早発白帝城  唐 李 白

漢詩を楽しむ32頁、漢詩鑑賞辞典189頁、岩波唐詩選下49頁



2014.04.24 録音2


 早発白帝城  李 白

朝辞白帝彩雲間

千里江陵一日還

両岸猿声啼不住

軽舟已過万重山


 つと白帝城はくていじょうはつす  李白りはく

あしたす 白帝はくてい 彩雲さいうんかん

千里せんり江陵こうりょう 一日いちじつにしてかえ

両岸りょうがん猿声えんせい いてまざるに

軽舟けいしゅう すでぐ 万重ばんちょうやま 


字句解釈

早  朝早く。李白が白帝城から三峡を下った機会は、李白の人生中に2回あった。一度は25歳で初めて長江を下った時、 もう一度は59歳、安禄山の乱に際して蜀に流罪となり、途中許されて再度長江を下ることになった時である。
いずれの時にこの詩が出来たかについては説が分かれるが、詩の雰囲気に若さが見られることから講者は前者25歳説 を採りたい。

白帝城  四川省奉節県瞿塘くとう峡の入り口にある。漢末に公孫述が築いたとりで。 公孫述は五行説により、土徳に対して金(白)徳をとり、白帝と称した。(陰陽五行説)木火土金水、春南 西北、青赤黄白黒、青龍朱 雀白虎玄武  白帝廟写真

辞  1.ことば 2.ことわる 3.いとまごいする 4.礼をいう 5.とく(説)6.つげる(告) 7.せめる(責)  8.韻文体の一種 ここでは3.いとまごいする。

彩雲  朝焼けの雲。彩霞。

江陵  楚の国の都,郢(えい)。荊州。江陵は唐代の地名。

千里一日還  千里(500km)を一日で行くのは無理がある。白髪三千丈と同様、急流による船の速い表現。実際は3日はかかるという。 「還る」が59歳説の一つの根拠となっているが、素直に舟が帰ってきたと見てよい。

猿声  猿の鳴き声。日本の猿と違ってこのあたりの猿は悲しげに啼くという。悲しい「断腸」の故事もある。

軽舟  足の速い舟。

万重山  幾重にも重なった山々。


詩の鑑賞

この詩は、色彩感(白帝の白、彩雲の赤の対照)、躍動感(千里一日還、猿声啼不住)に溢れ、 千と一、軽と重の語句の対照が巧妙である。李白の傑作中の傑作である。



戻る  続く

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Last modified 2014/05/05 First updated 2014/04/28