第58回講義

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2019.09.26 録音

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杜牧作詩の背景



「杜牧年譜」


「唐代詩人年表」


「唐王朝年表」


「中国の歴史要約」

杜牧年譜1 803年 1歳 ~839年 37歳
杜牧年譜2 840年 38歳 ~852年 50歳

唐代詩人年表1 580年 魏 徴 ~718年 賈 至
唐代詩人年表2 735年 李 頎 ~843年 魚玄機

唐王朝年表1 618年 高 祖 ~779年 代 宗
唐王朝年表2 779年 徳 宗 ~907年 哀 宗

中国の歴史要約1 
中国の歴史要約2 分裂の時代


中国文学地図

地名  南昌(宣州)  揚州(地図)  揚州(解説)  貴池  南京  江 州(九 江)  洛陽  長安

川名・湖名  秋浦  秋浦(説明)  長江  洞庭湖  黄河


春秋列国の形勢

周(洛陽)            楚(郢)      


人名用語書名」

人名 杜牧 謝脁(しゃちょう)  李白 杜佑 沈傳師  牛僧儒  李徳裕  息夫人  煬帝  隋 文帝  王羲之

用語  監察御史  科挙  牛李の党争  節度使  刺史

書名

参考詩

     

 

再 掲


題宣州開元寺水閣閣下宛溪夾溪居人 唐 杜牧

杜牧100選 全唐詩 卷五百二十二


 題宣州開元寺水閣
   閣下宛溪夾溪居人
           杜牧

六朝文物草連空,

天淡雲閑今古同。

鳥去鳥來山色裏,

人歌人哭水聲中。

深秋簾幕千家雨,

落日樓臺一笛風。


惆悵無因見範蠡,

參差煙樹五湖東。

 宣州開元寺水閣せんしゅうかいげんじすいかくだいす 
   閣下かくか宛溪えんけい けいはさみてひとらしむ
                    杜牧とぼく

六朝ろくちょうの 文物ぶんぶつ くさくうつらなり、

天淡てんあわく 雲閑くもしずかに 今古きんこおなじ。

鳥去とりさり 鳥來とりきたる 山色さんしょくうち

人歌ひとうたい 人哭ひとこくす 水聲すいせいうち

深秋しんしゅう 簾幕れんばく 千家せんかあめ

落日らくじつの 樓臺ろうだい 一笛いってきかぜ

惆悵ちゅうちょうす 範蠡はんれいるに 因無よしなく、

參差しんしたる 煙樹えんじゅ 五湖ごこひがし


字句解釈

開元寺   開元寺

水閣   水辺の楼閣。

宛溪   曲った谷。

六朝   六朝

簾幕   すだれやまく。

惆悵   嘆き悲しむ。惆と悵は同意。

無因見   見るによしなし。見る手段がない。

範蠡   範蠡

參差   長短・高低いりまじり不揃いなさま。

五湖   太湖。 五湖


詩の鑑賞

宣州2度目の赴任(杜牧35歳)時の作。 杜牧は絶句の名手である。律詩は杜甫と言われるが、杜牧の律詩もすばらしい。
この詩は、杜牧の律詩の最高峰のひとつである。それぞれの対句も見事である。
理想的生き方をした范蠡を偲んでいる。 この後、1年半でまた長安に呼び戻された。




 

初春雨中舟次和州橫江裴使君見迎李趙二秀才同來因書四韻兼寄江南許渾先輩    唐 杜 牧

杜牧100選 全唐詩 卷五百二十三


初春雨中舟次和州橫江裴使君
見迎李趙二秀才同來因書四韻
兼寄江南許渾先輩    杜 牧

芳草渡頭微雨時,

萬株楊柳拂波垂。

蒲根水暖雁初浴,

梅徑香寒蜂未知。

辭客倚風吟暗淡,

使君回馬濕旌旗。

江南仲蔚多情調,

悵望春陰幾首詩。

初春しょしゅん 雨中うちゅうに 和州橫江わしゅうおうこう舟次しゅうじし、 裴使君はいしくん
むかえられ、 李趙二秀才同ちょうしゅうじしゅうさいともたる。 って四韻しいん
しょし、 かね江南こうなんの 許渾先輩きょこんせんぱいす。 杜牧とぼく

芳草ほうそう 渡頭ととう 微雨びうとき

萬株ばんしゅの 楊柳ようりゅう なみはらいてる。

蒲根ほこん 水暖みじあたたかにして 雁初かりはじめてよくし、

梅徑ばいけい 香寒こうさむくして はちいまらず。

辭客じかく かぜりて ぎんずること暗淡あんたんたり、

きみをして うまを回らして 旌旗濕せいきうるおわしむ。

江南こうなんの 仲蔚ちゅううつ 情調じょうちょうおおし、

悵望ちょうぼうす 春陰しゅんいん 幾首いくしゅ


字句解釈

舟次   ふなどまり。

和州橫江   長安路途中の揚子江のほとり。

裴   人名。

使君   地方長官のこと。(自分自身にも使う。)

見迎   むかえられ。「見」は受けの身助動詞。

李趙   李、趙とも人名。

秀才   科挙の部門のひとつ。
唐代は科挙の一部門、宋代は科挙受験有資格者、現代、頭のよい人。

四韻   律詩のこと。(実際は5韻ある。)

許渾   杜牧の弟の科挙同期、近くに病気で隠棲中であった。

先輩   年齢の上下を問わず用いる。

渡頭   渡し場。

楊柳   「楊」ねこやなぎ、「柳」しだれやなぎ。

雁初浴   雁が浴しはじめたばかり。

辭客   辭(①述べる②挨拶して去る?)す客。杜牧のこと?、相手のこと? 両説あり。

使君   裴さんのこと。

仲蔚   人名。蒙求に故事あり、隠士。許渾さんを準えている。
71 顔回箪瓢 質素な食事のたとえ。 「箪」は竹でできた容器、わりご。 「瓢」は瓢箪でできた容器、ひさご。 わりご一杯の飯とひさご一杯の汁物だけの食事ということから。 孔子の弟子の顔回が、貧しい生活をしながらも勉学に励むのを孔子がほめた言葉から。
72 仲蔚蓬蒿 仲蔚蓬蒿居 仲蔚は、まずしい、蓬や蒿の住居にいた。

情調   心のおもむき。

悵望   悲しい気持ちでながめやる。

春陰   はなぐもり。


詩の鑑賞

長安への帰途、和州橫江での作。眼の悪い弟を兄に委託するためこの路を選んだ。



 

漢江    唐 杜 牧

杜牧100選 全唐詩 卷五百二十三


 漢江    杜 牧

溶溶漾漾白鷗飛,

綠淨春深好染衣。

南去北來人自老,

夕陽長送釣船歸。

 漢江かんこう   杜牧とぼく

溶溶ようよう 漾漾よぷよう 白鷗飛はくおうとび、

綠淨みどりきよく 春深はるふかく ころもむるにし。

南去なんきょ 北來ほくらい 人自ひとおのずからい、

夕陽せきよう つねおくる 釣船ちょうせんかえるを。


字句解釈

漢江   揚子江の支流で北上する、途中に襄陽がある。長安への通路。

溶溶   水が盛んに流れるさま。

漾漾   水がゆったりと流れるさま。

白鷗飛   白いかもめ。


詩の鑑賞

自分も歳をとったなあ、との感慨深い心情が現れている。
隠者と俗人の中間の漁師がでてくる。ああうらやましい、都へ帰るのがものうい気持ちが出ている。





吟 詠    内山義浩様

千曲川旅情の歌  日本 島崎藤村




 千曲川旅情の歌-落梅集より-  島崎藤村

小諸なる古城のほとり          雲白く遊子(いうし)悲しむ

緑なすはこべは萌えず         若草も藉(し)くによしなし

しろがねの衾(ふすま)の岡辺     日に溶けて淡雪流る


あたゝかき光はあれど          野に満つる香(かをり)も知らず

浅くのみ春は霞みて           麦の色わづかに青し

旅人の群はいくつか           畠中の道を急ぎぬ


暮行けば浅間も見えず          歌哀し佐久の草笛(歌哀し)

千曲川いざよふ波の           岸近き宿にのぼりつ

濁(にご)り酒濁れる飲みて       草枕しばし慰む


    


 

途中作    唐 杜 牧

杜牧100選 全唐詩 卷五百二十三


 途中作    杜 牧

綠樹南陽道,

千峰勢遠隨。

碧溪風澹態,

芳樹雨餘姿。

野渡雲初暖,

征人袖半垂。

殘花不一醉,

行樂是何時。

 途中とちゅうさく  杜牧とぼく

綠樹りょくじゅ 南陽なんようみち千峰せんぽう 勢遠いきおいとおしたがう。

碧溪へきけい 風澹かぜしずかなるたい芳樹ほうじゅ 雨餘うよ姿すがた

野渡やと 雲初ゆくはじめてあたたかく、 征人せいじん 袖半そでなかる。

殘花ざんか 一醉いすいせずんば、 行樂こうらく いずれのときならん。


字句解釈

征人   行く人。(自分のこと。)

是何時   いつのことか、いましかない。


詩の鑑賞

帰途のあわただしい中の花見の情景。



 

商山麻澗  唐 杜 牧

杜牧100選 全唐詩 卷五百二十三


 商山麻澗
   杜牧

雲光嵐彩四面合,

柔柔垂柳十餘家。

雉飛鹿過芳草遠,

牛巷鶏塒春日斜。

秀眉老父對樽酒,

蒨袖女兒簪野花。

征車自念塵土計,

惆悵溪邊書細沙。

 商山しょうざん 麻澗まかん   杜牧とぼく

雲光うんこう 嵐彩らんさい 四面合しめんがっし、 柔柔じゅうじゅうたる 垂柳すいりゅう 十餘家じゅうよか

雉飛きじとび 鹿過しかすぎ 芳草遠ほうそうとおく、 牛巷ぎゅうこう 鶏塒けいし 春日斜しゅんじつななめなり。

秀眉しゅうびの 老父ろうふ 樽酒そんしゅたいし、 蒨袖せんしゅうの 女兒じょじ 野花やかかざす。

征車せいしゃ おのずからおもう 塵土じんどけい惆悵ちゅうちょうとして 溪邊けいへんに 細沙さいさく。


字句解釈

商山   商山四浩

麻澗   地名。

嵐彩   「嵐」らん 山の気のもや。

牛巷鶏塒   牛の帰る道、鶏のねぐら。物をしてかたらしめよ、田舎ののどかなさま。

塵土計   俗世間のはかりごと。

惆悵   がっかりした失意のさま。さびしいさま。

書細沙   とんでもないほどにあやしい出来事。
「書空」の故事あり。晋書(しんじょ)殷浩伝 「咄咄怪事


詩の鑑賞

長安への帰路南陽道で田舎の長閑な情景に接し、自分の俗字に係る姿を憐れに思った。



 

齊安郡晩秋    唐 杜牧

杜牧100選 全唐詩 卷五百二十二


 齊安郡晩秋    杜牧

柳岸風來影漸疏,

使君家似野人居。

雲容水態還堪賞,

嘯志歌懷亦自如。

雨暗殘燈棋散後,

酒醒孤枕雁來初。

可憐赤壁爭雄渡,

唯有蓑翁坐釣魚。

 齊安郡晩秋せいあんぐんばんしゅう  杜牧とぼく

柳岸りゅうがん 風來かぜきたりて 影漸かげようやくまばらなり

使君しくんの いえたり 野人やじんきょ

雲容うんよう 水態すいたい しょうするにエネルギー

嘯志しょうし 歌懷かかい 自如じじょたり

あめ殘燈ざんとうくら棋散きさんじてのち

さけく孤枕こちんめて 雁初かりはじめきた

あわれむべし 赤壁せきへき ゆうあらそそいしわたし

り 蓑翁さおう してうおるあり


字句解釈

齊安郡   黄州。

野人居   野人は宮仕えしない人。

嘯志歌懷   うたごころ。

自如   ①気楽、平気。②もとのまま。

赤壁   赤壁の戦い


詩の鑑賞





 

齊安郡中偶題二首   唐 杜 牧

杜牧100選 全唐詩 卷五百二十二


 齊安郡中偶題二首 其二  杜 牧

秋聲無不攪離心,

夢澤蒹葭楚雨深。

自滴階前大梧葉,

幹君何事動哀吟。


 齊安郡中偶題二首せいあんぐんちゅうぐうだいにしゅ  杜牧とぼく

秋聲しゅうせい 離心りしんみださざるなく

夢澤ぼうたくの 蒹葭けんかに 楚雨深そうふか

おのずからしたたる 階前かいぜんの 大梧葉だいごよう

きみもとむ 何事なにごとか 哀吟あいぎんうごせると


字句解釈


詩の鑑賞

李白も宣城に居たことがある。


 

題齊安城樓    唐 杜 牧

杜牧100選 全唐詩 卷五百二十二


 題齊安城樓    杜牧

嗚軋江樓角一聲,

微陽瀲瀲落寒汀。

不用憑闌苦回首,

故郷七十五長亭。

 齊安城樓あんせいじょうろうだいす  杜牧とぼく

嗚軋おあつたり 江樓こうろうの 角一聲かくいっせい

微陽びよう 瀲瀲れんれんとして 寒汀かんてい

らんりて ねんごろに 回首かいしゅするを もちいず

故郷こきょう 七十五長亭ななふうごちょうてい


字句解釈


詩の鑑賞