第44回講義

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2018.04.26 録音

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王維作詩の背景



「王維年譜」



「唐王朝年表」

王維年譜1 699年 1歳 ~727年 29歳
王維年譜2 730年 32歳 ~747年 49歳
王維年譜3 750年 52歳 ~761年 63歳

唐王朝年表1 618年 高 祖 ~779年 代 宗
唐王朝年表2 779年 徳 宗 ~907年 哀 宗


中国文学地図

地名  輞川  長安  藍田關  洛陽  襄陽
山名  秦嶺山脈(地図)  秦嶺山脈(説明)  終南山
川名・湖名  黄河  渭水  漢水


春秋列国の形勢

  


人名用語書名」

人名  王維  裴迪(はいてき)  宋之問  玄宗皇帝(李隆基)  楊貴妃 孟浩然  李林甫  高力士  楊 国忠  陶淵明  張九齢  杜甫  白居易

用語  輞川荘  商山四皓  亭(ちん)  典故(てんこ)

書名  文選(もんぜん) (原文)文選(もんぜん)

     

 

再 掲


輞川集:欹 湖    唐 王 維

全唐詩卷一百二十八


 欹 湖  王 維

吹簫淩極浦,

日暮送夫君。

湖上一回首,

青山卷白雲。



 欹 湖いこ    王 維おうい

しょういて 極浦きょくほしの

日暮にちぼ 夫君ふくんおく

湖上こじょう ひとたび回首かいしゅすれば

青山せいざん 白雲はくうん


字句解釈

欹湖   両岸に山が欹(そばだ)っているので欹湖と名付けた。

吹簫   簫は竹で作った笛。 蒙求「蕭史鳳台」、  秦州、 秦穆公
簫の参考資料(久川憲四郎さん提供)
簫と笙   資料1(簫)   資料2(ケーナ)   資料3(サンポーニャ)   資料4(尺八)
雅楽と笙   資料1   資料2

夫君   簫の上手な蕭史のような友人(あなた)。(普通は妻の夫をいう。)

白雲   白雲は仙人につきもの。(参考例)黄鶴楼


詩の鑑賞

典故を盛り込んだ、五言絶句のお手本のような一詩。





 

輞川集:柳 浪    唐 王 維

全唐詩卷一百二十八


柳 浪  王 維

分行接綺樹,

倒影入清漪。

不學禦溝上,

春風傷別離。



 柳 浪りゅうろう    王 維おうい

分行ぶんこうして 綺樹きじゅせつしの

倒影とうえい 清漪せいき

まなばず 禦溝ぎょこうほとり

春風しゅんぷうに 白雲別離べつりをいたむを


字句解釈

柳浪   沢山の柳が波のようにゆれている。

分行   ①べつべつに別れて行く。②列を分ける。ここは、②で2列にならんで。
行は①ゆく、行う。庚韻、②行い。去声、③ならび。陽韻、

接綺樹   漢文では、「綺樹に接っし。」だが、漢詩では「綺樹が接っする。」と読める。 「形容詞+名詞」と同じ。
綺は美しいあやぎぬ。(羅はうすぎぬ。)

清漪   きよらかなさざなみ。

不學   主語は柳か作者か両説あり。

禦溝   宮城の周りの川、または、堀。

春風傷別離   春は別れの季節である。(参考例)、。


詩の鑑賞

俗世間の春の別れの傷み等のない境涯を詠っている。





 

輞川集:欒家瀨    唐 王 維

全唐詩卷一百二十八


欒家瀨  王 維

颯颯秋雨中,

淺淺石溜瀉。

跳波自相濺,

白鷺驚複下。



 欒家瀨らんからい    王 維おうい

颯颯さつさつたる 秋雨しゅうううち

淺淺せんせんとして 石溜せきりゅうそそ

おどなみは おのずからそそ

白鷺はくろ おどろきてくだ


字句解釈

欒家瀨   欒は「おうち」の木。人名か?、(例)張家口 瀨は早瀬。

颯颯   ①風のさっと吹くさま、または、その音の形容。②雨の降るさま、または、その音の形容。 ここは②。

淺淺   浅い水の速く流れるさま。

石溜   岩の間の流れ。溜は「ながれる」で尤韻か?


詩の鑑賞

五言幼体。例えば、颯颯秋雨中は仄仄平仄平で二四不同となっていない。 また、淺淺石溜瀉は溜が仄なら五文字すべて仄となる。





 

輞川集:金屑泉    唐 王 維

全唐詩卷一百二十八


金屑泉  王 維

日飲金屑泉,

少當千餘歳。

翠鳳翊文螭,

羽節朝玉帝。



 金屑泉きんせつせん    王 維おうい

ひびむ 金屑泉きんせつせん

すくなくとも千餘歳せんよさいあた

翠鳳すいほう 文螭ぶんちそそ

羽節うせつ 玉帝ぎょくていちょうくだ


字句解釈

金屑泉   金のような美しい砂から湧き出る泉。

當   あたる。匹敵する、相当する。

翠鳳   鳳凰の形をし、翡翠(かわせみ)の羽で飾った駕(のりもの)。 中国に古くから信仰された女仙、西王母が乗る車。

文螭   伝説上の龍の一種。

羽節   羽の形の付いた日傘。皇帝の代理の使い。

玉帝   天の神。中国皇帝は、玉帝からの天命による。
(参考)孟子に易姓革命説あり。


詩の鑑賞

五言幼体。想像上の世界を詠んで、きれいな水をほめたたえている。





 


吟 詠    高津有二様 志村典子様


送元二使安西  唐 王 維

漢詩を楽しむ25頁 漢詩鑑賞辞典178頁 全唐詩巻二十七


 送元二使安西  王 維

渭城朝雨浥輕塵,

客舍青青柳色新。

勸君更盡一杯酒,

西出陽關無故人。


 元二げんじ安西あんせい使つかいするをおくる  王 維おうい

渭城いじょう朝雨ちょうう 輕塵けいじんうるお

客舍かくしゃ 青青せいせい 柳色りゅうしょくあらたなり

きみすすむ さらつくせ 一杯いっぱいさけ

西にしのかた陽關ようかんずれば 故人こじんからん



 

輞川集:白石灘    唐 王 維

全唐詩卷一百二十八


 白石灘  王 維

清淺白石灘,

綠蒲向堪把。

家住水東西,

浣紗明月下。



 白石灘はくせきたん    王 維おうい

清淺せいせんたる 白石灘はくせきたん

綠蒲りょくほ ほとんるにえたり

いえじゅうす みず東西とうざい

しゃあらう 明月めいげつもと


字句解釈

清淺   清らかで浅い。 (参考)「漢詩を楽しむ」75頁「迢迢牽牛星

白石灘   白い石の灘。灘は①はやせ。②す。③みぎわ。(参考)「なだ」は和語。

綠蒲   緑のがま。がまはむしろの材料。楽府に「把蒲」の用例がある。

向   ほとんど。なぜ、「ほとんど」か?「むかう」、「ちかし」でもよいか? 採取する時期に近いの意。

家住水東西   雑詩三首を踏まえる。

浣紗明月下   「西施」を踏まえる。


詩の鑑賞

転句での場面転換が見事である。
転句、結句にはいろいろな解釈があるが西施の故事を踏まえる解釈が面白いだろう。 漢詩鑑賞(詩をいかに鑑賞するか)は、鑑賞する人の自由である。




 

輞川集:北 垞    唐 王 維

全唐詩卷一百二十八


 北垞  王 維

北垞湖水北,

雜樹映朱闌。

逶迤南川水,

明滅青林端。



 北垞ほくだ    王 維おうい

北垞ほくだ 湖水こすいきた

雜樹ざつじゅ 朱闌しゅらんえいえたり

逶迤いいたり 南川なんせんみず東西とうざい

明滅めいめつす 青林せいりんたん


字句解釈

北垞   北の垞。垞は宅地。

朱闌   赤いてすり。

逶迤   曲がって行くさま。斜めに行くさま。連なって行くさま。ここは、水流の連なって流れるさま。

南川   北垞から見た南垞の水か?


詩の鑑賞






 

輞川集:竹裏館    唐 王 維

漢詩を楽しむ110頁 漢詩鑑賞辞典170頁 全唐詩卷一百二十八


 竹裏館  王 維

獨坐幽篁裏,

彈琴複長嘯。

深林人不知,

明月來相照。



 竹裏館ちくりかん    王 維おうい

ひとす 幽篁ゆうこううち

ことだんじて 長嘯ちょうしょう

深林しんりん ひとらず

明月めいげつ たっててら


字句解釈

竹裏館   竹林の中の館(やかた)、あるいは、亭(ちん)。

幽篁   静かで奥深くくらい。竹林の館の中で吟じている。

長嘯   声を長引かせて歌う。

明月來相照   相は互いにではなく単に相手をという意。 阮籍陶淵明(無限の琴)を踏まえる。また、夏目漱石の草枕に記述がある。




詩の鑑賞

王維の代表的作品。詩吟でよく詠われる。




 

輞川集:辛夷塢    唐 王 維

全唐詩卷一百二十八


 辛夷塢  王 維

木末芙蓉花,

山中發紅萼。

澗戸寂無人,

紛紛開且落。



 辛夷塢しんいお    王 維おうい

木末くずえの 芙蓉ふようはな

山中さんちゅうに 紅萼こうがくひら長嘯ちょうしょう

澗戸かんこ せきとしてひとなし

紛紛ふんぷん ひら


字句解釈

辛夷塢   辛夷の植えてある土手。
「辛夷」は日本では「こぶし」と読んでいるが、中国では紫木蓮(しもくれん)を指す。 (参考)「和漢古典植物考」寺山宏著

紅萼   赤い花びら。

澗戸   谷川沿いの家。

紛紛   みだれとぶさま。


詩の鑑賞