第8回講義


第4回講義~第7回講義 李 白 復習

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2014.09.25 録音

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四川省成都(蜀国)、 司馬相如、 文選、 文君當盧、 蘇廷、





 峨眉山月歌  李白(24歳)

峨眉山月半輪秋

影入平羌江水流

夜発清溪向三峡

思君不見下渝州


 峨眉山月がびさんげつうた   李白りはく

峨眉山月がびさんげつ 半輪はんりんあき

かげは 平羌江水へいきょうこうすいってなが

よる 清溪せいけいはっして三峡さんきょうかう

きみおもえどもえず 渝州ゆしゅうくだ


三峡1、 三峡2、 白帝城、





 早発白帝城  李白(25歳)

朝辞白帝彩雲間

千里江陵一日還

両岸猿声啼不住

軽舟已過万重山


 つと白帝城はくていじょうはつす  李白りはく

あしたす 白帝はくてい 彩雲さいうんかん

千里せんり江陵こうりょう 一日いちじつにしてかえ

両岸りょうがん猿声えんせい いてまざるに

軽舟けいしゅう すでぐ 万重ばんちょうやま 


荊州、  洞庭湖、 





 秋下荊門 李白

霜落荊門江樹空

布帆無恙挂秋風

此行不為鱸魚膾

自愛名山入剡中


 あき 荊門けいもんくだる  李白りはく

しも荊門けいもんおちて 江樹こうじゅむな

布帆ふはん つつがく 秋風しゅうふう

こう 鱸魚ろぎょかいためならず

みずか名山めいざんあいして 剡中せんちゅう


襄陽、 孟浩然、 安陸、 許 圉師、





 静夜思  李白(31歳)

牀前看月光

疑是地上霜

挙頭望山月

低頭思故郷


 静夜思せいしや   李白りはく

牀前しょうぜん 月光げっこう

うたがうらくは これ地上ちじょうしもかと

こうべげて 山月さんげつのぞ

こうべれて 故郷こきょうおも


黄鶴楼1、 黄鶴楼2、





 黄鶴楼送孟浩然之広陵  李白

故人西辞黄鶴楼

烟花三月下揚州

孤帆遠影碧空尽

唯見長江天際流


 黄鶴楼こうかくろうにて孟浩然もうこうねん広陵こうりょうくをおくる  李白りはく

故人こじん 西にしのかた 黄鶴楼こうかくろう

烟花えんか 三月さんがつ 揚州ようしゅうくだ

孤帆こはん遠影えんえい 碧空へきくう

ただる 長江ちょうこう天際てんさいながるるを


越会稽、 呉蘇州、 呉筠、





 蘇台覧古  李白(42歳)

旧苑荒台楊柳新

菱歌清唱不勝春

只今惟有西江月

曾照呉王宮裏人


 蘇台覧古そだいらんこ   李白りはく

旧苑きゅうえん 荒台こうだい 楊柳ようりゅうあらたなり

菱歌りょうか 清唱せいしょう はるえず

只今ただいま ただ 西江せいこうつきのみって

かっらす 呉王ごおう宮裏きゅうりひと




 越中覧古  李白(42歳)

越王勾践破呉帰

義士還郷尽錦衣

宮女如花満春殿

只今惟有鷓鴣飛


 越中覧古えっちゅうらんこ   李白りはく

越王勾践えつおうこうせん やぶってかえ

義士ぎし きょうかえってことごと錦衣きんいすく

宮女きゅうじょ はなごと春殿しゅんでん

ただいま ただ鷓鴣しゃこるのみ


長安、 玄宗皇帝、 賀知章、 翰林供奉、





 子夜呉歌  李白(43~44歳)

長安一片月

万戸擣衣声

秋風吹不尽

総是玉関情

何日平胡虜

良人罷遠征


 子夜呉歌しやごか   李白りはく

長安ちょうあん 一片いっぺんつき

万戸ばんこ 擣衣とういこえ

秋風しゅうふう いてきず

すべこれ 玉関ぎょくかんじょう

いずれの 胡虜こりょたいらげて

良人りょうじん 遠征えんせいめん


楊貴妃、 高力士、 趙飛燕、





 清平調詞三首其一  李白

雲想衣裳花想容

春風払檻露華濃

若非群玉山頭見

会向瑶台月下逢


 清平調詞三首其一せいへいちょうしさんしゅそのいち   李白りはく

くもには衣裳いしょうおもい はなにはようおも

春風しゅんぷう かんはらいて 露華ろかまやかなり

し 群玉山頭ぐんぎょくさんとうるにあらずんば

かならず 瑶台ようだい 月下げっかいてわん




 清平調詞三首其二  李白

一枝濃艶露凝香

雲雨巫山枉断腸

借問漢宮誰得似

可憐飛燕倚新裳


 清平調詞三首其二せいへいちょうしさんしゅそのに   李白りはく

一枝いっし 濃艶のうえん つゆかおりをらす

雲雨うんう 巫山ふさん むなしく断腸だんちょう

借問しゃもんす 漢宮かんきゅう たれるを

可憐かれん飛燕ひえん 新裳しんしょう




 清平調詞三首其三  李白

名花傾国両相歓

長得君王帯笑看

解釈春風無限恨

沈香亭北倚闌干


 清平調詞三首其三せいへいちょうしさんしゅそのさん   李白りはく

名花めいか 傾国けいこく ふたつながらあいよろこ

ながく 君王くんおうの わらいをびてるをたり

春風しゅんぷう無限むげんうらみを解釈かいしゃくして

沈香ちんこう亭北ていほく 闌干らんかん


洛陽、 杜甫、 高適、 南京、 揚州







登金陵鳳凰臺  唐 李 白

唐詩選中206頁 漢詩鑑賞辞典229頁


 登金陵鳳凰臺  李白

鳳凰臺上鳳凰遊

鳳去臺空江自流

呉宮花草埋幽徑

晉代衣冠成古丘

三山半落青天外

二水中分白鷺洲

總爲浮雲能弊日

長安不見使人愁


 金陵きんりょう鳳凰台ほうおうだいのぼる   李白りはく

鳳凰台上ほうおうだいじょう 鳳凰ほうおうあそ

鳳去ほうさ台空だいむなしくして江自こうおのずからなが

呉宮ごきゅう花草かそう幽径ゆうけいうずもれ

晋代しんだい衣冠いかん古丘こきゅう

三山さんざんなか青天せいてんそと

二水にすい中分ちゅうぶん白鷺洲はくろしゅう

すべ浮雲ふうんおおうがため

長安ちょうあんえずひとをしてうれえしむ


字句解釈

鳳凰台    南京(唐代の金陵、三国時代の建業、東晋代の建康)にあった 鳳凰(めでたいとり)が来たという台。南北朝の宋(424~452)の都。

呉宮    三国呉の宮殿。

花草    花の咲いた草、美人のこと。

三山    南京郊外の三つのやま。

二水    秦淮河が白露州という中洲で二分されている。

浮雲    ①うきぐも。②はかない。③かんけいない。④人を惑わせる悪人。ここでは④の意。

日    皇帝のこと。

長安不見    「長安日辺」長安は太陽のように、非常に遠いの意。東晋初代皇帝の元帝について、 「世説新語」に故事がある。これによってこの詩に深みが出ている。

     

詩の鑑賞

李白47歳の失意の詩。七言律詩。律詩は中の4句が対句となっている。
この詩の意は最後の2句にある。高力士が皇帝を惑わせたとに対する万斛の恨みを述べている。
この詩では、「鳳」の字が繰り返し現れる。これは、崔顥「黄鶴楼」、更には、沈佺期「竜池篇」にならっている。




 


関連詩

黄鶴楼  唐 崔 顥

漢詩を楽しむ37頁 漢詩鑑賞辞典122頁


 黄鶴楼  崔顥

昔人已乗黄鶴去

此地空余黄鶴楼

黄鶴一去不復返

白雲千載空悠悠

青山歴歴漢陽樹

芳草萋萋鸚鵡州

日暮郷関何処是

煙波江上使人愁


 黄鶴楼こうかくろう   崔顥さいこう

昔人せきじんすで黄鶴こうかくじょうじて

 むなしくあます 黄鶴楼こうかくろう

黄鶴こうかく ひとたびってまたかえらず

白雲はくうん 千載せんさい くう悠悠ゆうゆう

青山せいざん 歴歴れきれき 漢陽かんようじゅ

芳草ほうそう 萋萋せいせい 鸚鵡州おうむしゅう

日暮にちぼ 郷関きょうかん いずれのところこれなる

煙波えんぱ 江上こうじょう ひとをしてうれえしむ


字句解釈



     

詩の鑑賞

崔顥は李白と同時代の人。この詩は律詩の最高峰と言われる。 李白がこれを見て黄鶴楼を詠むのを諦めて去ったという逸話がある。黄鶴が頻出する。


 


関連詩

竜池篇  唐 沈佺期

唐詩選中164頁


 竜池篇  唐 沈佺期

竜池躍竜竜已飛

竜徳先天天不違

池開天漢分黄道

竜向天門入紫微

邸第楼台多気色

君王鳧雁有光輝

爲報寰中百川水

来朝此地莫東帰


 竜池篇りゅうちへん   沈佺期ちんぜんき

竜池りゅうち りゅうおどらせて りゅうすでべり

竜徳りゅうとく てんさきだって てんたがわず

いけ天漢てんかんひらいて黄道こうどうわか

りゅう天門てんもんむかって紫微しび

邸第ていだい楼台ろうだい 気色きしょくおお

君王くんのう鳧雁ふがん 光輝こうき

ためほうぜん 寰中かんちゅう百川ひゃくせんみず

きたちょうして東帰とうきするかれ


字句解釈

天漢  天の川。

天門  宮殿の門。

紫微  天の神の宮殿。

気色  雰囲気。

寰中  世界中。

莫東帰  東に行ってはいけません、こちらに朝貢しなさい。

     

詩の鑑賞

玄宗皇帝の若い頃、興慶宮の池から竜が出たことを詠っている。竜が頻出する。重字技法、強調の一法。


 


聞王昌齢左遷竜尉遥有此寄  唐 李 白

唐詩選下 43頁


 聞王昌齢左遷竜標尉
遥有此寄  李白

楊花落尽子規啼

聞道竜標過五渓

我寄愁心与明月

随風直到夜郎西


 王昌齢おうしょうれい竜標りゅうひょう左遷させんせらるるを
はるかにあり  李白りはく

楊花ようか つくして 子規啼しきな

聞道きくならく 竜標りゅうひょう 五渓ごけいぐと

われ 愁心しゅうしんせて 明月めいげつあた

かぜしたがってただちにいたれ 夜郎やろう西にし


字句解釈

王昌齢

    左遷地に因んで王竜標とも呼ばれる。 竜標尉    竜標は左遷の地。尉は下級の官僚。

楊花    ねこやなぎの花と言うより実である。柳絮。

子規    望郷の鳥。蜀王の故事あり。特徴的な鳴き声とウグイスなどに托卵する習性で知られている (「ホトトギス目ホトトギス科」と書かれることもあるが、カッコウ目カッコウ科と同じものである)。 古来から様々な文書に登場し、杜鵑、時鳥、子規、不如帰、杜宇、蜀魂、田鵑など、異名が多い

聞道    きくならく。聞くところによると。

五渓    夜郎に到る途中の溪谷。桃源郷の近く。

愁心    哀しい、うれいの心。

明月    明るい月。名月は和語。

夜郎西    李白自身が後年、夜郎に左遷されることになる。 「夜郎自大」の故事あり。 ここの「西」にはあまり意がない,竜標が夜郎の西だ。数年後李白自身が夜郎に左遷されることになる。

     

詩の鑑賞

李白49歳の作。自分が不遇である時期に友人の左遷の報を聞いて詠んだ詩。
「随風直到夜郎西」は李白ならではの表現である。


 


哭晁卿衡  唐 李 白

漢詩を楽しむ93頁、漢詩鑑賞辞典237頁


 哭晁卿衡  李白

日本晁卿辞帝都

征帆一片繞蓬壺

明月不帰沈碧海

白雲愁色満蒼梧


 晁卿衡ちょうけいこうこくす   李白りはく

日本にっぽん晁卿ちょうけい 帝都ていと

征帆せいはん一片いっぺん 蓬壺ほうこめぐ

明月めいげつ かえらず 碧海へきかいしず

白雲はくうん 愁色しゅうしょく 蒼梧そうご


字句解釈

哭    大きな声を出して泣く。

晁卿衡    日本名 阿倍 仲麻呂。卿は役職名。

帝都    長安。

征帆一片    征帆は旅の船。蘇州から4隻の船団で船出した。「天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出し月かも」は この時の作。なお、鑑真和上もこの時の船団の中にいた。

蓬壺    海中の仙人の住む山。山海経に蓬壺島、蓬莱山とある。

明月    仲麻呂のこと。

沈碧海    難破して沈んだ。

蒼梧    伝説の皇帝舜が南方を巡視したとき死んだ場所。広東省、または、 湖南省嶺南の山の中。(明代創建の舜帝廟があるが根拠疑問)の2説あり。2人の妃が洞庭湖に身を投じたとの伝説もある。

     

詩の鑑賞

李白53歳の作。死を悼むお手本となる詩。李白、阿部仲麻呂は同い年との説もある。



 


関連詩

送秘書晁監還日本国  唐 王 維

王維詩集


 送秘書晁監還日本国
         唐 王 維

積水不可極

安知蒼海東

九州何処遠

万里若乗空

向国唯看日

帰帆但信風

鰲身映天黒

魚眼射波紅

郷樹扶桑外

主人孤島中

別離方異域

音信若爲通


 秘書晁監ひしょちょうかん日本国にほんこくかえるをおくる   王維おうい

積水せきすい きわむべからず

いずくんぞらん蒼海そうかいひがし

九州きゅうしゅう 何処いずことお

万里ばんり くうじょうずるがごと

くにむかいてただ

帰帆きはん かぜまか

鰲身ごうしん てんえいじてくろ

魚眼ぎょがん なみあか

郷樹きょうじゅ 扶桑ふそうそと

主人しゅじん 孤島ことううち

別離べつり まさいきことにす

音信いんしん 若爲いkんつうぜむや


字句解釈

積水    海のこと。土を積みて山となし、水を積て海となす。

九州    古代中国は九州からなる、或は、全世界は中国以外に九州からなる。ここでは後者の意。

鰲身    おおうみがめ。大スッポン。山海経にある。

郷樹    故郷の樹。

扶桑    伝説、東海の日の出るところの樹。山海経にある。

     

詩の鑑賞

仲麻呂の帰朝にあたり、宮中で送別の縁が催された。その時の王維の詩。 全唐詩に長い序文がある。




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Last modified 2015/08/10 First updated 2014/04/28