早発白帝城 唐 李 白 漢詩を楽しむ32頁、漢詩鑑賞辞典189頁、岩波唐詩選下49頁 |
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字句解釈 |
早 朝早く。李白が白帝城から三峡を下った機会は、李白の人生中に2回あった。一度は25歳で初めて長江を下った時、 もう一度は59歳、安禄山の乱に際して蜀に流罪となり、途中許されて再度長江を下ることになった時である。 いずれの時にこの詩が出来たかについては説が分かれるが、詩の雰囲気に若さが見られることから講者は前者25歳説 を採りたい。 白帝城 四川省奉節県瞿塘峡の入り口にある。漢末に公孫述が築いたとりで。 公孫述は五行説により、土徳に対して金(白)徳をとり、白帝と称した。(陰陽五行説)木火土金水、春南 西北、青赤黄白黒、青龍朱 雀白虎玄武 白帝廟写真 辞 1.ことば 2.ことわる 3.いとまごいする 4.礼をいう 5.とく(説)6.つげる(告) 7.せめる(責) 8.韻文体の一種 ここでは3.いとまごいする。 彩雲 朝焼けの雲。彩霞。 江陵 楚の国の都,郢(えい)。荊州。江陵は唐代の地名。 千里一日還 千里(500km)を一日で行くのは無理がある。白髪三千丈と同様、急流による船の速い表現。実際は3日はかかるという。 「還る」が59歳説の一つの根拠となっているが、素直に舟が帰ってきたと見てよい。 猿声 猿の鳴き声。日本の猿と違ってこのあたりの猿は悲しげに啼くという。悲しい「断腸」の故事もある。 軽舟 足の速い舟。 万重山 幾重にも重なった山々。 |
詩の鑑賞 |
この詩は、色彩感(白帝の白、彩雲の赤の対照)、躍動感(千里一日還、猿声啼不住)に溢れ、 千と一、軽と重の語句の対照が巧妙である。李白の傑作中の傑作である。 |