


 一聲いっせいじん   西郷南洲さいごうなんしゅう

ぶんまなんで しゅければ痴人ちじんひと

天心てんしん認得にんとくして 志氣しきふる

百派紛紜亂ひゃくはふんぷんみだれて いとごと

千秋せんしゅう うごかざるは 一聲いっせいじん




詩 吟  大森正泰様

送元二使安西  唐 王 維



 送元二使安西   王 維

渭城朝雨浥輕塵,

客舍青青柳色春。

勸君更盡一杯酒,

西出陽關無故人。


 渭城いじょうきょく  王 維おうい

渭城いじょう朝雨ちょうう 輕塵けいじんうるお

客舍かくしゃ 青青せいせい 柳色りゅうしょくはる

きみすすむ さらつくせ 一杯いっぱいさけ

西にしのかた陽關ようかんずれば 故人こじんからん



 

寄劉蘇州   唐 白居易

漢詩を楽しむ80頁 漢詩鑑賞辞典468頁 全唐詩卷四百三十七


 寄劉蘇州  白居易

去年八月哭微之,

今年八月哭敦詩。

何堪老涙交流日,

多是秋風搖落時。

泣罷幾回深自念,

情來一倍苦相思。

同年同病同心事,

除卻蘇州更是誰。

 劉蘇州りゅうそしゅうす   白居易はくきょい

去年きょねん 八月はちがつ 微之びしこく

今年こんねん 八月はちがつ 敦詩とんしこく

んぞたえん 老涙ろうるい交流こうりゅう

おおれ 秋風しゅうふう 搖落ようらくときなるを

泣罷なきやんで 幾回いくかい ふかみずからおも

情來じょうきたりて 一倍いちばい くるしおも

同年どうねん 同病どうびょう 同心事どうしんじ

蘇州そしゅうを 除卻じょきゃくすれば さらだれ


字句解釈

劉蘇州   劉禹錫蘇州の長官であった。

微之   元稹

敦詩   崔群

交流   こもごもながる。

搖落   ゆれおちる。

同心事   同じ志。

除卻   卻は添え字、無意味。


詩の鑑賞

白居易61歳、親友がつぎつぎに他界することを悲しんだ。



 

初入香山院對月   唐 白居易

全唐詩卷四百五十六


 初入香山院對月  白居易

老住香山初到夜,

秋逢白月正圓時。

從今便是家山月,

試問清光知不知。


 はじめ香山院こうざんいんつきたい
    白居易はくきょい

おい香山こうざんみ はじめよるいた

あき 白月はくげつ まさまどかなるとき

いまより 便まされ 家山かざんつき

こころみにう 清光せいこう るやらざるや


字句解釈

香山院    龍門香山の寺を自ら修復し別荘とした。

初到夜    やってきたばかりの夜。

家山月    我が家の月。

知不知    =知否。 

     

詩の鑑賞

白居易61歳、履道里龍門香山での作。月に対する愛着の表現がよい。



 

香山寺二絶   唐 白居易

全唐詩卷四百五十四


 香山寺二絶   白居易

空門寂靜老夫閑,

伴鳥隨雲往復還。

家醞滿瓶書滿架,

半移生計入香山。


 香山寺二絶こうざんじにぜつ   白居易はくきょい

空山くうざん 寂靜せきせいにして 老夫ろうふかんたり

とりともない くもしたがい かえ

家醞かうんは へい滿ち しょ滿

なか生計せいけいうつして 香山こうざん


字句解釈

空門   人気のない門。仏門。

家醞   自分の家で醸した酒。どぶろく。

生計  生活。

     

詩の鑑賞

香山寺に居を移したときの作。




 

自題酒庫   唐 白居易

漢詩を楽しむ112頁  全唐詩卷四百五十七


 自題酒庫  白居易

野鶴一辭籠,

虚舟長任風。

送愁還鬧處,

移老入閑中。

身更求何事,

天將富此翁。

此翁何處當,

酒庫不曾空。


 みずか酒庫しゅこだいす   白居易はくきょい

野鶴やかく ひとたびかご

虚舟きょしゅう とこしえかぜまか

うれいおくり 鬧處とうしょかえ

おいうつして 閑中かんちゅう

身更みさらに 何事なにごとをかもとめん

天將てんまさに おうます

おう いずれのところにかまん
酒庫しゅこ かつむなしからず


字句解釈

野鶴   野のつる。官職につかない人。

虚舟   からふね。

辭    ①ことば②おれい③わびる④ことわる⑤いとまごい⑥やめる、ここは⑥。

鬧處   さわがしいところ。心配事は市中に送る。

天將富此翁   初唐の劉仁軌の詩に「天將富此翁 以一酔爲富也」。出典不明。

     

詩の鑑賞

白居易62~64歳の作。分かりやすい。「元軽白俗」と馬鹿にされたこともある。





Last modified    First updated 2017/03/02