第9回ー1/2講義

再掲

哭晁卿衡  唐 李 白

漢詩を楽しむ93頁、漢詩鑑賞辞典237頁

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2014.10.23 録音

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 哭晁卿衡  李白

日本晁卿辞帝都

征帆一片繞蓬壺

明月不帰沈碧海

白雲愁色満蒼梧


 晁卿衡ちょうけいこうこくす   李白りはく

日本にっぽん晁卿ちょうけい 帝都ていと

征帆せいはん一片いっぺん 蓬壺ほうこめぐ

明月めいげつ かえらず 碧海へきかいしず

白雲はくうん 愁色しゅうしょく 蒼梧そうご

 


再掲

送秘書晁監還日本国  唐 王 維

全唐詩巻127  王維詩集


 送秘書晁監還日本国
         唐 王 維

積水不可極

安知蒼海東

九州何処遠

万里若乗空

向国唯看日

帰帆但信風

鰲身映天黒

魚眼射波紅

郷樹扶桑外

主人孤島中

別離方異域

音信若爲通


 秘書晁監ひしょちょうかん日本国にほんこくかえるをおくる   王維おうい

積水せきすい きわむべからず

いずくんぞらん蒼海そうかいひがし

九州きゅうしゅう 何処いずことお

万里ばんり くうじょうずるがごと

くにむかいてただ

帰帆きはん かぜまか

鰲身ごうしん てんえいじてくろ

魚眼ぎょがん なみあか

郷樹きょうじゅ 扶桑ふそうそと

主人しゅじん 孤島ことううち

別離べつり まさいきことにす

音信いんしん 若爲いkんつうぜむや






関連詩

無題  日本 阿倍仲麻呂


 無題  阿倍仲麻呂

慕義名空在

輸忠孝不全

報恩無幾日

帰国定何年


 無題むだい   阿倍仲麻呂あべのなかまろ

したむなしく

ちゅういたすもこうまつたからず

おんむくゆるに幾日いくじつ

くにかえるはさだめていずれのとし


字句解釈

無題    元題が不明のため、編纂時に無題としたのであろう。

慕義    仁義礼智信の義、人の行う道を慕ってやってきたが、

名空在    為すこともなく空しく過ごしている。謙遜。

輸忠    皇帝に対する忠、あるいは、天皇にたいする忠をなす。

報恩    親に対する恩に報いる。

定    いったい。

     

詩の鑑賞

これは望郷の詩である。仲麻呂玄宗皇帝 に帰国願いをした際の詩。皇帝はこの詩を見て帰国を許可したか。




 


関連詩

銜命使本国  日本 阿倍仲麻呂

全唐詩巻732


 銜命使本国  阿倍仲麻呂

銜命将辞国

非才忝侍臣

天中恋明主

海外憶慈親

伏奏違金闕

騑驂去玉津

蓬莱郷路遠

若木故園隣

西望憶恩日

東帰感義辰

平生一宝剣

留贈結交人


 めいふくんで本国ほんごく使つかいす   阿倍仲麻呂あべのなかまろ

めいふくんで まさくにせんとす

非才ひさい 侍臣じしんかたじけなくす

天中てんちゅう 明主めいしゅ

海外かいがい 慈親じしんおも

伏奏ふくそうして 金闕きんけつ

騑驂ひさん 玉津ぎょくしん

蓬莱ほうらい 郷路きょうろとお

若木じゃくぼく 故園こえんとな

西望せいぼうして おんおも

東帰とうきして かんずるとき

平生せいぜいの 一宝剣いちほうけん

留贈りゅうぞうす まじわりをむすびしひと


字句解釈


銜命   銜 カン ふくむ ①馬の轡 ②くわえる 銜枚カンバイ  ③命を奉ずる、ここでは③の意。 皇帝の命令で日本に使いする。(参考)含 口にいれる、哺 口に入れてかむ 

天中   天(九天)の真ん中。唐、あるいは、長安。

明主   玄宗皇帝

伏奏   平伏して願う。

金闕   宮城。闕は楼台(望楼)をもった門。

違   ①たがう、ことなる ②はなれる ③とおざかる、ここでは③。

津   港、船着き場。

騑驂    添え馬。予備の馬。高官待遇の表現。

蓬莱   東海中の仙人の住む山。方丈、瀛洲ともいう。日本もそのうちのひとつ。

若木   伝説の木。山海経にある。海の彼方、太陽の沈むところ生える木。

故園   ふるさと。

留贈   とどめおくる。

     

詩の鑑賞

この詩は、仲麻呂が帰国にあたって催された送別会の席上で披露したものではなかろうか。

全唐詩には、732巻、朝衡「銜命還国作」とある。朝は晁と同じ。

五言排律である。絶句+対句2ヶー>律詩、絶句+対句偶数個ー>排律。 この詩は4の対句をもつ。

仲麻呂の船出したのは753年である。李白がそれを知ったのは754年、54歳のころであろう。

     
 


関連詩

洛中貽朝校書衡朝
 即日本人也  唐 儲光義


全唐詩 巻138


 洛中貽朝校書衡
 朝即日本人也  儲光義

萬國朝天中

東隅道最長

朝生美無度

高駕仕春坊

出入蓬山裏

逍遙伊水傍

伯鸞遊太學

中夜一相望

落日懸高殿

秋風入洞房

屢言相去遠

不覺生朝光


 洛中らくちゅう朝校書衡ちょうこうしょこうおく
  ちょうすなわ日本人にほんじんなり   儲光義ちょうこうぎ

萬國ばんこく 天中てんちゅうちょう

東隅とうぐう みちもっともなが

ちょう ごせい はかるなし

高駕こうかして 春坊しゅんぼうつか

出入しゅつにゅうす 蓬山ほうざんうち

逍遙しょうようす 伊水いすいかたわ

伯鸞はくらん 太學だいがくあそ

中夜ちゅうや ひとたび相望そうぼう

落日らくじつ 高殿こうでんかか

秋風しゅうふう 洞房どうぼう

屢言るいげん ることとお

おぼえず 朝光ちょうこうしょうずるを


字句解釈

儲光義    仲麻呂と科挙合格同期生(開元14年、726年進士)ではなかろうか。 安禄山の乱で役人になったため乱後滅亡。

朝生   朝(仲麻呂)生まれながら、美はかるなし。仲麻呂は美男だったか。

高駕   立派な乗り物。

春坊   春宮。皇太子の居所。仲麻呂の役職は当時、左春坊司経局校書。

蓬山   昔は蓬莱山のあたりに居た。

伊水   洛河の支流。洛陽は洛河の北(陽)にある。

伯鸞   人名。後漢の人、梁鴻、伯鸞は字名。独立独歩で有名。伯鸞の竈、他人の残り火は使わない。 妻は孟光、孟光荊妻。荊のかんざし、良妻のこと。

中夜   よなか。

太學   科挙のための大学。当時は唯一の大学。

相望   天を望む。

洞房   役所の奥深い部屋、あるいは、夫人の部屋(洞房華燭)。ここでは前者であろう。

屢言    しばしばいう。

     

詩の鑑賞

五言排律。儲光義が進士同期の仲麻呂をほめて詠った詩。進士同期は一生の付き合いがあった。


 


関連詩

哭孟寂  唐 張 籍


漢詩を楽しむ93頁  全唐詩巻386


 哭孟寂   張籍

曲江院裏題名処

十九人中最年少

今日風光君不見

杏花零落寺門前


 孟寂もうしゅくこくす  張籍ちょうせき

曲江きょくこう 院裏いんりだいするところ

十九じゅうきゅう人中にんちゅう 最年少さいねんしょう

今日こんじつ 風光ふうこう きみえず

杏花きょうか 零落れいらく 寺門じもんまえ


字句解釈

題名処    合格発表の名を張り出したところ。板を榜といい、同期を同榜という。 科挙合格1位 状元 2位 榜眼(目が二つあるから。)  3位 探花(ボタンの花を看て回るから。)

     

詩の鑑賞

進士同期の友の死を悼んだ詩。



続く



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Last modified 2014/ First updated 2014/10/29