第17回講義 音声を聞くにはプラグインが必要です。 (ブラウザの設定にもよりますが音声を聞くには 「ブロックされているコンテンツを許可」し、 スタートボタンをクリックしてください。) |
杜 甫 作詩の背景 |
|
|
字句解釈 |
貧交行 まずしいまじわりのうた。「行」は歌のこと。楽府。古詩が多い。この詩も古詩。 飜 「翻」と同じ。ひるがえる。ひらひらする。ここでは手を上に向けること。 覆 書き下しに2説ある。①フク 屋韻 「くつがえす」 ひっくりかえす ②フ 宥韻「おおう、ふせる」 かぶせる ①説 簡野道明、鈴木虎雄、 山田勝美 ②説 石川忠久、吉川幸次郎 (参考故事) 覆水不返盆(ふくすいぼんにかえらず) 太公望 斉 (江戸川柳) 釣れますかなどと文王そばにより 紛紛 乱れるさま。乱れ飛ぶさま。 何須數 「何」なんぞ 反語。 「須」①もちいる 必要がある ②すべからくーーすべし。 ここでは①で、数える必要があろうか、いやない。 君不見 漢詩では、「きみみず」ではなく「きみみずや」で、反語。 管鮑 「管仲」と「鮑叔」。 |
詩の鑑賞 |
この詩は、752年、杜甫41歳、の作とされている。このころ杜甫は仕官ができず経済的にも苦しかった。 安禄山の乱前で、世の乱れ、軽薄さをなげいている。自分を管仲になぞらえて、まだまだ今に見ていろという意気込みが見られる。 |
詩 吟 曲 江 二首 その二 唐 杜 甫 漢詩を楽しむ 23頁 漢詩鑑賞辞典 304頁 全唐詩 巻二百二十五 |
|
|
題長安主人壁 唐 張 謂 漢詩鑑賞辞典 360頁 全唐詩 卷一百九十七 |
|
|
字句解釈 |
題 書き付ける。 張 謂 須 もちう。必要とする。 縱令 たとい。「縱」1字でも「たとい」である。 然諾 承知する。よしよし。 相許 「相」は「互いに」という意もあるが、普通は「相手に対して」の意。 悠悠 ①ひま、ゆったり。②無関心なさま。③遠く遙かなさま。④愁い悲しむさま。ここでは②。 |
詩の鑑賞 |
杜甫に遅れること9年、721年生まれの張謂の作。この詩は七言絶句ではない(起句詩も連)。 杜甫の曲江と同時期の殺伐とした世相がダイレクトに詠まれている。あまりに直接的で、漢詩としては余韻に乏しい。 |
贈喬琳 唐 張 謂 全唐詩 卷一百九十七 |
|
|
字句解釈 |
喬琳 人名。 上策不見收 科挙の試験に応じたが合格しなかった。科挙には詩賦と策論が科せられる。 見 受け身の助動詞。 寄食 居候(いそうろう)。 淹留 ひさしくとどまる。 便 すなわち。すぐに、たやすく。 五侯 おえらがた。公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵。 不愛客 李適之の「朝退」にあるようにように、門を開いて客を迎えることがなくなった。暗に李林甫を揶揄している。 七貴 七つの貴族。漢朝の流れをくむ顕要。 過 よぎる。訪問する。 丈夫 男一匹。 會 必ず。 知己 己を知る人。 悠悠 ①ひま、ゆったり。②無関心なさま。③遠く遙かなさま。④愁い悲しむさま。ここでは②。 |
兵車行 唐 杜 甫 漢詩鑑賞辞典 288頁 全唐詩 卷二百一十六 |
|
|
字句解釈 |
兵車行 戦車の歌。 轔轔 がたが鳴るさま。 蕭蕭 寂しいさま。 耶娘 行人(兵隊)のお父さんとお母さん。 咸陽橋 長安の北にある橋の名前。 頓足 足をばたばたさせる。 道傍過者 道端にいる者、自分杜甫のこと。 點行 徴兵。 營田 屯田兵。 里正 村長。 裹頭 頭を包む。元服させる。 武皇 漢の武帝。当代玄宗を憚って、漢代になぞらえている。 山東二百州 華山・函谷関以東の大平原、中国の心臓部。 荊杞 「いばら」と「かわやなぎ」。雑草。 鋤犁、禾、隴畝 すき、稲、あぜ。 青海 海抜3000mの中国第1の大湖。 煩冤 もだえくるしむ。 新鬼・舊鬼 新しく死んだ人の魂・昔死んだ人の魂。 啾啾 小声で悲しげに泣く声、また、死者の魂が泣く声。 |
詩の鑑賞 |
杜甫が公憤を詠った最初の詩。当時の悲惨な状況がよく読み籠めれている。 但し、杜甫の公憤は革命的ではなく体制内の公憤である。 |
韻・平仄 |
車轔轔、馬蕭蕭、 行人弓箭各在腰。 耶娘妻子走相送、 塵埃不見咸陽橋。 牽衣頓足闌道哭、 哭聲直上干雲霄。 道傍過者問行人、 行人但云點行頻。 或從十五北防河、 便至四十西營田。 去時里正與裹頭、 歸來頭白還戍邊。 邊亭流血成海水、 武皇開邊意未已。 君不聞漢家山東二百州、 千村萬落生荊杞。 縱有健婦把鋤犁、禾生隴畝無東西。 況復秦兵耐苦戰、被驅不異犬與雞。 長者雖有問、役夫敢伸恨。 且如今年冬、未休關西卒。 縣官急索租、租税從何出。 信知生男惡、反是生女好。 生女猶得嫁比鄰、生男埋沒隨百草。 君不見青海頭、古來白骨無人收。 新鬼煩冤舊鬼哭、天陰雨濕聲啾啾。 |