第9回講義-2/2


再掲

秋浦歌  唐 李 白

漢詩を楽しむ16頁、漢詩鑑賞辞典244頁 唐詩選中353頁 
全唐詩巻167

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2014.10.23 録音

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 秋浦歌 李 白

白髪三千丈

緣愁似箇長

不知明鏡裏

何處得秋霜


 秋浦しゅうほうた  李 白り はく

白髪はくはつ 三千丈さんぜんじょう

うれいにって かくごとなが

らず 明鏡めいきょううち

いずれのところにか 秋霜しゅうそう


字句解釈

秋浦  地名。九江と南京の中間の貴池のあたり。李白54,5歳のころの滞在地。 近くに黄山という名山がある、その西の秋浦川がある。

白髪三千丈  1丈は10尺。1尺は唐代は22.5cm。 3000丈は6000m。後宮3000人、食客3000人など、とにかく多い、驚きの表現。

緣愁  うれいによって(原因)。因縁。 日本語のよるには、依る(いらいする、よりかかる)、寄る、因る、拠る、撚る、 倚る(よりかかる)、由る、選る、憑る、などいろいろある。それぞれ使い方がある。

明鏡  美しい、明るい鏡。よく写る鏡。張九齢の用例あり。関連詩1参照


詩の鑑賞

孟浩然に遅れること12年、杜甫に先立つこと11年に生まれた大詩人。杜甫の詩聖に対し詩仙と称される。 李白酒一斗詩100編。溢れるように傑作が出来た。
この詩は李白晩年の作。李白が秋浦を訪れた機会は 、安禄山の乱の前後、54、55歳と58歳の二度ある。 この詩のできた時期については説が分かれる。
白髪三千丈  ああーー老いたなーーーー。深い嘆き。
この詩はこの一句に尽きる。

この詩は、日本人なら知らない人のいない千古の絶唱である。十七首の秋蒲歌のうちでもこの詩がっもとも 優れている。

 


 




秋浦歌十七首-1  唐 李 白

全唐詩巻167


 秋浦歌十七首-1  唐 李 白

秋浦長似秋

蕭条使人愁

客愁不可度

行上東大樓

正西望長安

下見江水流

寄言向江水

汝意憶儂不

遥伝一掬涙

爲我達揚州


 秋浦しゅうほうた十七首じゅうななしゅ  李白りはく

秋浦しゅうほ とこしえにあきたり

蕭条しょうじょうとして ひとをしてうれえしむ

客愁かくしゅう からず

きてのぼる 東大樓とうたいろう

正西せいせいに 長安ちょうあんのぞ

くだる 江水こうすいなが

げんよせて 江水こうすいむかうく

なんじ われおもうやいなや

はるか一掬いっきくなみだつた

ために 揚州ようしゅうたつせよ


字句解釈

蕭条   ものさびしい。

客愁   客は故里を離れている人。

不可度   度は「あいつはどしがたい。」のど。どうしようもない。

東大樓   東にある大きな高殿。

寄言向江水   江水に向かって言を寄す。平仄の関係で逆になっている。

儂   われ、わし。江南の俗語のようだ。

不   仄 しない。 平 いなや。ここは後者。

一掬涙    ひとすくいの涙。

達揚州    揚州に伝え、そして、長安に伝えてくれ。





 秋浦歌十七首-2  唐 李 白

全唐詩巻167


 秋浦歌十七首  唐 李 白

秋浦猿夜愁

黄山堪白頭

清溪非隴水

翻作斷腸流

欲去不得去

薄游成久遊

何年是歸日

雨涙下孤舟


 秋浦しゅうほうた十七首じゅうななしゅ  李白りはく

秋浦しゅうほ 猿夜えんやうれ

黄山こうざん 白頭はくとうたえたり

清溪せいけい 隴水ろうすいあら

かえってす 斷腸だんちょうなが

らんとっして るを

薄游はくゆう 久遊きゅうゆう

何年いずれのとし これ歸日きじつ

雨涙うるい 孤舟こしゅうくだ


字句解釈

猿夜愁    猿の鳴き声に作者が愁える、または、猿が夜、愁えている。

黄山    雪を被った黄山。その白い黄山のように自分の髪も白くなた。

清溪    清らかな谷川。

隴水    隴山から出る川。長安の西方西域の入り口にある。長安のと別れる淋しさに涙を流すところという。

翻作    清溪は、北方の寂しい川、隴水ではないが、かえっていっそう寂しく断腸の思いがする。

薄游成久遊    軽い気持ちでやってきたのだが、それが長居になってしまった。

雨涙    雨のように落ちる涙。

孤舟    一艘の船。弧は一人ぼっちの意。

     


 


 秋浦歌十七首-3  唐 李 白

全唐詩巻167


 秋浦歌十七首-3  李 白

兩鬢入秋浦

一朝颯已衰

猿聲催白髮

長短盡成絲


 秋浦しゅうほうた十七首じゅうななしゅ  李白りはく

兩鬢りょうびん 秋浦しゅうほ

一朝いっちょう さつとしてすでおとろ

猿聲えんせい 白髮はくはつもよおす

長短ちょうたん ことごといと


字句解釈

一朝   ある朝突然。

颯   ①風の吹くさま、 ②はやて、③さびしい、④おとろえる。ここでは④。

猿聲   さびしい猿の聲。

     

詩の鑑賞

秋浦歌十七首は李白54,55歳の作である。この後、56歳に人生の大動乱んが起こる。

     
 


贈汪倫  唐 李 白

漢詩鑑賞辞典 245頁


 贈汪倫  唐 李 白

李白乗舟将欲行

忽聞岸上踏歌聲

桃花潭水深千尺

不及汪倫送我情


 汪倫おうりんおくる    はく

李白りはく ふねじょうじて まさかんとほっ

たちまちく 岸上がんじょう 踏歌とうかこえ

桃花とうか 潭水たんすい ふかさ 千尺せんしゃく

およばず 汪倫おうりんの われおくるのじょう




字句解釈

汪倫    酒造りの人。

忽    思いもかけず。

踏歌    足を踏み鳴らして歌う別れの歌。

桃花潭    川の名。

     

詩の鑑賞

李白55歳の作。ちょっととぼけた面白い詩。


   


望廬山瀑布  唐 李 白

漢詩鑑賞辞典 247頁


 望廬山瀑布   李白

日照香炉生紫烟

遥看瀑布挂長川

飛流直下三千尺

疑是銀河落九天


 廬山ろざん瀑布ばくふのぞむ  李白りはく

香炉こうろらして 紫烟しえんしょう

はるか瀑布ばくふ長川ちょうせんくるを

飛流ひりゅう 直下ちょっか 三千尺さんぜんしゃく

うたがうらくはこれ 銀河ぎんが九天きゅうてんよりつるかと


字句解釈

廬山    九江の近くんの名山、高さ1474m。廬はいおり。 殷、周の時代に匡俗という仙人が草廬を作ってこもっていた。

香炉    香炉峯。後年、白居易が住んだ。

瀑布    たき。日本の瀧は ①雨の降りしきるさま ②早瀬 

紫烟    紫のもや。神仙、または、皇帝のいるところ。ここは前者。

長川    長い川が掛かっているようだ。

     

詩の鑑賞

李白56歳の作との説があるが、詩の内容が若々しいので、26歳ごろの作か?
李白は56歳の、廬山に隠棲しようとした。
ところてん さかさまに ぎんが三千尺 蕪村


   


山中與幽人対酌  唐 李 白

漢詩鑑賞辞典 249頁


 山中與幽人對酌   李白

兩人對酌山花開

一杯一杯復一杯

我酔欲眠卿且去

明朝有意抱琴來


 山中さんちゅう幽人ゆうじん對酌たいしゃくす  李白りはく

兩人りょうにん 對酌たいしゃく 山花さんかひらくじ

一杯いっぱい 一杯いっぱい また一杯いっぱい

われうて ねむらんとっすきょうしばらく

明朝みょうちょう らば こといてたれ


字句解釈

幽人    仙人。

     

詩の鑑賞

李白56歳の作であろう。仙人になろうとしたゆったりとした様子が現れている。下記、陶淵明の詩を踏まえている。
一杯一杯復一杯は24不同にの規則に合わない。

(参考)陶淵明

潜若先酔、便語客、我酔欲眠、卿可去。
せんさきわば、 便すなわきゃくげて、 われうてねむらんとっす、 けいるべし。
(宋書)

蓄素琴一張、無弦、毎有酒、適輒撫弄以寄其意。
素琴そきん一張いっちょうたくわえ、げんなし、 さけるごとに、てきすれば、 すなわち撫弄ぶろうしてってす、
(宋書)





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Last modified 2014/ First updated 2014/10/29