第57回講義

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2019.07.25 録音

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杜牧作詩の背景



「杜牧年譜」


「唐代詩人年表」


「唐王朝年表」


「中国の歴史要約」

杜牧年譜1 803年 1歳 ~839年 37歳
杜牧年譜2 840年 38歳 ~852年 50歳

唐代詩人年表1 580年 魏 徴 ~718年 賈 至
唐代詩人年表2 735年 李 頎 ~843年 魚玄機

唐王朝年表1 618年 高 祖 ~779年 代 宗
唐王朝年表2 779年 徳 宗 ~907年 哀 宗

中国の歴史要約1 
中国の歴史要約2 分裂の時代


中国文学地図

地名  揚州(地図)  揚州(解説)  南昌(宣州)  貴池  南京  江 州(九 江)  洛陽  長安

川名・湖名  淮河  鄱陽湖  長江  洞庭湖  湘江  黄河


春秋列国の形勢

周(洛陽)            楚(郢)      


人名用語書名」

人名 杜牧 杜佑 沈傳師  牛僧儒  李徳裕  煬帝  隋 文帝  王羲之

用語  監察御史  科挙  牛李の党争  節度使  刺史

書名

参考詩  淸明

     

 

再 掲


題宣州開元寺    唐 杜 牧

全唐詩 卷五百二十二


 題宣州開元寺    杜 牧

南朝謝脁城,東呉最深處。

亡國去如鴻,遺寺藏煙塢。

樓飛九十尺,廊環四百柱。

高高下下中,風繞松桂樹。

青苔照朱閣,白鳥兩相語。

溪聲入僧夢,月色暉粉堵。

閱景無旦夕,憑闌有今古。

留我酒一樽,前山看春雨。

 宣州開元寺せんしゅうかいげんじだいす  杜牧とぼく

南朝なんちょう 謝脁しゃちょうしろ東呉とうご っともふかきに

亡國ぼうこく ることこうごとく、 遺寺いじ 煙塢えんおかくる。

樓飛ろうたかきこと 九十尺きゅうじゅっしゃくろうめぐること 四百柱よんひゃくちゅう

高高こうこう 下下げげうちかぜめぐる 松桂こうけいじゅ

青苔せいたいに 朱閣照しゅかくてり、 白鳥はくちょうは ふたつながらかたる。

溪聲けいせいは 僧夢そうむり、 月色げっしょくは 粉堵ふんとかがやく。

けいること 旦夕たんせきし、 らんれば 今古ここんり。

われとどむるは 酒一樽さけいっそん前山ぜんざんに 春雨しゅんうる。


字句解釈

宣州   宣城。南京と杭州の中間にある。

開元寺   開元寺

謝脁  謝霊運(しゃ れいうん )  南北朝  烏衣巷

最深處   處は、上声韻。おる、いる、ある。この詩の押韻は仄上声である。

(参考)******************** >                                                                  
平庚上語平東上麌入陌上麌平東上麌
去御去送上麌 去遇
 
入薬上語去送上麌入陌上麌平元上麌
去御平東
************************

煙塢   塢は土手、郭。もやのかかった土手。

九十尺   1尺=27.8cm。  90尺=25m。

桂樹   金木犀、銀木犀。ニッケイ。(日本のかつらとは違う)

粉堵   堵は垣根、粉は化粧をした。白壁のこと。

無旦夕   朝夕なく、一日中。


詩の鑑賞

杜牧が宣州の長官となり、開元寺を訪ねたときの詩。



 

再 掲


郡内高齋閒望答呂法曹詩  南北朝 謝朓




 郡内高齋閒望答呂法曹詩
            謝朓

結構何迢遰,曠望極高深。

窗中列遠岫,庭際俯喬林。

日出衆鳥散,山暝孤猿吟。

已有池上酌,復此風中琴。

非君美無度,孰為勞寸心。

惠而能好我,問以瑤華音。

若遺金門歩,見就玉山岑
 郡内ぐんない高齋こうさい閒望かんぼうし、呂法曹ろほうそうこたう。
                   謝朓しゃちょう

結構けっこうは なん迢遰ちょうていたり、 曠望こうぼうは 高深こうしんきわ

窗中そうちゅうには 遠岫えんしゅうつらなり、 庭際ていさいには 喬林こうりんす。

日出ひいでて 衆鳥しゅうちょうさんじ、 山暝やまくらくして 孤猿こえんぎんず。

すで池上ちじょうしゃくり、 の 風中ふうちゅうきんあり。

きみなきにあらずんば、 だれために 寸心すんしんろうせん。

いつくしみて よくわれよみし、 おくるに瑤華ようかおんってす。

金門きんもんすつることあらば、 玉山ぎょくざんみねかれよ。


字句解釈

郡内   宣城郡。  郡県制

高齋   高い建物の書斎。

呂法曹   呂僧珍。法律顧問の呂さん。

結構   家のかまえ。

迢遰   高い。

非君美無度   君のなみはずれた美しい心がなければ。

孰為勞寸心   誰か手紙を書くという労をとろうか。

問以瑤華音   花のように美しい手紙をくださるだろうか。

若遺金門歩,見就玉山岑  もし、天子に仕えることをおやめになったときにはお出で下さい。


詩の鑑賞

宣城郡太守の官舎の高齋に、心安らかに坐して、その景色と心境をのべた。
斉王の法曹なる呂僧珍に答えた作。



 

再 掲


題宣州開元寺水閣閣下宛溪夾溪居人 唐 杜牧

全唐詩 卷五百二十二


 題宣州開元寺水閣
   閣下宛溪夾溪居人
           杜牧

六朝文物草連空,

天淡雲閑今古同。

鳥去鳥來山色裏,

人歌人哭水聲中。

深秋簾幕千家雨,

落日樓臺一笛風。

惆悵無因見範蠡,

參差煙樹五湖東。

 宣州開元寺水閣せんしゅうかいげんじすいかくだいす 
   閣下かくか宛溪えんけい けいはさみてひとらしむ
                    杜牧とぼく

六朝ろくちょうの 文物ぶんぶつ くさくうつらなり、

天淡てんあわく 雲閑くもしずかに 今古きんこおなじ。

鳥去とりさり 鳥來とりきたる 山色さんしょくうち

人歌ひとうたい 人哭ひとこくす 水聲すいせいうち

深秋しんしゅう 簾幕れんばく 千家せんかあめ

落日らくじつの 樓臺ろうだい 一笛いってきかぜ

惆悵ちゅうちょうす 範蠡はんれいるに 因無よしなく、

參差しんしたる 煙樹えんじゅ 五湖ごこひがし


字句解釈

開元寺   開元寺

水閣   水辺の楼閣。

宛溪   曲った谷。

六朝   六朝

簾幕   すだれやまく。

惆悵   嘆き悲しむ。惆と悵は同意。

無因見   見るによしなし。見る手段がない。

範蠡   範蠡

參差   長短・高低いりまじり不揃いなさま。

五湖   太湖。 五湖


詩の鑑賞

杜牧は絶句の名手である。律詩は杜甫と言われるが、杜牧の律詩もすばらしい。
この詩は、杜牧の律詩の最高峰のひとつである。それぞれの対句も見事である。
理想的生き方をした范蠡を偲んでいる。






吟 詠    三浦哲郎様

秋浦歌  唐 李 白

漢詩を楽しむ16頁 漢詩鑑賞辞典244頁 唐詩選中353頁



 秋浦歌 李 白

白髪三千丈

緣愁似箇長

不知明鏡裏

何處得秋霜

    

 秋浦しゅうほうた  李 白り はく

白髪はくはつ 三千丈さんぜんじょう

うれいにって かくごとなが

らず 明鏡めいきょううち

いずれのところにか 秋霜しゅうそう


 尤麌歌平○上●平○

陌月三先養入●入●平○平○上●

先尤紙箇陽平○平○上●去●平○

物支庚敬紙入●平○平○去●上●

歌御職尤陽平○去●入●平○平○


字句解釈

秋浦  地名。九江と南京の中間の貴池のあたり。李白54,5歳のころの滞在地。

白髪三千丈  1丈は10尺。1尺は唐代は22.5cm。 3000丈は6000m。後宮3000人、食客3000人など、とにかく多い、驚きの表現。

緣愁  うれいによって(原因)。因縁。 日本語のよるには、依る(いらいする、よりかかる)、寄る、因る、拠る、撚る、 倚る(よりかかる)、由る、選る、憑る、などいろいろある。それぞれ使い方がある。

明鏡  美しい、明るい鏡。よく写る鏡。張九齢の用例あり。関連詩1参照


詩の鑑賞

孟浩然に遅れること12年、杜甫に先立つこと11年に生まれた大詩人。杜甫の詩聖に対し詩仙と称される。 李白酒一斗詩100編。溢れるように傑作が出来た。
この詩は李白晩年の作。李白が秋浦を訪れた機会は 、安禄山の乱の前後、54、55歳と58歳の二度ある。 この詩のできた時期については説が分かれる。
白髪三千丈  ああーー老いたなーーーー。深い嘆き。
この詩はこの一句に尽きる。
この詩は、日本人なら知らない人のいない千古の絶唱である。 




 

念昔遊三首    唐 杜牧

全唐詩 卷五百二十一


 念昔遊三首其一    杜牧

十載飄然繩檢外,

樽前自獻自為酬。

秋山春雨閑吟處,

倚遍江南寺寺樓。

 其三

李白題詩水西寺,

古木回岩樓閣風。

半醒半醉遊三日,

紅白花開山雨中。

 昔遊せきゆうおも三首さんしゅいち  杜牧とぼく

十載じゅっさい 飄然ひょうぜん 繩檢じゅうけんそと

樽前そんぜん みずかけんじ みずかしゅう

秋山しゅうざん 春雨しゅんう 閑吟かんぎんところ

るにあまねし 江南こうなん 寺寺じじろう

 其三さん

李白りはく だいす 水西寺すいせいじ

古木こぼく 回岩かいがん 樓閣ろうかくかぜ

半醒はんせい 半醉はんすい あそぶこと三日さんじつ

紅白こうはく 花開はなひらく 山雨さんううち


字句解釈

飄然   ぶらぶらさまよう。本来は気の葉っぱが揺れるさま。

繩檢外   縄で占めることもなく自由勝手。

獻酬   酒を献じたり、応えたり。

倚   たちよる。

李白   清平調詞三首其一。    清平調詞三首其二


詩の鑑賞

江南の楽しかったころをおもいだしての詩。



 

宣城青溪   唐 李 白

全唐詩 卷一百七十九


 宣城青溪   李 白

青溪勝桐廬,

水木有佳色。

山貌日高古,

石容天傾側。

彩鳥昔未名,

白猿初相識。

不見同懷人,

對之空歎息。


 宣城青溪せんじょうせいけい  李 白りはく

青溪せいけい 桐廬とうろまさ

水木すいぼく 佳色かしょく

山貌さんぼう 日高ひたかくしてふる

石容せきよう てんかたむそばたつ

彩鳥さいちょう 昔未むかしいまなずけず

白猿はくえん はじめて相識あいし

おなじく ひとおもうを

これに たいして むなしく歎息たんそく


字句解釈

桐廬   厳子陵(厳光)が釣りをした釣台のあるところ。

山貌   山の形。

石容   石の形。


詩の鑑賞

李白も宣城に居たことがある。


 

與謝良輔遊涇川陵岩寺    唐 李 白

全唐詩 卷一百七十九


 與謝良輔遊涇川陵岩寺    李 白

乘君素舸泛涇西,

宛似雲門對若溪。

且從康樂尋山水,

何必東遊入會稽。

 謝良輔しゃりょうほ涇川けいせん陵岩寺りょうがんじあそぶ  李白りはく

きみ素舸そかじょうじて けいうかびて西にし

あたか雲門うんもんて 若溪じゃくけいたい

しばら康樂こうらくしたがいて 山水さんすいたず

なんかならずしも 東遊とうゆうして 會稽かいけい

字句解釈

若溪   西施が衣を洗ったところ。


詩の鑑賞

これも、李白がこの辺に居た証拠の詩。




 

游水西簡鄭明府   唐 李 白

全唐詩 卷一百七十九


 游水西簡鄭明府   李 白

天宮水西寺,雲錦照東郭。

清湍鳴回溪,綠水繞飛閣。

涼風日瀟灑,幽客時憩泊。

五月思貂裘,謂言秋霜落。

石蘿引古蔓,岸筍開新籜。

吟玩空複情,相思爾佳作。

鄭公詩人秀,逸韻宏寥廓。

何當一來遊,愜我雪山諾。




 水西簡鄭明府すいせいかんていめいふあそぶ  李 白りはく


天宮てんきゅう 水西寺うすいせいじ雲錦うんきん 東郭とうかくてらす。

清湍せいたん 回溪かいけいり、綠水りょくすい 飛閣ひかくめぐる。

涼風りょうふう 瀟灑しょうしゃ幽客ゆうかく 憩泊けいはく

五月ごがつ 貂裘ちょうきゅうおもい、う 秋霜落しゅうそうおつと。

石蘿せきら古蔓こまんき、岸筍がんじん 新籜しんたくひらく。

吟玩ぎんがん むなしく復情ふくじょうおもう なんじ佳作かさく

鄭公ていこう 詩人しじんいで、 逸韻いついんこうとして寥廓りょうろう

いつまさに ひとたび來遊らいゆう、 われよろこばしめん 雪山せつざんだく




字句解釈

簡   手紙をかく。

鄭明府   明府は太守。

水西寺   南朝時代に創建された安徽省の宣城市涇県の西部にある水西山の上にあった 崇慶寺・寶勝寺・白雲寺の三大古刹の総称。

雲錦  にしきぐも。

清湍  きよらかな早瀬。 飛閣  高い建物。

瀟灑  しょうしゃ。さわやか。

幽客  世捨て人。

思貂裘   貂裘(てんの皮衣)が欲しくなる。

石蘿   石の上のつたかづら。

引古蔓   ふるいつるがのびている。

岸筍  岸のたけのこ。

開新籜   新籜は筍の皮。

吟玩  吟じてあそぶ。

復情  感謝する。

爾佳作  あなたのよい作品。

逸韻   風流。風雅。

宏寥廓   寥廓 ひろくておおらか。度量がある。

愜我  愜 こころよい。みちたりる。満足する。よい(可)。

愜我雪山諾  私を喜ばし、共に、釈迦が過去世に菩薩の修行をした雪山のような 境地にお遊びになりませんか。


詩の鑑賞

同じく、李白が宣州に居たときの詩。


 

初春雨中舟次和州橫江裴使君見迎李趙二秀才同來因書四韻兼寄江南許渾先輩    唐 杜 牧

全唐詩 卷五百二十三


 初春雨中舟次和州橫江裴使君見迎李趙二秀才同來因書四韻兼寄江南許渾先輩    杜 牧

芳草渡頭微雨時,

萬株楊柳拂波垂。

蒲根水暖雁初浴,

梅徑香寒蜂未知。

辭客倚風吟暗淡,

使君回馬濕旌旗。

江南仲蔚多情調,

悵望春陰幾首詩。

 初春しょしゅん 雨中うちゅうに 和州橫江わしゅうおうこう舟次しゅうじし、 裴使君はいしくんむかえられ、 李趙二秀才同ちょうしゅうじしゅうさいともたる。 って四韻しいんしょし、 かね江南こうなんの 許渾先輩きょこんせんぱいす。 杜牧とぼく

芳草ほうそう 渡頭ととう 微雨びうとき

萬株ばんしゅの 楊柳ようりゅう なみはらいてる。

蒲根ほこん 水暖みじあたたかにして 雁初かりはじめてよくし、

梅徑ばいけい 香寒こうさむくして はちいまらず。

辭客じかく かぜりて ぎんずること暗淡あんたんたり、

きみをして うまを回らして 旌旗濕せいきうるおわしむ。

江南こうなんの 仲蔚ちゅううつ 情調じょうちょうおおし、

悵望ちょうぼうす 春陰しゅんいん 幾首いくしゅ


字句解釈


詩の鑑賞





 

漢江    唐 杜 牧

全唐詩 卷五百二十三


 漢江    杜 牧

溶溶漾漾白鷗飛,

綠淨春深好染衣。

南去北來人自老,

夕陽長送釣船歸。

 漢江かんこう   杜牧とぼく

溶溶ようよう 漾漾よぷよう 白鷗飛はくおうとび、

綠淨みどりきよく 春深はるふかく ころもむるにし。

南去なんきょ 北來ほくらい 人自ひとおのずからい、

夕陽せきよう つねおくる 釣船ちょうせんかえるを。


字句解釈


詩の鑑賞