第34回講義 音声を聞くにはプラグインが必要です。 (ブラウザの設定にもよりますが音声を聞くには 「ブロックされているコンテンツを許可」し、 スタートボタンをクリックしてください。 尚、Windows10標準のブラウザーedgeでは音声再生ができません。 internetexplorer11をご使用ぐださい。) |
白居易 作詩の背景 |
「白楽天年譜」 「唐王朝年表」 |
白楽天年譜1 772年 1歳 ~800年 29歳 白楽天年譜2 801年 30歳 ~815年 44歳 白楽天年譜3 816年 45歳 ~826年 55歳 白楽天年譜4 827年 56歳 ~839年 68歳 白楽天年譜5 842年 71歳 ~846年 75歳 唐王朝年表1 618年 高 宗 ~779年 代 宗 唐王朝年表2 779年 徳 宗 ~907年 哀 宗 |
|
|
字句解釈 |
白須 白いひげ。 第七旬 旬は念。第七十年 五朝 806年(憲宗)~842年(文宗)、白居易のつかえた5つの朝廷。政争が多く、いずれも短命。 他藍尾酒 他(か)は「あの」、藍(らん)は「むさぼる」。例の一座の最後に飲む酒。 收得 收身、官界から身を引くこと。自分の身を取り返す。 到頭 とうとう、とどのつまり。 銷磨 けす、すりへらす。 時流 その時代。 大暦 唐の代宗の治世最後に使用された元号。大暦元年(776年)~大暦14年(779年) 大暦7年生まれ。 會昌 唐代の武宗の治世で用いられた元号。會昌元年(841年)~ 會昌6年(846年) 現在、會昌2年。 | 、
詩の鑑賞 |
842年、70歳になった白居易は、長生きしたことを手放しに喜んでいる。 別に一詩あり。 達哉樂天行(全唐詩卷四百五十九 ) 未歸且住亦不惡,饑餐樂飲安穩眠。死生無可無不可,達哉達哉白樂天。 |
|
|
字句解釈 |
思黯 唐、牛僧孺の字。(参考)牛李之争 夢得 唐、劉禹錫の字。 謝家 東晋の大貴族。(参照)劉禹錫 烏衣巷 別墅 別荘、別宅。 漸 ようやく、次第に、徐々に。 屋梁 屋根、家のうつばり。 除卻 除く、却は助辞、例 滅却。 情状 ありさま、様子、又 心と形状。 更 さらに、その上に、(仄字)。 |
詩の鑑賞 |
此の詩、恐らくは文宗の大和元年(827)白居易56歳の頃の作と思われる。この前年作者は蘇州刺史を免官し、 長安、新昌里に帰り住んだ。翌大和2年には劉禹錫が主客郎中となり、大和3年には李宗閔が宰相に任じ翌大和4年には 牛僧孺が宰相に返り咲いた。 此の日、劉禹錫と共に牛僧孺の別荘に招かれ、詩の応酬を楽しんだ時のものであろう。 杜甫と違い、白居易はなかなかしたたか、世渡り上手である。嫌味なく自然に時の権力者に取り入っていら。 対句が面白い。 曉月漸沈橋脚底, 晨光初照屋梁時。 台頭有酒鶯呼客, 水面無塵風洗池。 客字が2度あり。白居易には破格の詩が結構多い。 |
|
|
字句解釈 |
弊居 私の家。 尚齒 齒は年齢。長寿をとうとぶ。 七言六韻 一句七言、六韻の排律。 七十歳 平仄の関係で「しちしんさい」と、十を平に読む。これは、白居易の創案で後世、杜牧が「江南春」でまねた。 拖紫 むらさきをひきずる。紫衣(高官の衣)を着る。 麤 粗い。 嵬峨 高い山転じて、声が高いさま、酒に酔ったさま。 婆娑 舞うさま。よっぱらってでたらめにまうさま。 二疏傅 漢書の疏廣伝 四皓圖 中国,秦の始皇帝の時,国乱を避けて,陝西の商山に入った東園公,綺里季,夏黄公,里(ろくり)先生の 4人の隠士を画題とする絵画。4人は鬚眉(しゅび)みな白かったことから,商山四皓と呼ばれた。 三山五天竺 三神山:蓬莱、方丈、瀛州(司馬遷『史記』巻百十八『淮南衡山列伝』) 五天竺:昔、天竺(インド)を東・西・南・北および中央の五地方に分けて呼んだものの総称。 人間 人間世界。 | 、
詩の鑑賞 |
白居易74歳のとき、74歳以上の長老7名が白居易宅に集まって尚歯の会を催し、長寿を祝い、詩を作った。 「尚歯会」のはじめである。 七言六韻の排律。科挙では五言六韻の詩が多い。 |
|
|
|
|
詩の鑑賞 |
2回目の「尚齒會」。 九老圖詩序 會昌五年三月。胡、吉、鄭、劉、盧、張、等六賢。於東都敝居履道坊合尚齒之會。其年夏。又有二老。年貌絶倫。同歸故 郷。亦來斯會。續命書姓名年齒。寫其形貌。附於圖右。與前七老。題爲九老圖。仍以一絶贈之。二老謂洛中遺老李元 爽。年一百三十六歸洛。僧如滿。年九十五歳。 雪作鬚眉雲作衣, 遼東華表暮雙歸。 當時一鶴猶稀有, 何況今逢兩令威。 會昌五年三月。 胡、吉、鄭、劉、盧、張、等六賢。 東都敝居履道坊に於て 尚齒之會に合う。 其の年の夏。又 二老有り。年貌絶倫。 同く故郷に歸る。 亦た斯の會に來たる。 續けて姓名年齒を書かしむ。 其の形貌を寫し。 圖の右に附す。 前の七老と與。 題して九老圖と爲す。 仍て一絶を以て之を贈る。 二老は謂う洛中の遺老 李元爽。 年一百三十六歸洛。僧如滿。 年九十五歳。 雪は鬚眉を作し 雲は衣を作す 遼東の華表 鶴雙び歸る 當時一鶴すら猶お有ること稀なり 何ぞ況んや 今兩令威に逢うをや |
|
|
字句解釈 |
玉爐熏 ? 鑿落 さかずき。 氤氳 さかんなこと。 搜神 こころをさぐる。 齊年 としをひとしくす。科挙合格の同期。 同事 おなじくつかえる。 | 、
詩の鑑賞 |
尚齒會参加者の一詩。 |
|
|
字句解釈 |
偕老 ともにおいる。 甥姪 甥は姉妹の子、姪は兄弟の子。日本のおい、めいと逆。 (参考)韓愈 左遷至藍關示姪孫湘 五十千 五万。 聚居 集まって居る。 粥美嘗新米,袍温換故綿 平仄の関係で言い方が逆になっている。(参考)送王十八歸山寄題仙遊寺 濩落 がらんとしているさま。謙遜語。 眷屬 一族。 榻 長椅子。 青帳 青いカーテン。 湯 薬湯。 詩債 贈詩に対するお返しの詩。 書 四書、論語・孟子・大学・中庸。 支分 処置する。 | 、
詩の鑑賞 |
白居易の絶筆、75歳の作。五言8韻の排律。この年の夏、この世を去った。 子供がなかったこと以外はすべて順調、権力者とも適当に対応した、満足な一生であった。 人生の達人である。 |
|
|