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杜 甫 作詩の背景 |
「杜甫年譜」 |
杜甫年譜4 764年 53歳 ~770年 59歳 |
「詩人杜甫の 足あと」 |
人名 肅宗 代宗 公孫 述 懐王 劉備玄徳 地名 四川省(成都) 重 慶 夔州(きしゅう) 三 峡 白帝城 春秋戦国時代地図 山名 大巴山 巫 山 川名 黄河 淮河 長江 用語 巫山の雲雨 |
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字句解釈 |
玉露 珠のように美しい露。 凋傷 しぼむ。しぼませる。 楓樹林 「楓」まんさく科ふう属。大木となり、秋にこうようする。 日本の「楓」かえで。「槭樹」。かえで科かえで属はべつ。(参考)杜 牧「山行」 氣蕭森 「気」は気配。「蕭森」静かで物寂しいさま。 兼天 「兼」は一緒になる意。天にとどく。 塞上 とりでのうえ。 叢菊 群生した菊。 兩開 2年開いた。二度見た。 他日涙 過去を思って流す涙。石川忠久。過去にこぼした涙。黒川洋一。 一系 ひたすらつなぐ。石川忠久。つないだままになっている。黒川洋一。 刀尺 刀と物差し。鋏と物差し。裁縫。秋になったので衣類を繕う。 砧 きぬた。石の台。衣類をついて柔らかくする。(参考)李 白「子夜呉歌」 |
詩の鑑賞 |
厳武の死により、776年杜甫は長江を下り、夔州に至り2年間滞在した。この夔州時代、2年で 400首の詩を創り、杜甫の詩は最高潮に達した。対句が見事である。 |
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字句解釈 |
楚王 懐王。 過雨 とおりあめ。 返照 2ヶの山の山影の上の日に当たった部分。 絶塞 都から遠く離れたとりで。 愁時 ①秋のこと。②時世をうれう。 豺虎 山犬と虎。悪いやつ。 南方 都にたいする南。 未招魂 呼びかえされていない魂。屈原の故事あり。帰りたいと思うが帰れない自分(杜甫)がここにいる。 |
詩の鑑賞 |
杜甫の、故郷に帰りたいのに帰れない、悲痛な叫びである。杜甫の詩の特徴であるが、前半(第1句~第4句)で情景を詠い、 後半で心情を詠っている。 |
参考 再掲 解悶十二首 唐 杜 甫 全唐詩卷二百三十 |
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字句解釈 |
解悶 悶えを解く。うさばらし。絶句12首をまとめて「解悶」と題した。 襄陽孟浩然 襄陽は孟浩然の生没の地であり、杜甫の先祖の出身地である。 即今 きょうこのごろ。 耆舊 としより。 参考「耆舊伝」 無新語 新しい言葉がない、良い詩がない。 槎頭 いかだ。いけす。 縮頸鯿 首のちじまった鯿(鮒に似た魚)。 |
詩の鑑賞 |
昔、会った孟浩然を懐かしんで詠んだ。杜甫にとっては手慰みの一首であろう。 杜甫は「耆舊伝」を読んでいて、襄陽出身の杜甫の祖先の記事も見たことであろう。 |
参考 再掲 解悶十二首其二 唐 杜 甫 全唐詩卷二百三十 |
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字句解釈 |
商胡 えびすの商人。 離別 別れのあいさつにきて去った。 揚州 江南第一の大都会。杜甫も曾てここに遊んだ。 西陵 江南、越国にある。 為問 自分のために聞くのだが。 淮南 淮河の南。 米貴賤 米価の高低。 老夫 自分のこと。 |
詩の鑑賞 |
杜甫は律詩が主であるが、暇なときにできた七言絶句12首をまとめて「解悶」とした。 |
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字句解釈 |
早 朝早く。李白が白帝城から三峡を下った機会は、李白の人生中に2回あった。一度は25歳で初めて長江を下った時、 もう一度は59歳、安禄山の乱に際して蜀に流罪となり、途中許されて再度長江を下ることになった時である。 いずれの時にこの詩が出来たかについては説が分かれるが、詩の雰囲気に若さが見られることから講者は前者25歳説 を採りたい。 白帝城 四川省奉節県瞿塘峡の入り口にある。漢末に公孫述が築いたとりで。 公孫述は五行説により、土徳に対して金(白)徳をとり、白帝と称した。(陰陽五行説)木火土金水、春南 西北、青赤黄白黒、青龍朱 雀白虎玄武 白帝廟写真 辞 1.ことば 2.ことわる 3.いとまごいする 4.礼をいう 5.とく(説)6.つげる(告) 7.せめる(責) 8.韻文体の一種 ここでは3.いとまごいする。 彩雲 朝焼けの雲。彩霞。 江陵 楚の国の都,郢(えい)。荊州。江陵は唐代の地名。 千里一日還 千里(500km)を一日で行くのは無理がある。白髪三千丈と同様、急流による船の速い表現。実際は3日はかかるという。 「還る」が59歳説の一つの根拠となっているが、素直に舟が帰ってきたと見てよい。 猿声 猿の鳴き声。日本の猿と違ってこのあたりの猿は悲しげに啼くという。悲しい「断腸」の故事もある。 軽舟 足の速い舟。 万重山 幾重にも重なった山々。 |
詩の鑑賞 |
この詩は、色彩感(白帝の白、彩雲の赤の対照)、躍動感(千里一日還、猿声啼不住)に溢れ、 千と一、軽と重の語句の対照が巧妙である。李白の傑作中の傑作である。 |
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字句解釈 |
登高 たかきにのぼる。 山に登る。 9月9日、重陽の節句。 9は奇数の最大、めでたい数。 須臾の実を飾って山に登って酒を飲む。中国の須臾は五須臾で日本の三須臾とは異なる。 魔除け。 風急 風が激しい。 落木 風で木の葉が落ちるさま。 蕭蕭 物寂しいさま。 客 常の住所から離れている人。たびびと。 潦倒 ①老衰委のさま。②穏やかでおくゆかしいさま。ここでは①. 新停濁酒杯 酒も飲めなくなった。昔はよく飲んだ。ー> 「曲 江」 |
詩の鑑賞 |
古今東西の七言絶句の最高傑作と言われる杜甫の名詩である。詩の全体が対句となっている。詩の前半は景色、後半は思い。 上を見、下を見、遠くを見、周りを見る。用意周到である。 胡応麟はこの詩を「古今七律の第一」と賞賛している。 |
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字句解釈 |
昔聞洞庭水 昔、洞庭湖についての神話伝説故事来歴を聞いた。 洞庭湖には神話伝説が多い、日本の出雲のようなところ。 呉楚 呉の国と楚の国。この辺りを総称して呉楚といい、それを揚子江が 二分しているさま。 乾坤 天地。 親朋 家族と友人。 戎馬 戦争用の馬。戦争。この年、チベット族が長安に攻め込んだ。 關山北 関所の山。北方の関山は杜甫の古里。 憑軒 軒欄(てすり)に依る。三国時代の詩に用例あり。 涕泗 涕(なみだ)と泗(はなじる)。 |
詩 形 |
五言律詩 |
詩の鑑賞 |
大暦3年、786年、杜甫57歳 夔州を去って、江陵に3ヶ月滞在の後、 その年の暮れに洞庭湖に至り、岳陽樓に上る。 この詩は、杜甫晩年の作で、対の見事な頷聯 呉楚東南拆 乾坤日夜浮 が古来絶唱とされている。 洞庭湖を詠んだ詩の双璧は、孟浩然(730頃)と杜甫(786)のこの詩である。 また、洞庭湖には神話伝説が多い。日本でいえば国引き伝説などの多い出雲がこれに近い。 詩の前半4句で情景、後半4句で心情を詠う。 |
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字句解釈 |
洞庭湖 中国第2の大湖、湖南省にあり、揚子江と接続する。ちなみに第1の 大湖は青海湖(海抜3,200m)である。 八月(現九月)は増水期にあたり、一面大湖となる。 張丞相 丞相は大臣、あるいは、総理大臣。張は張九齢であろう。張説との説もある。 張九齢は荊州の江陵に左遷されたことがある。そのころ孟浩然が訪ねて就活運動をしたようだ。 涵虚 虚空を水中にひたす。おおぞらを水浸しにする。 太清 大空。空と水が一体になる。 氣蒸 雲・霧・霞などが立ち上ること。 雲夢澤 洞庭湖とその北の大きな沼沢地。雲澤と夢澤があった。夢は暗いの意がある。前漢武帝に仕えた司馬相如 に「子虚賦」がある。賦は文章の意で、文選に録されている。「楚には7つの湖あり、広さ方900里。(1里=500m)」 岳陽城 洞庭湖の東北端にある町。城壁に取り巻かれた岳陽の町。 濟 1.わたる。2.すくう。(経世済民、「経済」ほ日本人作。) ここでは「わたる」。 舟楫 船と楫(かい)。書経に故事あり。若濟巨川用汝為舟楫。若し巨川を濟らば、汝を用いて舟楫と為さん。 解釈に「才能がない。」と「つてがない。」の2説あり。 端居 へいぼんな生活。 聖明 天子(玄宗皇帝)の徳。 坐觀 ただ何となく見る。 垂釣者 魚を釣る人。 羨魚情 魚をほしいと思う気持ち。漢書に故事あり。臨淵羨魚不如退而結網。淵に臨んで魚を羨まば、退きて網を結ぶべし。 「魚が欲しければ網を結え。」 |
詩 形 |
五言律詩 律詩は漢詩の近体詩の一。一句が五言または七言の八句からなる。各々二句ずつを一組(聯レン)とし初めから、 起聯・頷連(前聯)・頸聯(後聯)・尾聯といい、絶句の起・承・転・結にあたる。原則として第三句と第四句、 第五句と第六句が対句を構成し、押韻、五言は二・四・六・八句の末尾、七言では一・二・四・六・八句の末尾の 文字にふむ。第一句の二字めを平で始める平起式と、仄で始める仄起式とがある。唐代に定まった詩形。 (文体明弁、近体律詩)--大漢語林 七言律詩では二四不同、二六対、下三連禁止、四字目孤平不可。五言律詩では二四不同、下三連禁止、二字目の孤平不可。 テキスト138頁参照。 |
詩の鑑賞 |
この詩は、頷聯の対が見事で古来五言律詩の絶唱とされている。 氣蒸雲夢澤 波撼岳陽城 洞庭湖を詠んだ詩として、この詩と並び称されるのは杜甫の「登岳陽楼」であり、その頷聯もまた古来絶賛されている。 |
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詩の鑑賞 |
長安で華やかな宴で歌っていた李龜年に、お互い落ちぶれて、江南の地で偶然に逢った。 大暦5年(770)杜甫59歳、最晩年の作。 |
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字句解釈 |
小寒食 寒食は節のなまえ。冷たい食事。冬至から105日目、陽暦4月初。このころ、春一番など風が吹き、 火事が多いため火を禁じる日を設けた。その前後の日を小寒食といい、同じく火を禁じた。107日目が清明である。 佳辰 ①めでたい日。②天気の良い日。 強飯 強いて食べる。体に気をつけましょうの意。->王維「酌酒與裴迪」下記参照 隱几 隱 ①よる=依る ②かくす。ここは①。几は支えるもの。 蕭條 ものさびしいさま。 帶鶡冠 鶡冠 やまどりの羽のかんむり。古くは高貴の人、後には隠者の帽子。 片片 きれぎれの。綿々の対。 輕鷗 かろやかなカモメ。はやいカモメ。=軽船。 愁看 悲しみの目で看る。 |
詩の鑑賞 |
「雲白山青萬餘裏 愁看直北是長安」は杜甫の絶筆となった。 この後、杜甫は、耒陽(らいよう)で大水に遭って、食料が得られずにいるとき、県令から牛肉と白酒が贈られ、 これを食べすぎて死に至ったという。長沙の北方で死すとの説もある。大暦5年(770)59歳。 |
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字句解釈 |
禦柳 宮廷の柳。 五侯 公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵。 傳蝋燭 寒食あけに宮廷から蝋燭で火種が配られる。 |
詩の鑑賞 |
寒食の風物詩。 |
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字句解釈 |
加餐 餐を加う。食事をする。「強飯」、強いて飯を食う、と同様な用法。 |
詩の鑑賞 |
浮世のとやかくに拘泥せず、よく食うて、よく眠るがよい。 |
洞庭湖 |
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字句解釈 |
瀟湘 瀟水と湘江。 等閒 なおざり。 二十五弦 瑟五十弦。 |
詩の鑑賞 |
歸雁と神話を結び付けた一詩。作者には「湘靈鼓瑟」(五言排律)がある。 |