第5回講義(その1)


春思二首其二  唐 賈 至

漢詩を楽しむ96頁

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2014.05.22 録音

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 春思二首其二   賈至

紅紛当壚弱柳垂

金花臘酒解酴醿

笙歌日暮能留客

酔殺長安軽薄児


 春思しゅんし二首にしゅ   賈至かし

紅紛しょうぜん あたって 弱柳じゃくりゅう

金花きんか臘酒ろうしゅ 酴醿とび

笙歌しょうか 日暮にちぼ かくとどく

酔殺すいさつす 長安ちょうあん軽薄児けいはくじ


字句解釈

紅紛    べにおしろい。ここでは化粧した美女、文君のこと。

当壚     壚はいろり。酒のサービスをする。

弱柳垂     弱柳はなよやかなやなぎ、柳の若い枝。が垂れている。

金花     やまぶきいろにかがやいた酒のかす。ビールのような酒で酒の糟が表面に浮いていた。

臘酒     去年の暮れに仕込んだ酒。

解酴醿     酴醿は酒の銘柄。解は菰を解く。

笙歌     笛を吹いたり歌を歌ったりすること。

酔殺     殺はころすではなく、強意の添え字。ずいぶんと酔わせる。(例)笑殺は笑い飛ばすこと。

軽薄児     おっちょこちょい。

     

詩の鑑賞

この詩は後漢時代の司馬相如卓文君について詠ったものであるが、 相如は四川省出身で李白の先輩にあたる。
文君当壚。文君新嫁(一度結婚して間もなくやもめになって再婚すること)。相如琴心(歌に託して思いをつたえる)。 相如四壁(家財道具もなにもない壁だけの貧乏な家。史記「文君夜亡奔相如、相如乃與馳帰成都。家居徒四壁立。」)。 等、相如、文君には故事来歴の話が沢山ある。
李白は成都を離れた後も終生故郷を懐かしんだ。






関連詩


少年行  唐 呉象之

唐詩選下147頁


 少年行  呉象之

承恩借猟小平津

使気常遊中貴人

一擲千金渾是胆

家無四壁不知貧


 少年行しょうねんこう   呉象之ごしょうし

おんけて 借猟しゃりょうす 小平津しょうへいしん

使つかって つねあそぶ 中貴人ちゅうきじん

一擲いってき 千金せんきん べてたん

いえに 四壁しへききもひんらず


字句解釈

承恩    上位の人の恩をうけて。

借猟     猟場を借りて狩猟をする。

小平津     地名。

使気     (漢)意気たからかに。(日)心配する、おもんばかる。

中貴人     高位の人に仕えている人。

一擲千金     千金をはらう。博打、飲み代、慈善などでどんと金をだすこと。

渾是胆     すべて義侠のこころ。

家無四壁     壁があるならまだよい、壁もない家。

不知貧     貧乏など気にもしない。

     

詩の鑑賞

相如四壁に関連する詩の例。






関連詩


古別離  唐 孟 郊

唐詩選中430頁


 古別離  孟郊

欲別牽郎衣

郎今到何処

不恨帰来遅

莫向臨邛去


 古別離こべつり   孟郊もうこう

わかれんとして ろう

ろういま 何処いずくへかいた

かえることのおそきをうらみず

臨邛りんきょうむかってることかれ


字句解釈

古別離    古い別れ話。

欲別     欲はbe going to。別れようとして。

郎    郎は夫や恋人。

臨邛    卓文君のいたところ。邛水のほとりにある。

     

詩の鑑賞

相如、文君の故事を踏まえた詩の例。






清平調詩其二  唐 李 白

漢詩を楽しむ71頁


 清平調詩其二  李白

一枝濃艶露凝香

雲雨巫山枉断腸

借問漢宮誰得似

可憐飛燕倚新粧


 清平調詩せいへいちょうし   李白りはく

一枝いっし 濃艶のうえん つゆかおりをらす

雲雨うんう 巫山ふざん むなしく断腸だんちょう

借問しゃもんす 漢宮かんきゅう たれるを

可憐かれん飛燕ひえん 新粧しんしょう


字句解釈

雲雨巫山    故事がある。出典は宋玉(そうぎょく)の「高唐賦(こうとうのふ)」(『文選所収』)。 「昔先王、高唐に遊び怠りて昼寝ぬ。夢に一婦人を見るに、自ら云う。 『我は帝の季女にして、名を瑤姫と曰う。未だ行がずして亡じ、巫山の台に封ぜられる。精魂は草となり、実は霊芝と為る。王の来たり遊ぶを聞き、願わくは枕席を薦めん』と。 王因りて之を幸す。 去らんとして乃ち言う、 『妾は巫山の陽(みなみ)、高邱の岨に在り。旦(あした)には朝雲と為り、暮には行雨と為りて、朝朝暮暮、陽台の下におらん』と。」

枉断腸     枉はまげる、むなしい。巫山の故事は悲しいことだ、それに比し今の玄宗皇帝と楊貴妃はなんと幸せなことか。

飛燕     漢時代の美人。

倚新粧     新しい衣装を着ている。

     

詩の鑑賞

この詩も四川省の伝説「巫山の夢」を読み込んだ一例である。


続く


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Last modified 2014/07/01 First updated 2014/04/28