第28回講義

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2016.09.29 録音

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白居易 作詩の背景




「白楽天年譜」

白楽天年譜1 772年 1歳 ~800年 29歳
白楽天年譜2 801年 30歳 ~815年 44歳
白楽天年譜3 816年 45歳 ~826年 55歳


中国文学地図

地名  長安  江州(九江)  四川省(成都)  剣閣  重 慶  夔州(きしゅう)  三 峡
川名・湖名  長江  黄河  淮河  渭水


「人名・用語・書名」

人名  元 稹  武元衡  徳 宗  順 宗  憲 宗  呉元済  安禄山
用語  科挙  宦官  安史の乱  節度使  刺史  進士

     

 
再掲

立 暮  唐 白居易
漢詩鑑賞辞典476頁 全唐詩卷四百三十七


 立 暮  白居易

黄昏獨立佛堂前,

滿地槐花滿樹蝉。

大抵四時心總苦,

就中腸斷是秋天。


 くれつ  白居易はくきょい

黄昏こうこん ひとぐつ 佛堂ぶつどうまえ

滿つる 槐花かいか 滿つるせみ

大抵たいてい 四時しじ こころすべくるしきに

就中なかんずく はらわたたたるるは 秋天しゅうてん

字句解釈

黄昏   たそがれ。

佛堂   母を祀った仏堂。

槐   えんじゅ。あかしやににる。花は白、黄色。

大抵   おおよそ、おおかた。多分(perhaps)ではない。

四時   1年、春夏秋冬。1月、晦(かい)・朔(さく)・弦(げん)・望(ぼう)。1日、黄昏(こうこん)(午後8時)・後夜(ごや)(午前4時)・早晨(そうじん)(午前10時)・晡時(ほじ))(午後4時)。

苦   かなしい。

就中   とりわけ。

腸斷    故事あり


詩の鑑賞

白居易四十歳のとき、母(陳氏)が亡くなり、長安東方70~80Kmの下邽(かけい)で3年の喪に服することになった。 これまでの詩と趣が変わって、この世の哀愁が詠われている。


 
再掲

村 夜  唐 白居易
漢詩鑑賞辞典478頁 全唐詩卷四百三十七


 村 夜  白居易

霜草蒼蒼蟲切切,

村南村北行人絶。

獨出門前望野田,

月明蕎麥花如雪。


 村夜暮そんや  白居易はくきょい

霜草そうそう 蒼蒼そうそうとして 蟲切切むしせつせつ

村南そんなん村北そんほく 行人絶こうじんた

ひとり 門前もんぜんでて 野田やでんのぞめば

月明つきあきらかに 蕎麥きょうばく はなゆきごと

字句解釈

蒼蒼   ①さかんなさま。②おいたさま。③草木のあおあおとしたさま。④天、月があおい。⑤草木の盛んなさま。ここでは②、③。

切切   ①つとめはげむ。②声がほそいくたえない。ここは②.。

蕎麥   そば。


詩の鑑賞

寂しい情景。戸隠によく似た情景がある。


 
再掲

慈烏夜啼  唐 白居易
漢詩鑑賞辞典479頁 全唐詩卷四百二十四


 慈烏夜啼  白居易

慈烏失其母,

啞啞吐哀音。

晝夜不飛去,

經年守故林。

夜夜夜半啼,

聞者為沾襟。

聲中如告訴,

未盡反哺心。

百鳥豈無母,

爾獨哀怨深。

應是母慈重,

使爾悲不任。

昔有呉起者,

母歿喪不臨。

嗟哉斯徒輩,

其心不如禽。

慈烏複慈烏,

鳥中之曾參。


 慈烏夜啼じうやてい  白居易はくきょい

慈烏じう ははうしな

啞啞ああとして 哀音あいおんを 

晝夜ちゅうやり らず

經年けいねんけいねん 故林こりんを まも

夜夜よよ 夜半やはんに きく

もの ためえりうるお

聲中せいちゅう 告訴こくそするがごと

いま反哺はんぽこころつくさずと

百鳥ひゃくちょう 母無ははなからんや

爾獨なんじひとり 哀怨あいえんふか

まされ ははいつくしみおもうして

なんじ使して かなしえざらしむるなるべし

むかし 呉起ごきなるものあり

母歿ははぼっして そうのぞまず

嗟哉ああ 徒輩とはい

こころ きんかず

慈烏じう 複慈烏またじう

鳥中ちょうちゅう曾參そうしんたり


字句解釈

慈烏   =慈鴉。からす。

啞啞   ああ、鴉の泣き声。

經年   ながいあいだ。

反哺   哺はくちうつしにあたえること。

應   まさにーーべし。推量。であろう。

呉起   人名。孫呉と並び称される兵法家。

嗟哉   かなしいかな。>

曾參   人名。弟子が孝経を書いた。西安の碑林に孝経の立派な石碑がある。


詩の鑑賞

五言古詩。4句で1節をなす。平仄、下3連などの規則は問わない。韻はふむ。この詩は一韻到底である。 鴉に託して自分の母に対する心を詠っている。


 
再掲

燕詩示劉叟  唐 白居易
漢詩鑑賞辞典471頁 全唐詩 卷四百二十四


 燕詩示劉叟  白居易

叟有愛子 背叟逃去
叟甚悲念之 叟少年時
亦嘗如是 故作燕詩以諭之

梁上有雙燕,

翩翩雄與雌。

銜泥兩椽間,

一巣生四兒。

四兒日夜長,

索食聲孜孜。

青蟲不易捕,

黄口無飽期。

觜爪雖欲敝,

心力不知疲。

須臾十來往,

猶恐巣中饑。

辛勤三十日,

母痩雛漸肥。

喃喃教言語,

一一刷毛衣。

一旦羽翼成,

引上庭樹枝。

舉翅不回顧,

隨風四散飛。

雌雄空中鳴,

聲盡呼不歸。

卻入空巣裏,

啁啾終夜悲。

燕燕爾勿悲,

爾當返自思。

思爾為雛日,

高飛背母時。

當時父母念,

今日爾應知。

 燕詩劉叟えんしりゅうそうしめす  白居易はくきょい

そう愛子あいしり  そうそむきて逃去にげさ
そうはなはかなしみこれおもう  そう少年しょうねんとき
かつかくごとし  ゆえ燕詩えんしつくもつこれさと

梁上りょうじょうに 雙燕そうえん

翩翩へんぺんたり おすmwす

どろふくむ 兩椽りょうてんかん

一巣いっそう 四兒しじしょう

四兒しじ 日夜長にちやちょう

しょくもとめて こえ孜孜ししたり

青蟲せいちゅう とらやすからず

黄口こうこう 

觜爪しそう やぶれんとるといえど

心力しんりょく つかれたず

須臾しゅゆにして たび來往らいおう

おそる 巣中そうちゅう

辛勤しんきん 三十日さんじゅうにち

母痩ははやせ 雛漸ひなようやこえたり

喃喃なんなんとして 言語げんごおし

一一いちいち 毛衣もうい

一旦いったん 羽翼うよくれば

あげる 庭樹ていじゅえだ

はねあげて 回顧かいこせず

かぜしたがい 四散しさんして

雌雄しゆう 空中くうちゅう

聲盡こえつきて べどもかえらず

かえる 空巣くうそううち

啁啾ちょうしゅうして 終夜しゅうやかなしむ

燕燕えんえん なんじかなしむことかれ

なんじまさに かえってみずかおもうべし

おもなんじ ひなりし

たかび ははそむきしとき

當時とうじの 父母ふぼおもい

今日こんじつ なんじまさるべし


字句解釈

雙燕   二羽のつばめ。

兩椽   日本のたるき。「のき」は檐、簷(えん)。

孜孜   つとめはげむ。ピーピー啼く。

觜爪   くちばしとつめ。

須臾   短い時間。

漸   しだいに。(やっとではない。)

喃喃   ぺちゃくちゃとしゃべり続けること。「喋喋喃喃」小声で親しげに話し合うさま。また、男女がむつまじく語り合う さま。

啁啾    かなしげになく。

爾當返自思    當 当然のまさにーーべし。

今日爾應知 應 まさにーーべし。推量のまさに。


詩の鑑賞

五言古詩。4句で1節をなす。燕に託して自分の母に対する心を詠っている。
韻は支、微の通韻。
雌(支)兒(支)孜(支)期(支)疲(支)饑(微)肥(微)衣(微)枝(支)飛(微)歸(微)悲(支)悲(支)思(支)時(支)知(支)。
燕に託して自分の母に対する心を詠っている。
「親孝行したいときには親はなし墓に布団も着せられず」


 

題嘉陵驛  唐 武元衡
唐詩選下196頁 全唐詩卷三百一十七


 題嘉陵驛  武元衡

悠悠風旆繞山川,

山驛空蒙雨似煙。

路半嘉陵頭已白,

蜀門西上更青天。


 嘉陵驛かりょうえきだいす  武元衡ぶげんこう

悠悠ゆうゆうたる 風旆ふうはい 山川さんせんめぐ

山驛さんえき 空蒙くうもう あめけむり

みち 嘉陵かりょうなかばに かしらすでしろ

蜀門しょくもん 西上せいじょう さら青天せいてん


字句解釈

嘉陵驛    剣門山近くの嘉陵の宿場

風旆   錦の御旗

蜀門   蜀国(成都)の門。


詩の鑑賞

武元衡が剣南西川節度史として成都鎮圧に向かった時の詩。



 

初貶官過望秦嶺  唐 白居易
漢詩を楽しむ89頁 全唐詩卷四百三十八


 初貶官過望秦嶺  白居易

草草辭家憂後事,

遲遲去國問前途。

望秦嶺上回頭立,

無限秋風吹白鬚。


 はじめかんおとされて望秦嶺ぼうしんれいぐ  白居易はくきょい

草草そうそう いえし 後事こうじうれ

遲遲ちち くにり 前途ぜんと

望秦嶺上ぼうしんれいじょう こうべめぐらしててば

無限むげん秋風しゅうふう 白鬚はくしゅ


字句解釈

初貶官   官をやめさせられてすぐ。(最初の左遷の意ではない。)

望秦嶺   秦嶺山脈。秦(秦国)を望む山。

草草   あわてるさま。あわただしいさま。

後事   ①あとのこと。②死後のこと。ここは①。

遲遲   物事の進まないさま。気の進まぬさま。

白鬚   あごひげ。ひげには3種あり。鬚(しゅ):あごひげ、髭(し):くちひげ、髯(ぜん):ほほひげ。

 白居易肖像


詩の鑑賞

江州(九江)に左遷されたときの詩。あわただしい中にも、起句、承句は見事な対句となっている。 平仄まで逆になっている。踏み落とし。



 

左遷至藍關示侄孫湘  唐 韓 愈
漢詩を楽しむ88頁 全唐詩卷三百四十四


 左遷至藍關示侄孫湘  韓 愈

一封朝奏九重天,

夕貶潮州路八千。

欲為聖朝除弊事,

肯將衰朽惜殘年。

雲橫秦嶺家何在,

雪擁藍關馬不前。

知汝遠來應有意,

好收吾骨瘴江邊。


 左遷させんされて藍關らんかんいた侄孫てつそんしょうしめす    韓 愈かんゆ

一封いっぷう あしたそうす 九重きゅうちょうてん

ゆうべには潮州ちょうしゅうへんせらる 路八千みちはっせん

聖朝せいめいため弊事へいじのぞかんとほつ

あえ衰朽すいきゅうもつて 殘年ざんねんおしまんや

くも秦嶺しんれいよこたわり いえいずくにか

くも藍關らんかんようして うますすまず

る 汝遠なんじとおたる まさ意有いあるべし

し 吾骨わがほねおさめよ瘴江しょうこうほとり


字句解釈

韓愈   中唐の大詩人。李白、杜甫と韓愈、白居易はまるで生まれ変わりのような関係にある。
李白701ー762、杜甫712-770、韓愈768-824、白居易772-846。

侄孫   兄弟の孫。ここでは韓愈の兄の孫。

藍關   秦嶺山脈中の関所、藍田關

一封朝奏   憲宗の拝佛に対し、「論佛骨表」を奉り、 広東省と福建省の中間の潮州に左遷された。

路八千   八千里=500m*8000里=4000km、直線距離2000km。

聖朝   憲宗皇帝。

馬不前   乃木希典「金州城作」に用例あり。

瘴江   毒気の川。

詩の鑑賞

韓愈が819年潮州に左遷された時の詩。左遷の詩の代表的作品。
韓愈は儒教、白居易は仏教。白居易の詩より悲痛である。
翌年憲宗が毒殺され、韓愈は長安に呼び戻された。



 

舟中讀元九詩  唐 白居易
漢詩鑑賞辞典482頁 全唐詩卷四百三十八


 舟中讀元九詩  白居易

把君詩卷燈前讀,

詩盡燈殘天未明。

眼痛滅燈猶暗坐,

逆風吹浪打船聲。


 舟中しゅうちゅう元九げんきゅうを む    白居易はくきょい

きみ詩卷しかんとつて 燈前とうぜん

詩盡しつき 燈殘ともしびざんして 天未てんいまけず

眼痛めいたみ 燈滅ともしびめつして あんせば

逆風ぎゃくふう なみいて 船聲せんせい


字句解釈

元九   元 稹

殘   ①おとろえる。②のこる。ここは①で読みたい。


詩の鑑賞

九江左遷の途中、長江船上の詩。
詩:2回、燈:3回使用されている。ただし、燈前、燈殘、燈滅と時系列の用法は絶妙である。
逆風は政局の逆風を暗示する。



 

聞樂天授江州司馬  唐 元 稹
漢詩を楽しむ81頁 全唐詩卷四百一十五


 聞樂天授江州司馬  元 稹

殘燈無焔影幢幢,

此夕聞君謫九江。

垂死病中驚坐起,

暗風吹雨入寒窗。


 樂天らくてん江州司馬ごうしゅうしばさずけられるをく    元 稹げんしん

殘燈ざんとう ほのうく 影幢幢かげとうとうたり

ゆうべ きみ九江きゅうこうたくせられしを

垂死すいしの 病中びょうちゅう おどろいて坐起ざきすれば

暗風あんぷう あめいて 寒窗かんそう


字句解釈

元九   元 稹

謫   左遷。

殘燈   燃え尽きかけたともしび。

幢幢   ゆらゆら。

垂死   死になんなんとす。死にそう。

坐起   起き上がって座りなおす。


詩の鑑賞

白居易の左遷されたことを聞いた元九の作。このとき、元九も左遷の身で、 忠州の西北山中120km通州の 司馬であった。
此の詩に対する白居易の感想「此句他人 尚不可聞 況僕心哉 至今毎吟 猶惻惻耳」
(この句他人尚聞くべからず 況や僕の心おや 今に至るも吟ずるごとに 猶お惻惻たるのみ)。
二人の友情溢れる詩である。



 

再掲


香爐峰下新卜山居草堂初成偶題東壁   唐 白居易
漢詩を楽しむ18頁 漢詩鑑賞辞典499頁  全唐詩卷四百三十九


 香爐峰下新卜山居
 草堂初成偶題東壁  白居易

日高睡足猶慵起,

小閣重衾不怕寒。

遺愛寺鐘欹枕聽,

香爐峰雪撥簾看。

匡廬便是逃名地,

司馬仍為送老官。

心泰身寧是歸處,

故郷何獨在長安。


 香爐峰下こうろほうかあらた山居さんきょぼく
 草堂そうどうはじめてたまたま東壁とうへきだいす   白居易はくきょい

日高ひたかねむれるもくるにものう

小閣しょうかくきんかさねてさむさをおそれず

遺愛寺いあいじかねまくらそばだてて

香爐峰こうろほうゆきすだれかかげて

匡廬きょうろ便すなわのがるるの

司馬しばろうおくるの官為かんた

心泰こころやす身寧みやすきは するところ

故郷こきょうなんひと長安ちょうあんのみにらんや


字句解釈

香爐峰     廬山にある香爐の形をした山。独立峰ではなく連山。 廬山の廬はいおり。廬山には李白も一時いたことがある。

卜山居    卜はうらなう。卜居は家を建てること。

草堂     草ぶきの粗末な家、自分の家。

題     書きつける。

初成     初めてできたのではなく、できたばかりの意。

猶慵起     起きるのが面倒だ。

小閣     二階建ての小さな家。閣は2階建。

重衾     衾(しとね)はどてら、か。

香爐峰雪撥簾看     清少納言 枕草子 第二百九十九段 
「雪のいと高う降りたるを例ならず御格子まゐりて、炭びつに火おこして、物語などして集まりさぶらうに、 「少納言よ、香炉峰の雪いかならむ。」と仰せらるれば、御格子上げさせて、御簾を高く上げたれば、 笑はせたまふ。人々も「さることは知り、歌などにさへ歌へど、思ひこそよらざりつれ。 なほ、この官の人にはさべきなめり。」と言ふ。」

欹枕     枕をちょっと立てる。

匡廬     廬山のこと。

逃名     名声など俗世間のことから逃れた。

司馬     長官は刺史、司馬はその補佐。本来は馬を司る官だが実際は左遷された人の閑職。

歸處     落ち着くところ。

     

詩の鑑賞

中唐の大詩人、白居易(号は白楽天)の詩の中で日本人に最もよく知られた詩である。
44歳の時に長安の宮廷の派閥闘争に敗れて左遷の身となり、司馬となって蘆山に居をなした時の詩であり 不遇の身の屈折した感情が読み取れる。
心中に憤懣が渦巻いているがそれを表に出さず、閑職の朝寝を幸いとして落ち着くところは長安のみではなかろうと嘯いている。
悪く言えば負け惜しみ、よく言えば精神の強さがあり、孟浩然、杜甫とはまた違った趣がある。



 

不出門  日本 菅原道真
漢詩を楽しむ119頁 


 不出門  菅原道真

一従謫落在柴荊

萬死兢兢跼蹟情

都府樓纔看瓦色

観音寺只聴鐘聲

中懐好逐孤雲去

外物相逢満月迎

此地雖身無檢繋

何爲寸歩出門行


 不出門門を出でず    菅原道真すがわらみちざね

ひとたび謫落して柴荊さいけい

萬死兢兢ばんしきょうきょうたり 跼蹟きょくせきじょう

都府樓とふろうわずかに瓦色がしょく

観音寺かんのんじただ鐘聲しょうせいくのみ

中懐ちゅうかい孤雲こうんいて

外物がいぶつ満月まんげつ相逢あいおうてむか

 檢繋けんけいしといえど

何爲なんすれ寸歩すんぽもんでてかん


字句解釈

跼蹟情   背をかがめて平身低頭するおもい。


詩の鑑賞

菅原道真の大宰府での?。「都府樓纔看瓦色 観音寺只聴鐘聲」に白居易の影響が見える。



 

訪陶公舊宅  唐 白居易
全唐詩卷四百三十


 訪陶公舊宅  白居易

予夙慕陶淵明爲人、
往歳渭川閑居、
嘗有倣陶體詩十六首。
今遊盧山經柴桑、
過栗里、思其人、
訪其宅、不能黙黙、
又題此詩云。

垢塵不汚玉,

靈鳳不啄膻。

嗚呼陶靖節,

生彼晉宋間。

心實有所守,

口終不能言。

永惟孤竹子,

拂衣首陽山。

夷齊各一身,

窮餓未為難。

先生有五男,

與之同饑寒。

腸中食不充,

身上衣不完。

連徴竟不起,

斯可謂真賢。

我生君之後,

相去五百年。

毎讀五柳傳,

目想心拳拳。

昔嘗詠遺風,

著為十六篇。

今來訪故宅,

森若君在前。

不慕尊有酒,

不慕琴無弦。

慕君遺榮利,

老死此丘園。

柴桑古村落,

栗裏舊山川。

不見籬下菊,

但餘墟中煙。

子孫雖無聞,

族氏猶未遷。

毎逢姓陶人,

使我心依然。


 陶公とうこう舊宅きゅうたくたずぬ     白居易はくきょい

 つと陶淵明とうえんめい爲人ひととなりしたい、
往歳おうさい 渭川いせん閑居かんきょして、
かつて、 「陶體とうたいなら十六首じゅうろくしゅり。
いま 盧山ろざんあそび、柴桑さいそう
栗里りつりぎり、ひとおもい、
たくおとずれ、黙黙もくもくたるあたわず、
だいすとう。

垢塵こうじん ぎょくけがさず

靈鳳れいほう せんついばまず

嗚呼ああ 陶靖節とうせいせつ

晉宋しんそうかんうま

こころじつまもところるも

くちついあたわず

ながおもう孤竹こちく

ころも首陽山しゅようざんはらうを

夷齊いせい おのおの一身いっしん

きゅうするもいまかたしとさず

先生さんせい 五男ごなん

これ饑寒きかんともにす

腸中ちょうちゅう しょくちず

身上しんじょう ころもまつたからず

しきりにちょうせらるるもついたず

しんけんうべし

われ 君之後きみのあとに うま

相去あいさること五百年ごひゃくねん

五柳傳ごりゅうでんごと

おもいてこころ拳拳けんけんたり

むかし かつ遺風いふうえい

あらわして 十六篇じゅうろっぺん

今來きんらい 故宅こたくたず

しんとしてきみ まえるがごと

そんさけるをしたわず

きんげんきをしたわず

したう きみ榮利えいりわす

丘園きゅうえん老死ろうしするを

柴桑さいそういにしえ村落そんらく

栗裏りつりふる山川さんせん

籬下りかきく

あます 墟中きょちゅうけむり

子孫こそん こゆるしといえども

族氏ぞくしいまうつらず

とうせいとするひとごと

こころをして依然いぜんたらしむ


字句解釈

垢塵   あかやちり。

玉   美しい心。

靈鳳   おおとり。

膻   羊の生肉。汚い職にたとえた。

陶靖節   陶淵明。 靖節:清らかな節操。

孤竹子   孤竹君の子。伯夷、叔齊。

夷齊   伯夷、叔齊。

一身   独身。

五柳傳   五柳傳先生傳

拳拳   拳拳服膺。心に抱いて忘れない。「中庸」にある言葉。

森   森厳。おごそか。

不慕尊有酒,不慕琴無弦    「挂冠」参照。

籬下菊   「飲酒」参照。

依然   古を慕うさま。


詩の鑑賞

九江には陶淵明の旧家があり白居易が訪ねたとき(816年)の作。九江には3年間居た。



 

飲酒  東晋 陶 潜



 飲酒  陶 潜

結 廬 在 人 境

而 無 車 馬 喧

問 君 何 能 爾

心 遠 地 自 偏

採 菊 東 籬 下

悠 然 見 南 山

山 気 日 夕 佳

飛 鳥 相 与 還

此 中 有 真 意

欲 弁 已 忘 言




 飲酒いんしゅ    陶 潜とうせん

いおりむすびて人境じんきょう

しか車馬しゃばかしましき

きみなんしかると

心遠こころとおければ地自ちおのずかへんなり

きく東籬とうりもと

悠然ゆうぜんとして南山なんざん

山気日夕さんきにっせき

飛鳥相与ひちょうあいともかえ

なか真意有しんいあ

べんぜんとほつしてすでげんわす


字句解釈


詩の鑑賞

「採 菊 東 籬 下」菊を浮かべて酒を飲む。菊は薬草。





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Last modified    First updated 2016/10/10